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サボ天使、ガチャVRに人生極振り! ~デッキを組んで強くなる世界で、魔法カード0枚からの成り上がり!~  作者: ラボアジA
4章 悪魔との戯れ編

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52話目 あたしはまだ、この世界を知らない。

「まあ、スグに戻ってくるんだがな、天使」


 ええ……こんな世界だものね。


 本社ビルが空から戻ってくるのと同じ頃、少年社長は、ビルの前で【開始】していた。


「やーれやれ、軽くひとひねりだと思ってたんだが、自分のナイフにやられてりゃ世話ねえな」

「あたし、もっとエゲつない手に出てくると思ってたけど」

「ハッ! こんなゲリラバトルで、手の内全部は明かさねえっての」


 社長は手で否定した。


「サボテン。もし本気が知りたけりゃ、リアルに来い。俺がガチバトルしてやるぜ」

「イヤよ」


 っていうか、そんなに現実で戦いたいワケ? 実はムキムキのマッチョマンだったりするの?


「あたし、絶対に行かないから」

「そうか……ちょいと残念だ」


 社長が黒いネクタイを直していると、大柄の影さんが肩を叩いた。


「社長、そろそろ時間だ」

「おお、フクダ。コッチは時間経過が早ぇな」


 社長はギャラリーに手を振ってみせた。


「お前ら、喜べ。俺がくたばったぜ」


 喝采を上げる人、ブーイングをする人……色んな反応をしてるわね。

 社長は苦笑してた。


「まあ、コッチのイベントは、ぼちぼちやってくツモリだ。今みてーな対人バトルや、ユニットバトルとかを充実させてよぉ。じゃあ、あばよ」


 社長は、影さんともども、あっという間に【終了】していった。


 ――ん? 「コッチ」?


 あたしは首をひねった。


 え、なんかヤケにあっさりって感じよね。この世界って、社長の肝いりじゃないの?


「シャボン」

「あ、おっちゃん」


 あたしは、美少女マーメイドのアイスに手を振った。


「えっへっへー。あたし、勝ったわ」

「おお、またスゴい止め方したな」

「大量のナイフ?」

「ああ。まさかあんなに仕込んでるとは思わなくてな。すまん」

「んーん。アレはもっと上手く止められたと思うわ」


 もっとも、そのオカゲで【大地の竜】を倒せたんだから、塞翁が馬よね。


「銀ちゃんはドコ行ったの?」

「あいつは編集作業だ。ほぼそのまま投稿するだろうがな」

「アハハ」


 銀ちゃんらしいわね。


 ――正直、胸にポッカリと穴が空いたみたい。社長を倒すって目標を、とりあえず達成したからかしら。


「しかしシャボン、お前はスゴいと思ったが、とうとう社長まで殺すとはな」

「ちょっと~、人聞きが悪いわよ? そりゃ、ゲーム的には殺したケド、実際に人が死ぬわけでもないんだし」






「は?」






 ――え?


 おっちゃんの真顔に、ゾクリとした。


「シャボン……お前、マジで言ってるのか?」

「えっ……? ど、どういうコト?」


 分かんないんだケド。まさか、人が死ぬデスゲームだったとか? ――って、それはないわね。あたしがスカーレットちゃんに何回焼かれたと思ってるのよ、あははは。


(シャボン)


 アイスから念話がきた。


(お前、去年の事件を知らんのか)

(えっと……ごめん、アイス。その辺のことは、記憶から抜けてるの)

(――記憶喪失か?)

(そんな感じね。今、一歩も動けないし)

(そうか……スマン)


 おっちゃんは、深々と頭を下げた。


(現実を詮索するつもりはなかった)

(あ、深刻にならないで。これはこれでケッコー楽しいし)


 サボテンに転生したから、VR関連の記憶もないし、動けないのも本当。あんまりマジだったから、怖くてつい思考が漏れちゃったわ。


 おっちゃんは、喫茶店へと向かいつつ念話してくれた。


(これは、「4.3事件」と呼ばれててな。去年の4月3日、社長の作ったVR「マホロバ」がスタートした時の事件だ)


 え?


(今って2月でしょ? 12月にスタートしたんじゃないの?)

(それは、コッチ……つまり、「マホロバ・」の話だな)


 ん?


(俺が言ってるのは、現在の「マホロバ・」の話だ)

(「マホロバ」は、2つあったの?)

(そうだ)


 ――あ。

 リアルって……「マホロバ・リアル」のことだったのね!?


 おっちゃんは続けた。


(スタート時の触れ込みは、「現実以上のリアルを」だったが……死までリアルとは、誰も想像できなかった)


 ちょ、ちょっと待って。

 コワイコワイコワイ。


(社長の作品は、前作も大人気でな。当時、「マホロバ」は、膨大な人数がプレイしていた)

(事件って、まさか……)

(ああ。――ゲームで死んだら、脳死したんだよ。1万人な)


 おっちゃんは喫茶「サラマンダーの夜」の扉を開けて入ろうとするが、そこでゆっくりと振り向いた。


(シャボン……)


 あたしは、そこで留まっていた。


(ゴメン、おっちゃん……。ちょっと、想像を超えてて、処理が追いつかないわ……)

(――ああ。俺も初めて聞いたときはショックがデカかった)

(詳しい資料とか、ある?)

(ネットに山ほど転がってるぞ)


 そうね……大事件だったでしょうし。


(ちょっと、調べてみるわ。――あ、大丈夫よ。また戻ってくるつもり)


 あたしは【終了】して、プライベートルームにやってきた。


 ――その時、何があったのか。


 あたしはまだ、この世界を知らない。

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