50話目 メタゲームの読み合い
――さてと、社長の領土の【島】だけど、おっちゃんのオカゲで予習はバッチリよ?
『シャボン。領土はツブせ』
『いえっさー!』
ええ、基本はどシンプル。消すだけよ。
『あ、でもおっちゃん。社長には【中止呪文】があるんでしょ?』
『そうだな。無策で【魔法霧散】を撃っても、絶対にキャンセルされる。だから、【島】以外なら、攻撃しながらスキを見て消せ』
『【島】だった場合は?』
『その領土は、飛んでるキャラと水のキャラだけが攻撃できるってヤツだからな。飛んで攻撃しろ。その間に消せ』
ラジャーよ、おっちゃん。
あたしはアイスを一瞥したのち、まずは【巨大な盾】を唱えた。向こうも初手は【巨大な盾】。あら、意外に慎重ね。
常動の【魔力視覚】に切り替えて社長を見てみると、緑のオーラがぼんやりと出てきた。――ふむふむ、青に加えて緑で来たワケね。
あたしは次に【敏速】を唱えた。社長の2手目は【衛星球】の召喚。
――え、銀色? 動画撮影かしら、余裕あるわね。
もういっぺん【敏速】を唱えながら、あたしは社長に襲いかかった。
『おっちゃん、攻撃タイミングはいつがいい?』
『速度が2上回ったら行け』
『OK』
駆けてく途中で、バサッとテイクオフ!
「へっ」
社長は【中和】を撃ってきて、速度はリセット。――ンでも、構わずつっこむ!
ガチィン!
レーヴァテインの一撃が、ナイフで受けられた。その後の連続攻撃も全て止められる。
「ねえ、社長! 武器の重さが違いすぎると思うんだけど!」
「はっ! クリティカルで止めると衝撃はねえんだよ!」
やっぱウソ臭いわー。【武器の達人】シリーズで補正も効いてるし、クリティカル防御ならオールOKって仕様とか。
「あとな、こりゃただのナイフじゃねえ。グラディウスってんだ」
「そりゃどーも! あたしの杖はレーヴァテインよ!」
すぐに【魔法霧散】で【島】を解除した。
「さあ、堀は埋めたわ、社長!」
「おぉー、やるなぁ!」
不意打ちの投げナイフをギリギリでかわす。
――社長の武器がナイフってのも、おっちゃんが教えてくれたわね。
『シャボンの杖と同じで、投げては回収するハズだからな。【魔化】で強化もしてるだろうから、1回食らうと12、3点のダメージだ。絶対に止めろ』
『ええ』
投げたスキを狙って、レーヴァテインを叩き込む!
ぼぐぉ!
社長は勢いよく後退した。
――予習の効果が出てるわ。おっちゃん、ありがとう!
「くくく……」
社長はくしゃりと青髪をかいた。
「一夜漬けのおベンキョーか、天使? 【島】の対策といい、ナイフの回避といい、昨日の骸骨竜を知らなかった奴の動きじゃねえな」
「相手を知って対策するのは、ズルじゃないわよね?」
「おうとも。メタこそ面白いぜ」
あたしが【加速】を2回使うと、社長はまた【中和】で消してきた。フム、「+2」になると消してくるのね……おっと。
風切り音がしたので、振り向きざまにナイフを弾く。あたしに刺さることはなく、社長の手に戻る。
「あたしも【忠誠武器】は知ってるわ」
「へっ、サボテンだけあって、時間はタップリあったようだな」
「ええ、そりゃもう」
本体がそうだしね。
後ろを向いたスキに、社長はさらに距離をとってた。
あら。じゃあコレね。
あたしは【武装解除】を唱えた。社長のナイフを落とさせて、攻撃系の付与も30秒停止。
「このまま押し切らせてもらうわよ?」
「ほぉ」
【忠誠武器】で回収した社長が、再びナイフを投げてきた。軽く弾いて杖で殴りかかる。
――いけるわ!
「へっ」
その直後。
社長は、十数本ものナイフを投げてきた。
――ヤバッ!
パリィン! カカカンカンカン! ザクッ! カカカンカンカン!
「うぐっ……」
初撃は【巨大な盾】が、次からは【武器の達人】の補正で防御ができたけど、1本食らっちゃった。焼けつくような感触に、慌ててステータスを確認する。
体力:51/64
「ぐぐっ……、13点?」
え、ただのナイフでしょ?
刺さったナイフを【魔力視覚】で見てみた。
名前:グラディウス赤銀白
【火炎武器】
【鋭利】
【神聖武器】
【忠誠武器】
【刻印】
うげっ……てんこもり!?
つまりコレ、今投げたナイフ全部が【魔化】されてるってこと!?
お腹のナイフを引き抜いてインベントリに放り込んだ。社長と他のナイフの斜線からも外れる。
案の定、悪ガキ社長は次々とナイフを【忠誠武器】で回収していった。
「おう。グラディウスが1本だけって、誰が言った?」
「この……金満社長め」
すぐに【加速】を使って「+1」状態にする。
「ククク、よけろよけろ」
殺人鬼社長は、1本2万円ぐらいのナイフを雨あられとブン投げてくる。
「社長ー! 金持ち攻撃はヒキョーよー!!」
「ハッハー、サイコーのホメ言葉だぜ」
真正面に相対して、落ちたナイフの位置も確認。ときおり【闇の精霊】で闇を作ってくるけど、すぐに【光】でかき消して視界を確保。【巨大な盾】に【魔力の盾】も張って万全。
――落ち着きさえすれば、ナイフ攻撃は直線よ。全部かわせるし、止められる。
あたしがニラむと、社長は不敵に笑った。
「へっへっ……いい目だ。生きてやがる」
「社長もね」
「あとは、近寄ればリーチの差で勝てる……そんなトコかな?」
「ええ、そうよ」
ナイフは全部手で投げてるもんね。
「手を叩き潰せば、あたしの勝ちだわ」
「ほお、この手をか」
社長は指先に黒い光を集めた。魔法名は【生け贄】。
――え、ユニット? 何を出してきても1撃なのに?
あたしのフシギそうな顔が分かったのか、社長はスッと上に指を伸ばした。
「あのな……予想がつくってことは、当然、対策もしてきたんだぜ?」
直後、バサリと巨大なユニットが現れる。
「黒魔法レベル3、【生け贄】。こいつはユニット1体を捧げることによって、スロットにある好きなユニットを出せる魔法だ」
「あっ……」
「お前のデッキに【箱庭】がなさそうだから、ちょいと喚んでみたぜ」
空には、威厳たっぷりのスカーレットちゃんが。
『アンギャーオ!』
ぐはっ……やられた!




