48話目 デッキ構築は楽しいな
「キャンセル系は特訓がいるからな」
おっちゃんは続けた。
「社長の呪文の光をチェックしながら、攻撃もやるとなったら、お前の持ち味を殺しちまう」
「ええ、華麗なる回避のね」
「ヘンタイよけだな」
おっちゃん……思ったけど言わなかったのに。ぷぇー。
「強みを生かせ。たとえば、自分を強化して、相手を弱体化だな。それでタコ殴りすりゃ、勝ちが見えてくる」
「ん~……。あたし自身が【加速】するとか?」
「ああ、速さは力だ」
やっぱり速い方が強いのね、このゲーム。そんじゃま、【加速】と【敏速】が候補、と。
銀ちゃんが、椅子を持ってきてあたしの向かいに座り直した。
「カルイザワ社長も、シャボンと同じで、自ら戦うタイプだね。とくに、シャボンのレーヴァテインには【痛打】が入ってるから、これを封じてユニットを出すのは考えにくいかな」
「なるほど~」
何を出されても、ポカッと叩けば1撃だもんね。万一攻撃を食らっても、フツーのユニットなら全然コワくないし。
「――あ」
「何かな、シャボン?」
「あの社長なら、脱法ユニットを使う可能性があるわ」
その途端、おっちゃんが笑いだした。
「おいおい、〖デス・エレメンタル〗か? 大ウケはするだろうが、それで勝っても立場がないだろうよ。仮にも社長だからな」
「あ、そっか」
そうよね、本社ビルの前でタイマンだもの。せっかく【箱庭】で脱法カードをツブしたのに、明日の戦いで〖デス・エレメンタル〗なんか使ってたら、「え、脱法カード認めたの?」ってなっちゃうわ。
しかも、勝ったりした日には、「けっこー強いじゃん」って復権しちゃうだろうし。勝負に勝てても、VRの戦略に大打撃ね。
「ンじゃあ、社長は正規呪文だけってコトね」
「ああ。そして、同一カードは4枚までにしてくるだろう。観客の誰か1人でも〖プレゼント・4U〗を入れてたら終わるからな」
「ちなみに、私が入れてくよ」
銀ちゃんが手を挙げた。うわ~、包囲網が頼もしいわ~。
あたしは着々とカードを仕分けてた。
「んっと、あたしが一番怖いのは搦め手ね。妙な領土呪文とか、サッパリだし」
「うん。そういう事情なら、相手の領土を消せる色は必須かな。筆頭は白の【魔法霧散】だね」
銀ちゃんは、そこにあった【魔法霧散】を出してくれた。
えーっと、テキストは……“領土か付与魔法を1つ解除できる”ですって。まー、強い。
「ねえ、銀ちゃん。これが2レベルでコモンなのよね。フツーに4枚入る強さだけど、おかしくない?」
「いいや、おかしくないよ。この魔法じゃ『勝てない』からね」
――あ、そっか。たしかに。
「でもあたし、『負けない』戦い方を目指したいわ」
「へっ、いい心掛けだ」
おっちゃんが不敵な笑みを見せた。
「なら、魔法の対象にされないことを考えるか」
「何かいい魔法があるの?」
「紫のレベル1に、【魔力の盾】ってのがある」
「【巨大な盾】の魔法版みたいな感じ?」
「おお、そのとおりだ。1回だけ魔法を止めて壊れる盾だな」
ふむふむ。じゃあ、これも候補ね。
銀ちゃんがリストを出してくれた。
「私たちは、戦いでよく使われる魔法をチェックしてるから、それに絞って考えてみよう」
「お~。ありがたや」
呪文を新開発する人たちは、既存の呪文もよくチェックしてるのね。――おっと、これでラスト。
あたしは、ついに40箱を開封した。
並べてみると圧巻ね。レア120枚、アンコモン360枚(コモン1920枚は、一旦カウンターに置いとくことにしたわ。多いし)。
ふっふっふ……社長? みんなの力を借りて、最高のあたしに仕上げてみせるわよ?
速い呪文のご紹介です。
【敏速/Quickness】
レベル2・銀魔法/コモン
分類:付与
効果:対象の速度を+1する。
王に速さを極めよと言われたので、兵士たちは鍛錬を行った。
ダッシュ、素振り、模擬戦などを休まず行い、少し速度が上がった。
一方、魔術師サラマンは【敏速】を使った。
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