46話目 時間が消し飛んでる(消えてるとは言ってない)
『この天使、誰だよ!』
『芸術的な回避』
『ブラボー……おお、ブラボー!』
『どうして今まで埋もれてたんだ!』
『チームに欲しい逸材です』
『流れるような防御姿勢。低空飛行の維持。それらを、見せつけるわけじゃなく、当たり前にやっている。凄さを通り越して怖い』
『別動画でデス・エレメンタルの超回避もやってましたね。こちらも必見ですよ』
『――これは人間業なのか?』
『NPCだから(震え声』
『みんな天使のことばっかりw マーメイドちゃんのサポートもスゴいぞ』
『見入る』
『英雄様レベルの神業』
『シャボン教の入信場所はここですか?』
『だーから、格闘技のガチ勢を呼ぶなとあれほど(ry』
『社長涙目www ゼッタイ竜を1週間は放置する気だったろw 瞬コロwwwww』
『はぇ~……この動画、家宝にします』
『ついさっき、海ほたるの動画を上げてた! これもゼッタイすごい!』
「――ど、どういうこと?」
しかも、ついさっきの動画まで捕捉されてるし。
食い入るように見てたあたしに、リスリスさんも「あれ?」って思ったみたい。
「シャボンさん……もしかして、本当にご存じなかったんですか?」
「はあ。恥ずかしながら」
え~!? あたし、たまたまオイシイ役をもらったダケだと思ってたわ! え、竜退治ってそんなムズカシイの!?
いま上げたラビちゃんとの動画を見てみたら、こっちも続々とコメントがつく。
『なんで《骨の嵐》に突っ込めるんだ!! そして、止められるんだ!!!』
『おかしい(ホメ言葉』
『天使さまはスゴいなあ。ボクにはとてもできない』
『コレ……初見ムーブっぽいんだけど。グールに囲まれて麻痺とか、竜のオーブ周りとか』
『どういうコトなの……?』
イヤイヤイヤ。だから、コッチが「どういうコトなの」だってば。
あたしがやったコトって、初日にスカーレットちゃんとキャッキャウフフしてたダケよ? 結構時間かかったけど。
「――あれ?」
待って……そういえば、もう1つ、あっという間に時間が経ったことあったわね。
あたしがポチ魔になって、ベアクローたちの1円ちゃんたちを買い漁ってたとき。
アレって、スグに新呪文の発表時間になった気がしてたけど……24時間は経ってるわよ!?
コメントは次々に更新されてる。
『どれだけ修行したらこのヘンタイ回避が出来るんだろう』
『↑1000回死んだんじゃないか?(すっとぼけ』
――ははは、はは……。
そうよ、死んで覚えたんだわ。
株でハマったときは、時間がすぐに過ぎてた。
でも、生身の肉体があったものね。
おトイレに行きたくなったり、食事や睡眠の欲求があったりして、ブレーキが効いてたのよ。
今、あたしの本体はサボテン。
ユニークスキル《不眠》の効果で、アバターも眠らない。
――ハマったら、時間が吹っ飛ぶわ!
って、ちょっと焦ったけど、よく考えたら問題なかったわね。
これからは、次の時間のタイマーをちゃんと仕掛けときましょうってダケよ。
リスリスさんにお礼を言って、1人でコメントをほえーっと見てると、おっちゃんから念話がきた。
(シャボン、いま大丈夫か)
(ええ、オッケーよ。なに?)
(お前に運営がメールを出してるらしいが、一切連絡がつかないんで、動画に映ってた俺の方にきた)
(え? ごめん、おっちゃん)
ステータス画面を出して、言われるままにメール(3ページ目!)を開いた。――うわ、何通も来てる。
(お前への用件は、「緋色の竜を倒したから、そこの狩り場までの道を発表してもいいか」ってコトだとよ)
(あー)
それって、内緒にも出来るのね。
(ええ、OK。むしろジャンジャン明かしてほしいわ。被害者の会のみんなにも倒してもらいたいし。――あ、おっちゃんのカラオケボックスが消えて困るなら、やめとくけど)
(他のトコで歌うぜ)
おっちゃんは苦笑した。
(ああ、そうだ。コイツは運営側がお願いしてることだから、お前からも何かお願いできるぞ)
(へえ。ご褒美みたいなもん?)
(個人が有利になるものは却下だろうがな)
(んー……じゃあ、こういうのってどうかしら)
あたしがアイデアを話すと、おっちゃんは大笑いした。
(お前なあ……)
(え、いい案でしょ?)
(ああ。向こうが乗ってくる可能性はあるな)
(こういうサプライズが好きそうだしね。チャレンジしてみるわ)
あたしはおっちゃんとの念話を終えると、メールの返事を書いて運営に送った。「ご要望欄」がゴージャスだったから、こんなこと書いてね。
『カルイザワ社長へ。
あたしとデュエルしませんか?』




