43話目 機械くん、再び
「シャボンお姉ちゃん。本当にいいんですか……?」
「うん。【骸骨竜】のカードはラビちゃんが受け取って。あいつのカラクリには、ラビちゃんが気付いたんだから」
あたしは、カードをしっかりと手渡した。
「ラビちゃんは、とっても目がいいのよ。授業でも、後ろ側で補助呪文を使うと、誰よりもうまく【巨大な盾】が張れてたもの」
――そう。このVR、ターゲットの指定は自力なの。だから、キッチリと相手を確認して、それから魔法を撃たないといけないワケ。
大ちゃん戦で、おっちゃんがアッサリと【巨大な盾】を使ってくれたもんだから、誤解してたわ。瓦礫やら岩やら、ジャマなターゲットが山ほどあるなか、動き続けるあたしに100発100中で撃つとか! あれって、とんでもないテクだったのね。
あたしはラビちゃんの頭をなでなでした。
「他の子たちは、後ろ側のとき、大変そうだったじゃない? 間違えて、相手の前側の子に【巨大な盾】を使っちゃったりとか」
「でも……あたしは前だと、ダメージが与えられなくて……」
「ん~ん。今回はお姉ちゃんが前だったから、前は関係ないわ。後ろのラビちゃんが、たくさん助けてくれたから、竜が倒せたの」
ギュッと抱きしめてあげた。
「途中で【清掃】してくれて、毒も治してくれた。【毒牙】の使い方も教えてくれたわ。もちろん、【巨大な盾】を何度も張ってくれたしね」
「お姉ちゃん……」
「これは、ラビちゃんが頑張ってくれたおかげ。他のみんなだと、ここまで上手くは出来なかったと思うわ」
「――ありがとう、お姉ちゃん」
ラビちゃんは、やっぱり照れてた。う~ん、カワイイ。持って帰りたいわ~。
骸骨竜のダンジョンを徒歩で出てくると、豪華客船海ほたるの上で、数人のアバターが騒いでた。
「おい、何度目だよ! 盾が遅いんだよ!」
「す、すみません……」
首振り人形みたいに黒髪が揺れてる。――あれ、こんな光景、見たことあるわよ?
こっそりスキャンすると、こないだの機械クンだった。
「E-MIXクンじゃない、ヤッホー」
軽く手を振ると、「あ、シャボンさん!」って、パッと顔が明るくなった。うおぅ、紅顔の美少年。エイホウさんといい、最近の機械はスゴいわねえ。
「E-MIXクン。そっちは何かあったの?」
「えっと……。僕が、こちらの人たちに迷惑を掛けちゃって……」
見ると、3人とも女の子で、猫耳、ネズ耳、犬耳だった。
――でも、口調は男だったわね。
猫ちゃんがE-MIXクンに尋ねてる。
「おい、エミックス。あの天使さんと知り合いかよ?」
「い、一応……」
「マジで? じゃあ、チームに引き入れてくれるんだったら残ってていいぜ」
――え? 何言ってんの、コイツ?
「だ、ダメですよ」
E-MIXクンは、首を横にブンブンと振った。
「そのときも、僕が助けてもらったダケですし……」
「はぁ? なんだそりゃ。じゃあもういいや。パーティから抜けてくれ」
うわあ。何よ、その言い草。
猫は、E-MIXクンをシッシッと追い払うジェスチャーをした。
一方、他の2匹はというと、あたしのそばに寄ってくる。
「天使さん、オレたち【大地の竜】倒すところ見てました!」
「【骸骨竜】も倒してたんですか!? いや~、奇遇ですね~! オレたちも、同じ時間に挑戦してたんですよ~」
「はあ」
なんか、ヘンテコな感じでホメられ始めたわね。
さりげなく、ラビちゃんを体に近付けときましょ。
(ラビちゃん。一緒のタイミングで竜退治って、こいつら居なかったわよね?)
(多分、わたしたちが入る少し前に、この人たちも入ってたんだと思います。ダンジョンは、パーティーごとに別のものが用意されるって習いましたから)
(へえ~)
100パーティで入ったら、100個のダンジョンが作られて、それぞれに骸骨竜がボスとして出てくるわけね。
――あら? 最初にスカーレットちゃんを倒したとき、おっちゃんに会えたけど……あれってNPCだったから? だとしたら、なおのこと奇跡の出会いね。
あ、おべんちゃらが終わったみたい。
「――というわけで、シャボンさん! オレたちのパーティーに入ってください!」
「お断りします」
笑顔でバッサリ。――あ、猫女もきたわ。
「シャボンさ~ん、オレたち助けてほしいんですよ~。オレたち、その子より役に立ちますから、仲間に入ってくださいよ~」
――あ~あ、NGワード言っちゃった。
ラビちゃんより優れてるって口走っちゃうとか。仮に事実だったとしても、今のタイミングはないわー。
「ごめんなさい」
「はぁ~、ダメか~。――おい、行こうぜ」
3人はあたしにだけ会釈して、魔法陣から去っていった。――うわー、気分悪っ。ケド、あたしが対応をマズくしてラビちゃんやE-MIXクンに迷惑かけたらツラいもんね。ここはガマンよ。
E-MIXクンはあたしにペコペコしてた。
「すみません、シャボンさん」
「ううん、気にしてないから大丈夫よ」
肩にポンと手を置く。
「それより、事情を聞かせて」
「はい」
E-MIXクンの黒髪が揺れた。




