36話目 大人はウソをつくんじゃないんです、反面教師なんです
「さーて、これから大売り出しよ!」
あたしはまず、買い込んだ1円ユニットを、蛙園長の言ってた半値でセールに出してみた。
「この世界、手数料って取られないのね」
カード以外は広告収入とかで稼いでるのかしら。ナゾだわ。
「ともあれ、セット完了、と」
これは早めに仕掛けたかったのよね。指し値だけってことは、いつ売れるか分からないから。
「次は、スロットに入れるカードを選択だけど……緑5、黒3のままでいいわね」
さっきは杖振ってばっかだったし。――あ、だけど【ガイア】は欲しいから、いっぺん緑8にしましょ。
んで、待ち時間に。
「エイホウさん。社長が言ってた新呪文のリストって出た?」
『はい。こちらです』
スグに見せてくれた。おお~、いっぱい……だけど、【ゴブリン】とか【骸骨】とか、知ってる呪文ばっかり。
「ん~っと……どこが違うの?」
『キャラの造形が違います』
「へぇ~。見せて」
『分かりました』
エイホウさんが画面に出してくれたのは、デフォルメされたゴブと骸骨だった。
「おっ、カワイイじゃない」
ゴブちゃんは、肌の緑だけそのままで、腰ミノをつけたショタっ子みたいになってた。
ガイコツちゃんも、上あごまでの骸骨を頭に被った色白の少年だったし。体は全身タイツで、ホネホネの絵が描かれてるわ。もう、なんていうか、擬人化?
他の採用ユニットも、デフォルメされて可愛らしい姿になってる。
――ん?
「これって、名前が一緒ってことは、性能も同じなの?」
『はい』
へ~、こんなに見た目が違っても、呪文としては同一なんだ~。ふむふむ、どの呪文を使うか選ぶのは、プレイヤーの好みってワケね。
今までのグロい&コワい系も良かったけど……これもウケそうだわ。
作り手側は、申請して採用されたら嬉しいから、どんどん作る。一方の会社側も、ユニットのバリエーションが増えて嬉しい。う~む、上手い仕組みだわ。
――あ、こういったユニットアレンジに注目してほしいから、脱法ユニットを駆逐するための【箱庭】だったのね。前以上にチビちゃんたちが重宝されそう。
「おっと、緑8がOKになったわ」
ンじゃま、ムクドリちゃんズを出して、【ガイア】をセット。――よし、これでマナを気にせずユニット使い放題ね。は~い、緑5黒3に直しとこっと。
「さて、そろそろ時間ね」
あたしは再び山形へと向かった。ボランティアという名のバイトね。ゲートをポンポン飛んでいく。
――ん~、今はまだ移動が楽しいけど、いずれはこの距離も何とかしたいわね~。インベントリの【瞬間移動】をうまく使いたいトコだわ。
学園では、ミッちゃんが出迎えてくれた。
「ふぉっふぉっふぉ、よく来たのぉ、シャボン」
「どうも、蛙園長」
っていうか、この園長フットワーク軽すぎよね。
「またボランティアに来ました」
「嬉しいぞい。――ところでお主」
「はい?」
「さっき、大地の竜とか退治しとったかのぉ?」
え、なんで知ってんの……って、銀ちゃんが動画投稿してたか。
「はい、アレあたしです」
「ええー!? あ、あの……サインください!」
おいおい。ミッちゃんってば、結構な頻度でキャラ崩壊を起こすわね。まあ書くけどさ。
「あ、ありがとうございます!」
かえるペコペコ、3ペコペコ。
「じゃあシャボン、こないだと同じ感じで頼むぞい」
「はーい」
数分後。
ザワつく子供たちを前に、ミッちゃんがナマズひげを仰々しくなでてた。
「オホン。こちらのお姉さんは、マホロバの公式ニュースでも取り上げておったスゴい人じゃ。じゃが、くれぐれも『サイン下さい!』などといった、迷惑になることは言わぬようにな」
「「はーい」」
おい、教育者。




