32話目 JKローリング
「なるほどな」
アイスはうなずいた。
「戦闘機が海面スレスレを飛ぶような発想か。竜のレーダーが2mなら、そこより下はセーフと」
「でしょ? あとは、ダメージさえ与えられればOKよ」
足踏みってズルいわね~。1歩ごとに《地震》で回復されちゃうもの。あれを上回る攻撃……あっ!
「思いついた!」
インベントリから颯爽と杖を出す。
「おっちゃんが貸してくれたレーヴァテイン! コイツで叩くわ!」
そうよ、一撃必殺じゃないの! 勝ったわ!
「あー、やめとけ」
「え?」
「【痛打】が茶色魔法だからな。ヤツの吸収する色だ」
あたしは杖に目を落とした。
「フッ」
そっと杖をインベントリにしまう。――はい、テイク2!
「おっちゃん、いい案ない?」
「1つあるぞ」
うお~、頼りになるわ~。
おっちゃんは、ビルの跡地にある魔法陣を親指で示した。
「シャボンがさっき踏んで、マナの上限が減ったろ」
「ええ」
「キャラクターってのは、体力が0になったら死ぬが、マナの上限が0になっても死ぬんだ」
――ほほぉ。
「なるほどね。あそこまで、竜を誘導すればいいってワケ」
「ああ」
アイスは杖を出した。
「さっきの攻撃チームだが、【忘却】や【眠り】は効かなかったようだ。俺が【魔弾】でヤツの気をひく」
「いえっさー!」
アイス隊長、やっちゃってください!
まずは、竜と魔法陣との延長線上へと動いた。すかさず隊長が【魔弾】を発射!
『ドギャアース!』
おーおー、ハタ迷惑な《地震》を撒き散らしながら、ノコノコ誘導されてるわ~……って、あら?
「魔法陣が、光ってない?」
――ううん。じれったいほどゆっくり光ってる。あ、まさか竜が大きいから? 魔法陣も、パワー充填に時間が掛かってるの?
「ヤバッ!」
発動前に竜が出ちゃう!
「足止めするわ!」
「おう!」
バサッと羽を広げて、魔法陣のフチに急行! 後ろから手を叩く。
「へへ~ん、ここまでおいで~……っと」
シッポや鉤爪をかわしつつ、スーパーマンみたいな姿勢で高度1m台を維持。そのまま、ぐ~るぐ~るとフチを周回。
フッフッフ……。スレスレの特訓は、スカーレットちゃんとの鍾乳洞ライフで体得済みよ!
シュワァアアア……。
『ドギャアアーース!』
お、ようやく魔法陣が発動!! さっそく確認!
マナ85/85(128)
「よっし! 3分の1減ってる!」
あとは、このまま2回ね!
その直後。
『ドッギャアアアアーース!!』
竜が激しくのたうち回った! ぎゃー! 全身をローリングさせるもんだから、地面も大揺れ!
ゴスッ!
「うぐぇ……」
「シャボン!?」
瓦礫の1つを、モロに食らったわ……っとと、高さキープ!
「おっちゃん! あたしは大丈夫!」
親指グッ!
ライフの減りは少なかった。体勢も立て直す。
だけど、竜はごろごろ~っと、西口ゲートの魔法陣まで戻っちゃった。
「ちっ……クセのある竜だぜ」
同感。そのまま居させたりはしないってワケね。
竜は、そこらの土を食べて、もぐもぐタイム突入。余裕綽々ね~。
ちなみに、向こうのゲートだけど、今は光ってなかった。「混雑するから」って理由で、発表の時間は使えなくなってたの。――これって、一度退場した人がスグに戦線復帰するのを避ける狙いがあったのね。用意周到だわー、ムダに。
周りから、ガンガン【魔弾】が発射された。
『ドギャース!』
お、誰だれ?
見回すと、10数人ほどいる。
「ヘルプに入るぞ!!」
うひょー! ありがとう、(被害者の会の)みんな……!
凄まじい勢いで紫の矢が撃ち込まれ、竜がズンズン前進してくる。よーし、オーライオーライ。
ンでも、ビルの魔法陣まで来たら、そこを迂回し始めた。
「ええ~!?」
そんなのアリ? イヤ、あたしなら当然そーするけど、ボスがそれやっちゃう?
「同じ手口は、通用しないってワケね……」
ホント、ヒドいAIだわ。――あ、魔法陣の周辺10mぐらいだけは崩れてないけど、それって最低限の礼儀だから! 《地震》で魔法陣まで崩れたら、「社長のクズー!」ってシャウトしてやるわ!
魔弾の射手のみんなは、すぐさま2手に別れた。挟み撃ちにしてるけど、やっぱり竜は魔法陣を避けてる。む~、今度は別の方法で釣らないとダメみたいね。
「――ん?」
アスファルトがめくれ上がったトコから、丸っこい土が見えてた。
「土、団子?」
自然にあんな形が出来るハズないわね……あ、もしかして!
あたしは近くの割れ目から、大きな土団子をゴロゴロと転がしてきた。
アイスから呆れたような声が飛ぶ。
「何やってる、シャボンー?」
「大玉転がしー!」
言ってて思ったけど、フンコロガシじゃないわよ?
おっちゃんもみんなも、竜の頭の辺りへ【魔弾】を撃ってくれてるから、下のあたしはコッソリと転がすことができた。魔法陣の端っこまできたら、あとはカーリングのストーンみたいに中央を狙う。――あ、ちょっと短かった。次よ、次。
同じことを何回かやって、準備オッケー!
「みんな、次で仕掛けるわ!」
あたしは、大地の竜に土団子を転がした。
「さあ、大ちゃん! おいしいお団子があるわよ~!」




