28話目 箱「紙も、神も、あるんだよ」
箱には、各地にあったゲートのような魔法陣が描かれていた。
「これが、スターターって呼ばれるモノですか」
「そうじゃな。60枚の魔法カードが入っとるから、とりあえずスロットが埋められるって意味じゃよ」
ふふふ……夢にまで見たガチャ、初ゲットよ!
素直に買うと1500円するそうだけど、レアが3枚、アンコが9枚入ってるって言うからね。レアを引きたいなら断然お得よ!
いやー、募集要項の所に書いてあったもんねー。折角カードガチャの世界にいるんだし、やっぱ1度は引いてみたいわよ……ん?
「あの、園長?」
見ると、ミッちゃんもソワソワしてる。
「ふぉふぉふぉ……その、剥きたてのインクの匂いって、クるじゃろ?」
え、何その表現。ジャンキー?
あたしは、ビニールの包装を剥き、箱をそっと開けた。――あ、たしかにインクの匂いね。
「おぉ……コレじゃよ、コレコレ」
うわー、ミッちゃんがスンスン嗅いでる。こわっ。
「そうじゃ、シャボン。カードを裏にして、上から9枚がアンコモンで、10、11、12枚目がレアじゃ。1枚ずつ楽しみたければ、知っとくと良いぞ?」
ほほぉ、あんがと、ジャンキー園長。
早速ひっくり返して、12枚カウント。
「そして、もう1度ターン!」
あたしはレアから見るわよ! さあ、1枚目は!?
【平和を破壊する者】
「え」
何、コイツ? えーっと、レベル3の黒で、攻2/速2/体2のユニット。特殊能力は……無し?
まさかコモンじゃないわよね? うん、レアって書いてあるし。
横から園長がヒョイと見る。
「あー、外れじゃな」
ぐあー!! で、す、よ、ねーーー!!!
なーにが【平和を破壊する者】よ! あんたがやってんのは価格破壊ダケでしょ! ウガー!!!
あたしはヨロヨロと振り向いた。
「ま、まだレアは2枚あるし……」
「うむうむ、気を強く持つんじゃぞ?」
くそぉ、ヒトゴトだと思って……。
震える指で、1枚めくった。
【瞬間移動】
「お」
なんか強そうな名前! これ、イケるんじゃないっ!?
レベル7の青で、ルール説明が長々とされてるけど、この手のカードは強いでしょ! 「ユニットじゃない」ってのも高評価よ!
「ほほぉ……。そいつはシングルカードじゃと、1000円ほどの価値じゃな」
へー。ミッちゃんアイが発動ですか。
エイホウさん、【瞬間移動】っていくら?
『検索……1000円です』
おぉー、園長正解。ダブルチェックって心強いわー。
ふひゅ~、カスレア3枚とかの悪夢は消えたし、だいぶ精神的に回復できたわね。
さて、いよいよ最後のレア! 精神を集中して。
「スゴいカード……来い!」
【魔力制御:青】
「「来たーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」
って、園長もハモったわね!? さすが蛙さん!! ハモりはお手の物ってワケ!? 輪唱、合唱、大合唱!!!
「園長ーっ! こ、コレ! さっき聞いてた【魔力制御】よね!?」
「う……うむ、そうじゃ!」
園長は、カエル頭をブンブン振った。
「オホン。えーっと……ゆ、譲ってくれませんか? 適正価格で買い取りますんで」
うぉーい、ミッちゃーん! キャラ、キャラ崩壊ー!
「どうでしょう、1500円で?」
声がガチだから! って、1500円!? 1箱開けたらもう1箱とか、コラもー止められませんわ、ヒャッハー!!
ふーっ、ふーっ……ま、まずは落ち着きましょ。そうよ、株に比べれば、どってことないわ。
――いよっし。エイホウさん、【魔力制御:青】の値段を教えて。
『検索……3000円です』
おおうっ……シバサブローさん3人分でございますか。凄まじきカードパゥワー。
ミッちゃんの提示額は半値だけど、ま、そりゃそうよね。3000円丸々出すなら、「市場で買う」もの。
ンでも……もうちょっと言ってみようかな?
「園長、もう一声! 1000円はどうです?」
「いやあ、1800円で……エェッ!?」
あらま。ひっくりカエル園長。全身芸、お見事です。
ふっふっふ……1500円より安い「1000円」。言い間違いじゃないわよ?
たじろぐミッちゃんに、あたしは極上の笑みを浮かべてみせた。
「代わりに、手伝ってほしいことがあるんです。――お時間、ありますか?」
「は、はい!」
かくして1枚のカードが、お金と優秀な助手ガエルに化けたのでした。――あ、お金って、厳密には「ポイント」ね。1ポイント1円で、1000P。
「いやはや、ワシもビックリじゃよ」
園長は、キャラの演技を再開させていた。
「まさかシャボンが、トップレアを引くとはのぉ」
「あたしもビックリです」
ふふーん、神引き炸裂! さぁーて、ここから伝説の始まりよ?
公式ショップで買うと3000円のカードです。
【魔力制御:青/Mana Control:Blue】
特技/レア
分類:常動
効果:スロットにある1枚ごとに、青魔法のコストが1少なくなる。(最低1マナは使用する)
「真理は、ひとりひとり違っていいのよ。
押し付けず、押し付けられず。
忘れてもいいものなの。
でも、見失っちゃいけないものね」
――ヴェスパーの歌姫
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