27話目 対策と脱法のイタチごっこ
「ふぉっふぉっふぉ……とはいえ、ワシらも現状が良いとは思っておらぬ」
お、ちょっと蛙ちゃんがシリアスモード。
「まったくのぉ……いくらコッチの世界がゲーム丸出しとはいえ、さすがに行き過ぎじゃ」
「園長は、このゲーム会社の人なんですか?」
「いんや。じゃが、脱法ユニットを正面から止められるのが、同じ脱法ユニットのみという状況は、やはりマズイのぉ」
「際限がないですもんね」
「左様じゃ。この争いによって、フツーの人たちは、みな迷惑をこうむっておる」
「なるほどー」
そりゃそうよね。大半のユニットが、〖デス・エレメンタル〗に比べたら遥かに弱いでしょうし。――あ、今はユニットって捨て値だわ、多分。スカーレットちゃんは、「誰も倒した人がいなかった」からプレミア付いてるダケで、ヒプノちゃんとかアホみたいに安そう。
『エイホウです』
ぶっ、超反応! いやいや、あなたのコトじゃないのよ、エイホウさん。
――あ、ちょうどいいわ。ねえ、この【眠りの竜】の値段っていくら?
『検索中……判明。500円です』
「ぶっふー!」
「ひょ!? ど、どうした、シャボン?」
「い、いえ……むせたダケです」
えぇーっ!? スカーレットちゃんが5ケタって言われてるときに、まさかのワンコイン!?
ちくせう……! ベアクロー、許すまじ!!
園長は、〖デス・エレメンタル〗のデータを表示してくれた。はいはい、4がバカみたいにイッパイですこと……あら?
「園長。コイツって、なんでレベルだけ『6』なんですか?」
そうなの。数字の4が並ぶなか、なぜか、レベルは6。
マナのコストも表してる以上、4にした方が召喚しやすいハズよね。――ううん、もっと下げて、1でも0でもいいわ。どうせ脱法なんだし……あ。
「もしかして、出来ない理由があるとか?」
「その通りじゃ」
園長は重々しくうなずいた。
「実はのぉ、同じレベル以下で、基準の呪文よりも強い脱法呪文を作った場合は、その数値に直されるんじゃよ」
「えーっと……つまり?」
「例えば、レベル1で999/999/999というユニットを作ったとしようかの」
「強いですね」
「その場合は、ゴブリンの1/2/1という数字が基準じゃから、1/2/1に直されるんじゃ」
「うわー」
「また、無許可のユニットについては、速度5以上の場合、強制的に1になる」
「ひえー」
ヒドすぎる呪文は、事前に対策してたのね。
――アレ、待って? じゃあ……この状況は許容してるの?
「えっと、〖デス・エレメンタル〗の場合はどうなってるんですか?」
「こやつは、ユニットが4体出るじゃろ? レベル5以下で出したら、【死の群れ】の1/3/1まで数字が下がってしまう。じゃから、レベル6になっとるんじゃよ」
なーるほど。数字1つにも色々あるのね。
「ん? じゃあ、【死の群れ】のおかげでレベル6以上になってるなら、抑止になってますね」
「残念ながら、そうとも言えぬな」
園長は、1枚のカードを出した。クリーム色みたいな枠ね。――クリーム魔法?
「特技の、【魔力制御】シリーズじゃ」
あら、特技だったの。そういえば、銀ちゃんの所でも見たような。
え~っと、なになに? スロットに1枚入っているごとに、白の呪文コストが1安くなる……?
「ぶはっ、強すぎィ! え、コレ、入れてるダケで!?」
「そうじゃ」
「みんな入れますよね!?」
「ふむ、トッププレイヤーは大体入れとるな」
納得だわー。6マナの〖デス・エレメンタル〗が、2マナで済んじゃうんだもの。コスト、安っ!
「あの~、ゲーム会社は対策とかしてないんですか?」
「大規模なオリジナル呪文の認定は、月1の頻度で行われておる。前回は、【アプリコット】というユニットが話題になったわい」
「どんな子です?」
「数値は1/5/1で、ユニットを一撃で倒すという、【痛打】持ちの精霊じゃ」
おおう、【痛打】。
レーヴァテインのユニット版って感じね。
「園長。そんな子がいるなら、かなり規制されたんじゃないですか?」
「始めこそ期待されたんじゃが、3日後には、ユニットを4体出す〖デス・エレメンタル〗にやられたわい」
「あー」
1体止めても、他の3体にやられるパターンね。対策ユニットを出したら、その上を超えられるという、イタチごっこになってるワケ。
――でも、対策を取る気はある、と。
「園長。脱法カードを禁止には出来ないんですか?」
「出来るのかもしれんが、今まで1枚もそういう措置は取っとらんよ」
ほおほお。BANにはしないのね。あくまでも、カードで対策をする、と。
「あのお、次のオリジナル呪文の認定って、いつです?」
「明後日じゃな」
アラま、もうすぐね。
とすると、そこで対策カードを発表する気だわ。
社長ってば、今まで攻略してきた感じだと、「1度対策に乗り出したら、トコトンやる」ものね。
「ここで負けてやろう」として作ったトコはキチンと負けるけど、それ以外は絶ッッッ対に認めない。あの社長、脳筋殺人鬼に見えて、かなり繊細なデータ作りしてるからね。数字の大きなユニットは、自分のペットにだけ許して、こっち側は全部駆逐するハズよ。
「園長。次は抜本的な対策を取るとか、そういう公式アナウンスはありませんか?」
「いっさい流れておらんのぉ」
ええ、ええ。情報はシャットアウトね。夜明け前が一番暗いってヤツだわ。
今は、敵を増長させてるターンなのよ。それが最高潮に達したときに、会社側が作ったオリジナルカードでトドメを刺す。そんな感じね。
――ん?
これって……大もうけのチャンス?
ふむ……とすると、最低限の元手は要るわね。
「ふぉっふぉっふぉ。どれ、少し長話してしもうたのぉ」
「あ、園長。色々質問攻めしちゃって、すみませんでした」
「いやいや」
園長は、箱を差し出してきた。
「ほい。頑張ってくれた『お礼』じゃよ」
おっと……そうだったわ。カードが60枚入った「箱」!
これのために、ボランティアを受けてたのよ!
箱のレアとアンコは、ダイス振って決めます。(コモンは喫茶で回収できるのでパスします)




