23話目 レーヴァテイン「待っていたぞ、マスター」
銀狐はくつくつ笑う。
「大丈夫。もっとシンプルな方法があるよ」
インベントリから一振りの杖を出した。
「魔法の杖、レーヴァテイン。ユニットを一撃で倒す【痛打】の効果が込められてるからね。接近戦に自信があるなら、これで叩くのが一番だよ」
持たせてくれたら、意外と軽い。トンと立ててみると、あたしの身長より少し高いから、180cmぐらい? リーチの長い武器ね。
「ねえ、この武器って壊れたりする?」
「壊れないように【魔化】がされてるけど、相手が白だと【武装解除】は食らうね。武器を落としちゃうよ」
銀狐は、一旦杖をもったあと、カラーンと床に落としてみせた。
「君の場合、空も飛ぶのかな?」
「あー、じゃあ持てないわ」
「そう思うよね」
銀狐は楽しそうにほほ笑んだ。
「戻れ、レーヴァテイン」
その途端、杖が起き上がって、銀狐の手にパシッと収まった。
「え、え? 何、いまの!?」
「【忠誠武器】も掛かってるからね」
銀狐は、手に銀色の光を集めて何か呪文を唱えた。
「はい、シャボン。受け取って」
「んっと……こう?」
「いいよ。コレで杖の所有者は君になった」
「えー!?」
いやいやいやいや、絶対高いでしょ、こんな杖!
「ダメよ、対価が払えないもん!」
「ああ、それならもらってる……って、アイスが言ってた」
「おっちゃーん!」
え!? コレ、おっちゃんの杖なのね!?
「竜の代わりってこと!?」
「どうも、そうらしいね。『動きがいいことは分かったから、ヘンに魔法をこねくり回すより、まずはユニットをぶっ叩いた方が楽しいだろ』ってさ」
「フフフ……よくぞ見抜いたわ」
ンでも、実際便利よね。
呪文だと、スロットを1個使って、魔色も合わせて、それでマナも使う必要があるワケよ。
それに比べて、レーヴァテインなら、ポコッと叩けば1撃だもの。
「あ、でも待って? もしあたしが死んだら、武器はどうなるの?」
「その場に放置だね」
「生き返ってから、『戻れ』ってやっても?」
「うーん、状況しだいかな。戦ってた相手が悪意を持ってて、杖の所有者を書き換えちゃえば、杖は戻らない」
「ヒドッ!」
「だから、やられそうなときは、インベントリにしまっちゃう方がいいね」
「是非ともそうするわ」
試しに片付けてみた。――お、細長く変形して入るのね。インベントリってば、柔軟性高いわ。
銀狐は、ニコニコして見守ってくれてた。
「シャボンは、マホロバを始めたばかりかな?」
「ええ」
「じゃあ、そこにコモンの束があるから、持ってっちゃっていいよ」
「え、いいの!?」
指差したカウンターの脇には、たしかにカードが置かれていた。
「あたし、遠慮無く持ってくわよ?」
「いいよいいよ。レアやアンコを集めると、すぐコモンは余っちゃうからね。みんな置いてくんだ」
「は~。大人買いの強みね~」
そんなら、使いそうな色を4枚ずつ揃えましょ。――はい、緑と黒のコモン、コンプリート!
「あら?」
あたしはリストと見比べた。
「【雄蜂の斥候】っての、基本セットにないわね」
「ああ、上野の森のダンジョンで手に入るコモンだよ。動画撮影も出来るし、オススメのユニットだね」
「へぇ~」
オススメなら4枚入れときましょ。ヒョイヒョイとね。
「ねえ、銀ちゃん。この【タナトス】って黒魔法、緑の【エロス】と似て強くない?」
「うん、【エロス】の黒版だよね。緑と黒で染めたら、マナには困らないかな」
「それと……【闇の衝撃】って言うの? ダメージ2倍って、こんなスゴイのでもコモン?」
「こっちも瞬間魔法だね。攻撃がヒットしたタイミングのみだから、慣れがいるよ」
「2倍なら、狙う価値アリだわ」
使わなかったカードを外し、黒を投入。魔色は緑5、黒3にするわ。
「銀ちゃん。ハチって、こういう感じで使うの?」
あたしはその後、銀狐にしっかりと使い方をレクチャーしてもらった。
ユニットによる特殊攻撃は、首筋や心臓などの急所を狙ってクリティカルしないと発動しないんだって。とくに《麻痺》は、クセが強いんだとか。
オッケー、次からは積極的に狙ってみましょ。
30分後。
「銀ちゃん、ありがとう。これでユトリロデッキが来ても大丈夫ね」
「本来は、運営に動画を撮影して通報が一番だけどね」
「分かったわ」
あたしは銀狐にお礼を言ったのち、喫茶「サラマンダーの夜」の扉を開けた。
ふふーん。もうコレで、クマなんてお呼びじゃないわ。来れるモンなら来てみなさい!
「見つけたぞ!」
――え?
聞き覚えのある、野太い声。
そーっと声のする方を向くと、クマとウマとシカがいる。
「お前、もう終わりだぜ」
うわー、0歩で敵と遭遇とか……フラグ回収、早すぎない?
レーヴァテインに組み込まれた、一撃で倒せる呪文はコチラです。
【痛打/Hard Blow】
レベル1・茶魔法/コモン
分類:攻撃付与
効果:【痛打】を付与されたキャラクターの攻撃がユニットに当たった場合、そのユニットを退治する。それ以外のものに当たった場合、本来のダメージ+1点を与える。
「あたしが与えたその傷は、あなたが食らう最後の傷」 ――暗殺者




