幕間 集める者集まる者
あけましておめでとうございます!
今年も皆様にとってよいお年でありますように!
トラップの跡を片付けるのに、最終的に10分近くかかってしまったルガード達。破壊難度の高い障害物を壊せば経験値も入るとはいえ、今現在はお呼びではない。
そして入った先の部屋の、本当に入り口のすぐそこに倒れていた誰かを確認して、ルガードの中の人はため息をついた。
「またこいつらか……」
「本当、困ったもんだよねぇ」
ワイズも似たような事を言っているあたり、彼の中の人もうんざりしているらしい。その隣で“?”のアイコンを頭上に出しているフォーは、部屋の入り口で倒れている人物に心当たりは無いようだ。
『この2人何ー? ていうか天使とかめちゃくちゃ久し振りに見たんですけどー。そっちの三毛の人もレベル高そうだしー』
このチャットの文面を見る限りフォーの中の人も知らないらしい。まぁ、そうでなければフォーがアイコンを出す事もないのだろうが。
どう説明するか、と中の人が腕組みをして考えていると、ワイズの中の人がチャットで発言した。
『いやぁ、この頃よくあちこちでブッキングする2人組なんだよねぇ。そのたびにエリアボス (一定の範囲を周回する一回りレベルが高い固有名モンスター)を引き当ててなすりつけられたり、雑魚の群れをトレインしてきて目の前で死なれたり』
『うわ、酷いー。どう考えてもMPK狙いじゃないー』
『……ところが、本人達の態度を見ているとそうは思えないんだ……』
頭を押さえたい気持ちで中の人は会話に参加。ルガードの方を放置する訳にもいかないので、倒れている2人を両手で掴み、ずるずると扉の横に引きずって行かせる。フォーの中の人も『?』と発言しながら、フォーの装備をハルバードから白に金縁の、丸い大盾へ変更していた。
『何度遭遇して何度死なれて何度死にかけても、こいつらに殺意のさの字も見えたためしがない。どころか、何度もごめんなさい、と繰り返すからかまをかけてみたら、ルガードとワイズのコンビを知らなかったんだぞ』
『あれは驚いたねぇ……。わりと本気のジャブを叩き込んだらただの陽炎だった、って感じでさぁ』
『はぁー!? ルガードとワイズの殲滅戦争広域戦何でもござれな固定パーティ“マーチ”を知らないとか、どんな情報収集能力してる訳ー?』
『…………いくらなんでも本人の中の人相手に向かって直接言う奴はいないと思うんだが』
憮然と言い返してみるが、この評価はほぼ公式の物となっている上、中の人もそう呼ばれても仕方が無いと思うだけの心当たりがあるので強く否定する事も出来ない。
「……今の人達、放っておいていいんですかー?」
「気にするな」
「大丈夫だよぉ」
フォーのフォーらしい発言をスルーし、それぞれにアクティブスキルの準備をするルガードとワイズ。フォーも頭上に“?”のアイコンを出しながら体の正面に大盾をかざすように持ちあげて、
『じゃあ先にざらっとその辺の貰ってくよー』
「それじゃあ私から仕掛けさせてもらいますねー」
あくまで軽く中の人とほぼ同時に言って、ダン、と前へ飛びこんだ。
円形の部屋の真ん中、僅かに低く描かれている場所に複雑な魔法陣が黒い光で描かれる。そこから上へ紫の光が立ち昇って柱になり、数秒後、そこにはプレイヤーキャラの3倍は大きな山羊頭の悪魔型モンスターが出現していた。
刺々しさを強調した大きな剣を右手に持ち、上半身は筋骨隆々、下半身は山羊そのもので毛に覆われている。が、尻尾が蛇で黒い肌に紫の毛という時点で色々とおかしい。
出現したボスモンスターは1人飛び出しているフォーに目を向けると、「ケェェエエエェエエエエエ!!」と甲高い鳴き声で咆哮した。それに合わせ、周囲に小さな魔法陣が多数展開。1つにつき6体ほどの雑魚モンスターを召喚して消える。
最終的に50匹程になった雑魚モンスターを前に、フォーは白く金縁、丸い大盾を突きだして、
「大盾防御型アーツ其の一、『ブロック』!」
起点である大盾を中心に、部屋の半分ほどをカバーできるほど大きな見えない壁を展開した。フォーをスルーして後ろ、ルガード達に襲いかかろうとしていたモンスターが何体か弾き返されている。
「からのー!」
その間にフォー自身はもう一歩踏み込み、構える大盾との距離を0にした。密着する位置で力を溜めて、さらなるアーツを発動。
「大盾防御型アーツ其の五、『ハードバッシュ』!」
瞬間、ドン、と音を立てて雑魚の7割程が消し飛び、ボスモンスターの体力が2割ほど削れた。
『ハードバッシュ』自体は『バッシュ』の上位互換で、盾系アーツならどれでも修得できる共通技だ。盾をぶつける+発生した衝撃波でダメージを与えるので実体のないモンスターにも有効で、防御側から見れば一応かなり優秀な技ではある。
が、フォー (の中の人)の凶悪な所は、防御範囲を拡大する『ブロック』と併用する事にある。
『ブロック』の拡大防御範囲は扱う盾の種類に依存し、『バッシュ』の効果範囲は「盾の防御可能範囲」なので『ブロック』で拡大された見えない壁部分も対象になる。
『ブロック』の拡大防御範囲が最大になる大盾+筋力値極の馬鹿力でこの組み合わせを使うと、この通り。精々まとわりつくモンスターを吹きとばしたり、後方まで突っ込んできたモンスターを前線の向こうまで飛ばしたりするしか使い道の無かった『バッシュ』が、広域殲滅技に早変わりするのだ。
『相変わらず凶悪な……』
「そろそろ俺も行くか」
『盾でその攻撃力は反則だよぉ』
「殲滅速度じゃ負けてられないしねぇ」
『るっさいー。対大陸高機動殲滅兵器とか言われる2人に言われたくないしー』
『……え、何それぇ?』
『……まさか、また新しく名前が付いたのか……?』
『詳しくは語り部たちのかがり火を参照するようにー』
「もう一回行きますねー!」
「あと3秒待て!」
「いつも思うけどクールタイム早すぎじゃないかなぁ!?」
「ふわぁ……すごいなぁ~。すごいですよサーシィスさん。ほらほら、見てくださいよぉ~」
「言われなくても見てるいうのキャンドラ。まさに鬼のような殲滅力やね」
いつの間に復活したのか、扉の脇で会話する白い天使と三毛柄ケットシー。ボスモンスターにはできる限りダメージを与えないように注意しながら周囲の雑魚を殲滅し、大体湧きが終わった辺りで軽く一撃を入れて雑魚召喚を誘発させる。
鮮やかとしか言いようのない見事な狩りで、たまにボスモンスターが武器を振っても弾かれてあわや振った当人 (?)に突き刺さりそうになる始末。しかも、反射攻撃とでも言うべきものが失敗するたび吹き出しがいくつもキャラの頭上に出ている。
そして結局次の反射攻撃の精度が上がっている為、もう数発もすれば成功するだろう。
「名前言われて初めて掲示板見ましたからねぇ~……」
「確かに知らんて言うたら変な顔する筈や」
「え? サーシィスさんキャラの表情分かるんですかぁ~?」
「いや、雰囲気がなんとなく」
呑気に会話をしている三毛柄ケットシーことサーシィスはわざわざ何か考えるそぶりを取る。
ややあって、白い天使ことキャンドラに何事か耳打ち。それを受けたキャンドラは、満面の笑顔で何度も頷いた。
それににんまりとした笑顔を返しながら、サーシィスはメールを打ち始める。その宛先は当然、目の前で戦っている3人の内――――
……で、結局あんまり進んでませんねごめんなさいorz
例の4人の転換期です。
…………三箇日中には終わります。多分(オイ




