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エロゲー世界のただのモブに転生した俺に、ヒロインたちが押し寄せてきます  作者: 木嶋隆太


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第21話

「注目されてるわね、滝川」

「……みたいだな。二人は気にしないのか?」

「私たちは普段からこんな感じですからね」

「慣れてるわよね、このくらいは」


 ……なるほどな。

 俺も別に注目されることに慣れていないわけではない。

 開発者の一人としてあちこちに顔を出していたわけだからな。

 とはいえ、この世界ではただのモブとして過ごす予定だったので、ちょっと想定外。


 ……今は完全に主人公のように注目されてしまっているが、ここからモブへと軌道修正できるだろうか。

 結構頑張って行かないと、ダメだよな。

 そんなことをぼんやりと考えながら……俺はついに魂翼学園の校門へと到着する。


 ……受験の時にも訪れていたが、その時は合格するために集中していたため、周りの景色をじっくり眺める余裕なんてなかった。


 だが、今は違う。ゲームで何度も見てきた学園に通えるっていうワクワク感が爆発している。

 あの校門をくぐって、実際に廊下を歩いて、教室に座ってみることができる……それを想像するだけで、俺は高揚感に包まれていた。


 ゲームで何度も見たあの景色が現実に目の前にある。

 学園の広々とした敷地や整然と並んだ校舎、木々に囲まれた庭園……ゲームの中で画面越しに何度も目にした光景。

 それが目の前にあるという事実に興奮が収まらず、思わずきょろきょろと周囲を見てしまう。


「……ふふっ、滝川さん。なんだか子供みたいですね」

「そんなに学園に通いたかったのね」

「……まあな」


 微笑んできたセラフとルミナスに、くすくすと笑いながらそう言ってきた。普段は表情に出さないようにしていたのだが、どうやら隠しきれていなかったようだ。

 指摘されて少し恥ずかしくなって誤魔化すようにそう答える。


 ……とはいえ、胸の高鳴りはまだ止まらない。

 自分がこれからここで生活できるなんて、想像するだけで胸が高鳴るぜ。



 俺たちは校内を目指して歩いていっていたのだが、セラフとルミナスが両脇にいて、がっつり目立っていた。

 周囲からの視線が集まっていて、「あいつは何者だ……?」という感じで注目されてしまっている。


 俺の、モブとして生きていく計画が……。

 そんなことを一人嘆きながら、そういえばと思い出してセラフとルミナスに問いかける。


「……俺、自分のクラスをまだ確認してなかったんだけど、どこで調べるんだ?」

「え? 滝川さん、学園からのメール見てないんですか?」

「メール?」

「はい。クラス分けについては学園からメールが届いているはずですよ。私たちと同じクラスですよ」


 そう言って、セラフがこちらにスマホの画面を見せてきた。……確かに、彼女らの名前とともに俺の名前もあった。


「まあでも、ずっと忙しかったし仕方ないわよね。教室まではあたしたちが案内してあげるから任せなさい」

「……ああ、頼んだ」


 まあでも、校内の構造については俺の脳内にすべてインプットされている。そこら辺に放り出されても迷子にならないくらいには詳しいつもりだ。


 それにしても……二人と同じクラスか。

 俺一人だけ知らないクラスに放り込まれるというのは嫌だったけど、だからといってこの二人と一緒というのはな……。

 恐らくは、教室でも目立つことになるんだろう。


 二人とともに一緒に教室へ向かう。廊下を歩く度にすれ違う生徒たちの視線が二人に集中しているのが、俺にも分かる。

 セラフとルミナスを見た後、その視線が俺の方へと滑ってくる。「何者だあいつは……?」という様子で、警戒されているのが分かる。


 ……ああ、俺のモブとしてゲーム本編を楽しむという計画が。

 心の中で鳴きながら、教室へと入ると……教室にいた生徒たちから視線が集まる。

 天使や悪魔はもちろん、人間の生徒もいる。

 ゲームの時は意識しなかったが、一生徒として体験すると……見た目だけで騒がしい教室だ。


「セラフさん! ユニオン作ったって本当なんですか!?」


 セラフの方へと、一人の人間が駆け寄ってきて問いかける。ルミナスに、声をかける人はいない。あっという間にセラフは囲まれていく。

 ルミナスが俺の手を引っ張って、逃げるように黒板の方へと移動する。


「今のうちに、席でも確認しておくわよ」

「……了解」


 ルミナスは普段から仏頂面であり、周りからはとっつきにくいと思われている。

 だから、教室でもセラフ以外とはほとんど関わりがないというキャラクターだ。

 その設定はしっかりと一年の時から活かされているようだ。


 セラフが、じとーっと俺とルミナスに視線を向けてきているのを感じるぞ。


「はい……一応、ルミナスさんと一緒にユニオンを作りましたよ」


 セラフの言葉に、周囲にざわめきが広がる。天使たちの中には、セラフへじろりとした視線を送る者が何人かいた。

 その目はどこか険しく、冷たいものが宿っている。


 ……嫉妬、だろうな。恐らく、彼女らはユニオンを持てていない下級天使だろう。セラフに先を越されたことに対して、思う部分があるんだろう。

 セラフもルミナスも、周りから嫉妬されやすい立場だからな。仕方ない。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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