役立つか役立たないかじゃない殺るか殺られるかだ! by社会人
宿題。
宿された題材と書いて宿題だ。
……正確にはやらされている題材だが。
数学なんて一体社会に出て何の役に立つというんだ! sin、cos、tan? なにそれおいしいの?
「役立たない勉強なんてしてたまるかぁ!」
僕は宿題ノートを放り投げリビングでごろりと横になる。
勉強なんてしなくても生きているしな。
「人に勉強しろとよく言う癖にいいご身分ね。使郎」
上を見上げるとTシャツを着、気だるげな表情を浮かべた然が立っていた。
「なにしてんだ? リビングは僕が勉強してるんだぞ」
「使郎のしてることはサボりだと思うわ」
なるほど、確かに一理あるかもしれない。
だが、この冷房の効いた部屋から出る気は一切ない!
「でも確かに宿題は面倒だわ」
「だろ?」
然も宿題を持ってきてはいるようだがやる気はあまりなさそうだな。
「そこで考えたの。昨日ニュースで見たのだけど宿題代行サービスというのがあるらしいわ」
「宿題代行サービス?」
聞いたことないな。然の見てたニュースなら僕も見てたはずなんだけど。
「使郎はニュースを見てる時に阿波踊りを踊ってじゃない」
「ああ、確かに踊って…… っておい」
踊るわけないだろ? 阿波踊りとか…… 踊らないよ?
「まさか、あそこからAKB4○の踊りに繋がるとは……」
「まて、僕は一体なにをしてたんだ?」
記憶がない分余計にこわい。
「本当は寝てたわ」
「ああ、なるほど。それなら確かに記憶がないのはあたりま……」
「私の盛った薬でね」
「怖!」
にたぁと笑う然りを見て寒気が走るよ。こいつならやりかねない。
「まぁ、薬は冗談だけど、宿題代行サービスというは本当にあるのよ」
「マジかよ」
「まじよ」
なんで、夢のようなサービスなんだ。これでいろいろ忙しい僕も宿題というめんど…… いや、時間が足りなくて出来ない宿題が終わるという物じゃないか!
「ということで使郎。アルバイトに行ってきて」
「え、どういうことからアルバイトの話になったんだ?」
確か宿題代行サービスの話をしてたはずなんだが?
「ふぅ、察しの悪い奴ね。宿題代行サービスにはお金がいるのよ?」
「いや、だからなんで僕がアルバイトに行くという話になるんだ?」
「つまり私が宿題代行サービスを受けるためにはお金がいるのよ」
「うん、僕もだよ? ちなみに然、今幾ら持ってるんだ?」
「さっき人生という名のゲームでボロ勝ちした私に死角はないわ」
「それ人生ゲームだろ!」
「最強は政治家よ。すべての金は政治家に通ず」
「悪徳すぎる!」
「私の財布の中は札束でいっぱいよ」
「まじかよ⁉︎」
「日本銀行じゃなくて子供銀行よ」
「使えねえよ⁉︎」
こいつ常識大丈夫か?
時々心配になるよ。結婚とかいや、それ以前に彼氏とかできるんだろうか。
「まぁ、使郎が宿題代行サービスを私にすればいいのよ。無料で」
「ーお前、理不尽って言葉知ってるか?」
「私の辞書に不可能の文字はないわ」
「絶対、『理不尽』はあるだろ!」
「人生なんてちょろいわ」
「ちょろいと言う人間は宿題代行サービスを使おうなんて思わないから!」
「私は楽できるとこは楽を擦る人間よ。さっそく母さんに相談してくるわ」
そう言い、然は台所で晩御飯の支度をしている母さんのほうに走って行った。
いや、許可は降りりないだろう。
「使郎、許可が降りたわ」
「まじか⁉︎」
満面の笑みで帰ってきた然に僕は唖然とする。まさか、許可が降りるなんて、あの母さんが、、、
しかし、僕は然が持っている茶封筒が気になった。
「然、その封筒は?」
「母さんが『これを費用にしなさいって』」
僕はなんとなく嫌な予感を感じながら、然は全く疑いを持っていない珍しい笑顔で茶封筒を開ける。
すると中からはお諭吉さまではなく紙切れが入っていた。
「「なにこれ?」」
二人揃って声を上げる。僕は然から紙を受け取ると広げる。
『書き込み式ワーク 九千円~
英語翻訳 二千円~
ポスター 二万円~
作文、読書感想文 二千円
以上の金額が小遣いから引かれるから覚悟してね』
僕と然の小遣いは月三千円である。
「「……」」
二人して沈黙する。
こんなの頼んだら一年の小遣いがなくなるのは目に見えている。
「……宿題は自力でやらないとだめね」
「……だよな、役に立つ立たないは別としてもやっぱりいないとな」
僕と然はリビングのテーブルに宿題を広げると黙々ととりかかった。
その後ろで三日月状に口を歪めた母さんが覗いていることも知らずに。
「計画通り」
天白家は今日も平和です。(母は黒し)
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