美味しいもののためなら人はあっさり裏切る
時系列? なにそれ? 食べれるの?
購買部には伝説とも言える最強のパンがある。
オムそばパン!
焼きそばを卵で包みパンで挟みあげるというとってもおいしい超売れ筋のパンである。
そのくせ販売数はわずか十個というふざけた個数。食べたい生徒は多数いるが売れ切り必須の品と言われ涙を流す生徒が多いとも有名である。
つまり、
「購買は戦争だ」
「授業中に何を言ってるの?」
授業は四限目、あと五分で終わる。すでにほかの生徒たちも財布を手に握りいつでも走り出す準備が万端のようだ。隣の然をみると僕同様に財布を準備していた。
今日は母さんが珍しく寝坊したので弁当が僕らにはないのだ。
負けられない戦いがそこにはある!
キーンコーンカーンコーン!
チャイムの音が鳴り響き、授業の終わりのはずの教室に普通は発生しない緊張感が充満してし始めた。
「では、今日の授業はここまで」
「起立、れ……」
『おつかれしゃーす!』
礼と最後まで聞かずに何人かの生徒達は教室を飛び出した。くぅ、で遅れた!
僕も慌てて席を立とうと椅子を後ろに下げようとした瞬間、椅子が後ろに下がらないことに気付く。
「な!」
「ふ、障害は排除さしてもらったぜ」
「悪く思わないでほしいっす!」
神と永遠恋愛が笑顔を浮かべながら走り去って行きやがった! あいつら
「使郎」
「然、助けてくれ」
近くにまだいた然に助けを求めるが然は普段のむふょう場を歪めニヤリと笑い、
「てぇい」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
こいつ! 椅子を蹴って僕の足を机と椅子でサンドイッチにしやがったぁぁぁぁぁぁ!
痛みでのたうち回る僕を見て暗い笑みを浮かべる然。
「障害は消すに限るわ」
「ぜってぇ、許さない」
然は猛然と走り出し、一瞬で教室から姿を消す。
「あいつら、許すまじ」
恐らくは椅子にロープを巻き付けて動けなくしたのもあいつらだろう。
上等だ。
「絶対オムそばパン手に入れてやるからな!」
痛みを無視し、椅子を蹴飛ばし僕も然達を追いかけるように駆ける。すでに一階に向かう階段は購買、食堂に向かう生徒が暴徒と化した状態だ。しかたない!
判断は一瞬、手近な窓を開くと僕は窓の桟に足をかけ目の前の木に向かい飛びつく。
「なあぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!」
雄たけびを上げ木を掴むと一気に駆け降りる。
そして再びの疾走。
すでに僕の前には神、永遠恋愛、然の姿が見えていた。
「きさまらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕の声に三人が振り返り驚愕の表情を浮かべていた。
「あいつ、どうやって⁉︎」
「なんていう執念っすか!」
「侮れないわね」
好き勝手に言いやがって! 貴様らにはたっぷりと復讐してくれる!
「しかたねぇ、ここは俺が引き受ける! お前らはオムそばパンの買い占めを頼む」
『合点!』
然と永遠恋愛はそのまま先に走り去り、神が足を止め僕の前に立ちはだかった。
「まさか、きさまと戦うことになるとはな」
「神」
隙のない構えで進路を塞いだため止まらざるえなかった。フェイントをかけても引っかからない。
くそ、こういうとこに無駄なスペックを発揮しやがって。
「ここは穏便に行こうじゃないか使郎」
「そうだな、じゃんけんでどうだ?」
「いいだろう」
一定の距離を保ちながら僕と神は拳を構える。
『最初はグー、じゃんけん』
『死ねぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!』
二人同時にじゃんけん用に構えていた拳を目の前の敵に向かい繰り出し、二人同時に拳が腹にめり込んだ。
『ぐぇええ』
僕と神は二人揃って腹を抑え膝をついた。神の奴、じゃんけんとか言いながら殴ってくるとはなんて性格の悪い奴だ。
何とか先に立ち上がった僕はいまだに目の前で立つことのできない神を放置してヨロヨロと追い抜く。
「もう少し」
もう少しで購買、昼ご飯が食べられる。お腹減ったしね。オムそばパン! 待ってろよ!
今の僕なら然たちからオムそばパンを奪い取ることも辞さない!
角を曲がり、購買部のある場所にたどり着く。
そんな僕の目の前に呆然と立ち尽くした然と永遠恋愛の姿が目に入った。
「どうしたんだよ?」
呆然としている然達に話しかけると永遠恋愛は疲れたような笑みを浮かべ、目の前に張られている紙を指さした。
「読んでみるといいっす」
そう言われた僕はこんな感じ目の前に紙に視線を向けると、
《販売員不足のため臨時休業いたします》
「……」
僕も然達同様に沈黙するしかなかった。
天白家は学校でも平和です(午後の授業は空腹で過ごしました)
よろしければご意見・ご感想をお寄せください。




