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God of Labyrinth  作者: 無月
二章 白紙のページ
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二章 白紙のページ1話

 冬華が目覚めてから三日が経過していた。


 体調は良好、安静な日々。

 だが、このまま何もしていないのはよくないと思い至り、ニクロムに頭を下げて勉強を教えて欲しいと頼み込んだ。彼は笑顔で快く承諾してくれたが、何処から持ってきたか分からない大量の参考書を冬華の前に積み上げていた。

 積み上げられた本が消えればまた本が積まれの繰り返し数日、今では単語帳と書き取り用紙を交互に冬華は睨めっこしている。ニクロムに色々質問したり、世界についての話を聞いたりもした。


 文字では分からないので耳で覚えるしかないがまず、各地の種族別領地についてだ。

 今いる現地インシグニア中央大陸。

 紋章技術が発達しており、二つの大都市セーブル、パーピュアと王都アージェントで構成されている。

 黒葉、白葉が活動的に動く大陸。

 アージェントを中心に政が行われ主権者、即ち王様が大陸を統治している。

 代々王様は白葉が継承しており、長い年月をかけて人々の繁栄を願い続けてきた。

 パーピュアは紋章について学ぶ者たちを斡旋し、異世界人の保護も積極的に取り組んでいる。セーブルには紋章石が発掘される炭鉱があり、そこで働く者たちが多い。商業関係を生業にする者も自然と集まり、海に面した地を生かし他の大陸とも港業の交流が盛んだ。

 

 民草がより多く住む南西大陸オーア。

 高き英知誇るエルフが住む南東大陸アジュール。

 古の伝承者が住む北西大陸ギュールズ。

 そして、雪山囲む魔族が住む北大陸ヴァート。


 特にオーア、アジュールとの貿易が盛んに行われている。

 そのためか、交易などで流通する娯楽文化共有、資源供給に困ることはない。

 

 ギュールズとも交流はあるが宗教文化が強い。

 宗教といっても神を信仰している訳ではなく、紋章樹に宿る守護者を崇拝しているようだ。

 七人の守護者たちと救世主の物語は子供向け絵本にもあるらしい。簡単な文字を覚えたら探して読んでみてもいいだろう。

 

 あとは魔族についてだが、彼らは外交、貿易をしない閉鎖的な大陸だ。何処かしらの裏ルートが存在するのか他の大陸に時折潜入しているとのこと。身体特徴として男女ともに獣の耳と尻尾も持つらしい。昔はエルフ、人間との繋がりがあったらしく、人と同じ姿をした者も生まれるようだ。 


 ニクロムの話をよく聞くと魔族は紋章樹の影響を受けにくい性質を持っているそうだ。どうしてかと尋ねれば、彼は首を横に振って分からないと苦笑いをしていた。


 次は黒葉と白葉の関係性だ。

 

 以前黒葉について簡単な説明を受けたが、白葉については詳しく教えてもらっていなかったことを思い出す。長寿とだけしか聞いてなかったが詳しい話だと身体能力も上がるそうだ。

 白葉は白葉騎士団と呼ばれる団体が世界の均衡、国民、国家を守っている。王直属に仕える六人の騎士団団長がおり、指揮する者たちは威厳に満ち溢れているとのことだ。

 紋章樹管理は黒葉の仕事だが、紋章石を利用した事件などは白葉と情報を共有しないといけない。

 能力を司る黒葉は代表的な力として地水火風、五大元素がもっとも一般的だ。それ以外にも特殊な能力者がピンからきりまで揃っている。

 適材適所。

 任務の際はより適した能力者が選ばれ仕事をし、お金を貰って生活している。

 白葉からの要請任務が主になると責任重大らしい。


 黒葉は紋章樹を、白葉は人々に尽力し二つの組織は時に協力し支えあいながら務めを果たしていた。

 

 勉強とは関係ないが白い本についてもそれとなく聞いてみる。

 ニクロムはあまり詳しく話すつもりはないようで、こう返してきた。


「白は何色にも染まることが出来ます。全てが白なのは、色々な可能性を秘めているからですよ。だから、決して悪い意味でとらえてはいけません」

 

 と、しみじみ彼はそう言っていた。

 ニクロムなりに考えがあっての言葉なら冬華も真剣に向き合わなくてはいけない。白い本を見つめてある決心をする。


 冬華は白い本に青い万年筆で覚えたての文字を書きはじめた。

 日記だ。

 本に日々の出来事を記すことにした。

 字の勉強にもなるからと冬華は万年質を走らせる。たまに日本語になってしまう箇所もあるが時々なら大丈夫と呟く。


 ニクロムが言うには、婚礼儀式は三ヵ月後に執り行われる。

 

 その間までに冬華は帰らなければいけない。

 日記はそれまでの道標だ。記録は嘘をつかない、物語は進み続ける。

 白紙の本は色を変え何処にたどりつくのだろうか、冬華は万年筆を机の上に置き本をそっと閉じた。

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