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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百八十二話 本当にズルい女


「メアリさん! 貴方ね!! 言っておきますけど、ルディのお嫁さんになったら楽なんかさせませんからね!!」


 ビシっとメアリを指差し、そう言い切るディア。そんなディアに、『そうだ、そうだ』と言わんばかりにうんうんと頷いて見せるクリスティーナ。


「そーです!! メアリさん、間違っても自分だけ楽が出来ると思ってはダメですよ!! 私たちはこれから『家族』になるのです!! 家族は助け合うのが当然でしょう!! 一人だけ楽をしようとしないでくださいまし!!」


「別に楽をしようと思ってはおりませんよ?」


 そんな二人の言葉に『心外だ』と言わんばかりの顔と声音でそう言って見せるメアリ。事実、メアリ的には別に楽をしようと思っている訳ではないのである。そら、心外である。


「ただ……家族と云えど、勿論役割が御座います。ごくごく一般の平民のご家庭であれば、お父さんが仕事に行き、お母さんが家事や育児をこなす。これがラージナルの常識に御座いましょう?」


 男女同権が叫ばれる現代日本とは違い、ラージナル王国内ではまだまだこういう意識が根強い。現代日本より文明が発展していない以上、所謂『ホワイトカラー』と呼ばれる仕事は少なく、多くの仕事が人力で為されることがこの原因の一端だ。ジムが目指す大工だって、資材を運ぶのも木を切るのも、その切った木を組み合わせて家を作るのも人力なのである。男性と女性、筋肉の絶対量が違う別の『生物』であれば、当然に力仕事メインの職場には男性が付くことが多くなるのは必然と必然なのである。まあ、この事が『お金を稼いでくるのは男性』という認識に繋がり、引いては外で仕事をする男性がエライ、という男女差別につながっている事がラージナル王国でも問題視はされているが、本筋では無いので省く。


「クリスティーナ様はスモロア王国の姫君ですし、きっと外交面でその力を大いに発揮するでしょう。クリスティーナ様の叡智は既にラージナルだけではなく他国にも知れ渡っておりますし」


「……」


「クラウディア様は国内最大貴族のメルウェーズ公爵家のご令嬢。貴族の半分――とは申しませんが、諸侯貴族のその多くは言ってみればメルウェーズ家の『部下』の様なものに御座いましょう? 内政面でその力を大いに発揮される事でしょう」


「……別にウチは他家の『内政』にまで関与しようとは思ってはおりませんが……まあ、他家が我が家の顔色を伺うことまでを抑える事は出来ませんね」


 メルウェーズ家が好むと好まざるに関係なく、国内最大諸侯貴族であるメルウェーズ家の『ご威光』は届くのだ。メアリは諸侯貴族といったが、宮廷貴族だって同じことだ。事実、メアリの実家がメルウェーズ家に睨まれたらその場で貴族生命は終わりと言っても過言では無いのである。実質自身の子飼いの部下と言っていい『宮廷貴族』、国王家は守ってくれないのかと言われそうではあるが……国王家も暇ではないのである。伯爵や侯爵レベルとなればメンツも掛けて守ろうとするだろうが、吹けば飛ぶようなメアリの実家までを守るような時間のリソースは圧倒的に足りて無いのだ。


「……そうなると私に出来る事は知れております。精々がルディ様のお側に控えて身の回りのお世話をさせていただくことくらいになりそうではありませんか?」


「……うぐぅ」


「……そ、それは……」


 ディアにしろ、クリスティーナにしろ、メアリの力は認めているのだ。正直、たった一人で王族であるルディのお世話をしている――出来るのがほぼ異常なスキルであり、一メイドで処理できる程の処理速度では無いのだ。


「……勿体ないですね。メアリさんなら、人の上に立つのも向いてそうですが」


「そうですね。あまりこういう言い方はしたくありませんが……メアリさんの爵位が伯爵、せめて子爵であれば……」


なによりあの頭のおかし――くるっ――愛が深い、ルディ様ファンクラブの会長でもあるのである。人心掌握能力も高く、秘密を外に漏らすことなく、あの愛が深い集団を暴走することの無いようにまとめ上げているのだ。ファンクラブの会合まで開き、ルディのジャケットまで手作りして、その上で一人でルディの予定を全て回して、である。イベントスタッフ、テーラー、マネージャー業を鼻歌交じりでこなしたうえで、趣味の時間もきちんと楽しんで、である。超人なのだ、こう見えてメアリは。


「勿体ないお言葉です。ですがまあ、私はこの立ち位置に満足しておりますし」


 だが、メアリにとってはそんな事は関係ないのである。彼女はルディの側に居られれば幸せであるし、それだけが出来ればなにも文句は無いのだ。そう思い、メアリは笑顔を浮かべて。




「なので、安心してくださいませ! お二人の御子息、御令嬢が生まれた際には不肖このメアリ、全力でお二人の子供を育てさせて頂きますので! お二人はどうぞ、ルディ様の外向きのお仕事をよろしくおねがいします!!」




「「だから、ズルいって、それ!!」


 自分の希望全振りのメアリの言葉に、クリスティーナとディアの絶叫がハモった。




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