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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百七十八話 私、地位も名誉もお金もありますし?


「……本当に、正妃と側妃問題は難しいですね。正直、解決策も見えませんし」


 肩を落としたまま、三杯目の紅茶に口を付けるクリスティーナ。そのまま、はぁとため息を漏らしながら視線を隣のディアに向ける。ディアはディアで難しい顔のまま、こちらも紅茶に口を付ける。


「……まあ、私たちが考えても仕方ないことではありますが」


「そうですね」


 貴族同士の婚姻など、家と家の事柄の最たるものと言えるだろう。ある意味――というか、物凄く幸せな事ではあるが、恋愛結婚故に悩むのである。どちらか、或いはどちらもが此処までルディの事が好きで無ければ悩むことは無いのであるから。まあ、恋愛結婚ではない、純粋な『家』と『家』の場合、悩み事は無いだろうが本当に家と家の『戦争』になりかけかねないのだが。


「……」


 そんな二人の話をなんとなく見ていたメアリの表情の、その微妙な変化に気付いたディアが、首を傾げながらメアリに声を掛ける。


「……ええっと……メアリさん? 何か言いたげな顔をされていますが……どうかされましたか?」


「ああ、いえ……いえ、ですね。なんでもありませんよ?」


 にっこり微笑んでそういうメアリ。そんなメアリに、クリスティーナが更に追撃を続ける。


「言いたいことがあれば言って下さいまし。これから、『家族』になるのですから。なんでもかんでも言いたいことを言えば良いとは言いませんが……その様に気を遣われるのもどうかと思いますよ?」


 メアリ以上ににこやかな笑顔を浮かべるクリスティーナ。そんなクリスティーナに、少しだけ悩み……それでも二人からこう言われている事、なにより幼い頃よりよく知るこの二人が、『一度言い出したらきかない』性格であることを熟知しているのだ。顔に出てしまったことを後悔しつつ、メアリは口を開く。


「……大したことでは無いのですが……その、ですね? お二人とも正妃の資格のあるお方であると思います。どちらが正妃になっても、なんの問題もないお立場や気品だと思います」


「ええっと……」


「ありがとうございます……?」


 何が言いたいのかよく分からない、首を傾げながら口を開く二人に、メアリは少しだけ言い淀みながら。




「その……お二人自体はどうなのですか? 正妃に『なりたい』か、『なりたくない』か……『家』の事情を除いた場合は、どうなのでしょうか?」




 メアリに言葉に、クリスティーナとディアが目を見合わせてきょとんとした顔を見せる。そう言われてみれば、そうだ。


「……立場的に正妃になるしかないと思っていましたが……確かに私自身がどう、とか言う事は無いですね。別に正妃である必要もないですし、求められたら正妃もやりますが、という感じですかね? クリスはどうです?」


「私的には正直、正妃なんて御免です、という感じでしょうか。出来ればクララが正妃、私が側妃の方が良いですね」


「……そうなのですか?」


 クリスティーナの言葉に、メアリが首を傾げる。別にメアリとてルディの正妃になりたいという――まあ、『野望』を抱いている訳では無いのだ。なので、別にルディの正妃はどちらがなっても良いのだが。


「……少しだけ意外でした。クリスティーナ様は正妃になりたいのかと思っておりましたので」


「ルディの『立場』が昔のままならそうも思いますよ? 王家の分家ならば、側妃を取ることも……まあ、あるかも知れませんが……」


 国王の一番の仕事は、誤解を恐れずあえて強い言葉で言えば『血のプール』である。政治も、外交も、軍事も重臣に放り投げる事は出来るが、『お世継ぎ』を作る仕事は国王本人にしか出来ないからだ。


「ラージナル王家としても、『血の分散』は避けたいでしょう? 将来の禍根になりかねませんし。それならルディに……そうですね、『与えられる』お嫁さんは一人です。必然的にそうなると正妃ですので……」


 これが『国王家からの分家』となると少しばかり話が違ってくる。血のプールは必要ではあるが、あまり『血』を多く分け与えて貰っても困るのだ。石を投げれば王位継承者にあたる、それが他国の大貴族でした、なんてことになったら歴史に学ぶ必要もないくらい、大問題なのはわかるだろう。


「今なら別に、私自身が正妃になる必要もありませんね。どんな立場でもルディは公平に接してくれるでしょうし、それならば公式行事で前に出なくちゃいけない正妃なんて面倒くさいですよ。既に『姫』として十分、今までその役目は果たしましたから。言いませんでしたっけ? 私の夢は、ルディと海沿いの小さな一軒家で家族と慎ましく暮らす事ですから」


「それは……お聞きした事はありますが……」


「そもそも、正妃になるとお家の家格が上がったり、経済的な厚遇が予想されたりしますが……」


 はぁ、と小さくため息を吐いて頬に手をやり。




「――私の実家、王家ですし? 既に地位も名誉もお金もあるんですよね。今更正妃になった所で……」




 なんか、悪役令嬢みたいな事を言いだした。




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