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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百五十五話 ハモりは幼馴染のお家芸


 ルディの『僕、ディアの事、大好き!』(意訳)発言に、ポカンとする面々。そんな面々からいち早く立ち直ったのはアインツだった。流石、次期宰相候補。


「あー……まあ、未来の国王と王妃が仲が良いのは良い事だな、うん」


「王妃が毒妃の可能性があるが、良いのか、アインツ?」


「黙れエディ。これ以上問題を厄介にするな」


 はぁと息を吐いて、アインツは目の間を揉む。苦労人なんだ、彼は。


「それで……ルディがクラウディアを娶る、という事はだ」


 その表情を真剣な表情に変えて。




「――ルディは、王位を継ぐという意思表示とみても良いのか?」




 真剣なアインツの表情に、ルディは肩を竦めて見せる。


「朝のバイキングでする話? もうちょっと、人気の無い所で話す話じゃないかな?」


「鉄は熱いうちに打て、とも言うしな。幸い、エディとクラウディアのおかげで此処には『知り合い』しか居ない。むしろ絶好の機会では無いか?」


 おそるべきはエディとディアの婚約破棄である。人払いの効果、絶大なのだ。辺りを見回してそういうアインツに、ルディは『はぁ』とため息を吐いて見せる。


「どう思う、エディ? 次期国王候補第一位サマは、僕が王位に就くことについての見解を聞かせてよ?」


 ルディのその言葉に、エディはフンと鼻を鳴らし。


「今更何を。私は賛成ですよ、兄上。前から言っていますが、私より兄上が王位を継いだ方が良い」


「平凡王子なのに?」


「兄上が平凡など、この場の誰も思っていませんよ? 外野には勝手に言わせておけば宜しい」


 エディの言葉に一同――クレアを除いた全員が頷いて見せる。正直、クレア的にはルディが『良い人』である認識はあるが、皆に推されるほどの人物であるかどうかの判断は付きかねるので、此処は中立を維持だ。


「……外野に勝手に言わせておけ、とまでは俺は言わない。正直、今までのエディの評判もあるし、王城の中もエディを推す流れが出来つつある」


「なら、エディに王位を継いで貰うのが無難じゃないかな? ディアの話じゃ……僕が王位に就かなくても、ディアとの将来自体はあるんでしょう?」


 ルディの言葉に、ディアは『ええ』と頷いて見せる。


「勿論、ルディとのけ、結婚にその障害はありません。ありませんが……」


 少しだけ言い淀むディア。そんなディアに、ルディははぁとため息を吐いて見せる。


「ディアも、僕に王位に就いて欲しい?」


「その……はい。あ、別にどうしても王妃になりたいとか、そういう理由じゃ無いんです!! でも……」


 唇を噛んで。


「……私は悔しいんです。ルディは、本当は凄い人なのに、『平凡王子』なんて言われて……そんな評価、ルディには相応しくない」


「平凡は平凡だよ、僕?」


 ディアの言葉にルディは苦笑を浮かべて見せる。そんなルディの言葉に、ディアは抗議の声を上げようとして。


「外野に言わせておけ、とは言わないが……ルディの評価を覆す事など造作もない」


そういうアインツに、ルディは首を捻って見せる。


「どうやって?」


「一番簡単なのはルディの『実績』の披露だな。エルマー殿と開発した技術の数々は、我が国だけではなく世界の発展に寄与している。この一事だけでもルディの非凡さは表せるだろう」


「実績って……僕はアイデアを出しただけ。実際に開発したのはエルマー先輩だよ? その実績を横から掠め取るのはちょっと……」


 眉を下げて困った顔をするルディに、アインツは苦笑を浮かべて見せる。


「その辺りはエルマー殿に聞いてみろ。きっと、彼は彼で『この発明は全てルディのアイデアのおかげだ』と言うだろうがな」


 アインツの言葉に、ルディは渋い顔をして見せて。




「……エルマーって、地味に自己評価低いよね? あれだけの開発をしているのに、自分の力では何も作れないとか言うし……もうちょっと自信を持っても――なに、その顔?」




 ルディのその発言に、アインツ、クラウス、エディ、ディア、クリスはお互いの顔を見合わせて。




「「「「「――お前が言うな」」」」」





「ハモってまで言う事!? そもそも、僕は自己評価が低いんじゃなくて、正当な評価なの!! エディと僕なら、エディの方が優秀じゃないか! 勉強だって運動だってエディの方が上だよ!!」


 ルディの抗議の声に、アインツは苦笑を浮かべて見せた。いきり立つルディを『まあ、落ち着け』と手で制して。




「……まあ、ルディの言う事も分からんでもない」




「「「…………は?」」」


 三人の声が、これまたハモった。


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