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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百三十八話 美少女無罪♡プリンセス


「る、ルディ!? 大丈夫ですか!?」


 アインツの『泣くな』発言に『はっ!』と気が付いたディアは、先程まで胸倉を掴んでいたクリスティーナを『ぺい』と放り投げて、慌ててルディに駆け寄る。そのままルディのほっぺやら髪の毛やらをぺたぺたと触って、何処にも怪我――と、クリスティーナによるマーキングの後がない事を確認してほっと息を吐く。え? なんでマーキングの後がないか分かるかって? そりゃ、ディアだからだよ。


「……よしよし。怖かったですね、ルディ。あの痴女に襲われそうになって……泣く程怖がらせるなんて、本当にあの痴女はどうしようも無いんですから……」


 そう言って放り投げたクリスティーナに『きっ』とした視線を向け――ながら、これ幸いとルディの頭を自身のその貧相な胸部で抱きしめるディア。


「……よしよし」


「……ディア」


 その姿をみたアインツは、慈愛に満ちたディアの瞳と安心した様にディアの胸元に顔を埋めるルディの姿に、まるで一枚の絵画を見る様な、一種静謐なその雰囲気を――




「……ああ、勘違いか」




 感じなかった。いや、正確には一瞬感じたのだが……ディアの目がだんだん『とろん』としてきて、頬は上気し出すし、『はぁ……はぁ……ルディが……私に甘えてる……く、くぁわいい……』と息を荒げている姿に、気のせいだったことにした。


「る、ルディ!?」


放り投げられた体勢から立ち上がったクリスティーナはディアの視線と……なにより、頬に涙の痕が残るルディにぎょっとした顔を浮かべて慌ててルディの側に近寄る。


「な、なぜ泣いているんですか!? っていうか、クララ! 今すぐルディから手を――っていうか、なにその貧相な胸でルディを抱きしめているんですか!! 今すぐ離しなさい!! 言っておきますけどね、クララ! 今の貴方、まるで性犯罪者みたいな顔してますよ!! 鏡をみなさい、はしたない!!」


 自分のしたことを完全に棚に上げてディアを罵るクリスティーナ。その姿に、流石のディアも呆れた様に『はぁ』とため息を吐いて見せる。


「……盗人猛々しいを地で行くような事を、よくもまあ……なぜ泣いている? そんなもの、決まっているじゃないですか!! ルディは怖かったんですよ!! 泣くに決まってるじゃないですか!!」


「怖かった?」


 そんなディアの言葉にきょとんとした表情を浮かべるクリスティーナ。が、それも一瞬。慌てた様に両手をわちゃわちゃと振って見せる。


「え、ま、待って下さい!! わ、私、女の子ですよ!? ルディより力、絶対ないですよ!? 同い年ですよ!?」


 クリスティーナの言葉は――『お前が言うな』という事だけを除けば、概ね正しい。いかにルディが『平凡王子』とはいえ、流石にクリスティーナとガチンコで組み合えばルディの方が力が強いのは分かり切った事なのである。


「そ、それは……」


「それも美少女の!!」


「……それ、関係ありますか? っていうか、自分で美少女ってこの状況でよく言えますね!?」


 ディアの言葉に、クリスティーナはもう一度慌てた様に両手をわちゃわちゃ振って見せて。




「――え? だって私、結構な美少女で、お姫様ですよ!? 美少女に迫られたら、普通に男の子は嬉しいんじゃないんですか!? そう聞いていたんですか!? メアリさんとかよく言ってたじゃありませんか! 『美少女に迫られて嬉しくない男の子なんていない。美少女は、こと男性関係なら積極的に行っても無罪になる!』と!!」




 美少女無罪♡プリンセスである。略してびしょプリ。


「そんな訳ある――…………」


 クリスティーナの言葉に、尚も『うがーっ』と気炎を上げかけたディアがその口を止めて、ルディを見やる。


「……そんな訳、ありません……よね?」


「当たり前じゃん!」


 ディアの疑いの視線にルディも声を上げる。酷い冤罪だ。


「……ですが……確かに、モノの本で読んだことはありますし、私もメアリさんから聞いた事はあります。それに……男性は上半身と下半身は別のイキモノとも聞きますし。どんなに頭で拒否しても、美少女にはコロッと行ってしまう事もあると……」


 自信が無くなって来たのか、段々ディアの言葉が弱くなる。そんなディアに勝ち誇ったかのようにクリスティーナはその大きな胸を張る。


「でしょう!? ほら、ルディだってきっと、悪い気はしなかったはずです!!」


「ですが、泣いていた理由が……」


「それは、アレです!!」


「あれ?」


 ディアの胡乱な目に、クリスティーナは堂々と胸を張って。




「――残念だったからです!!」




「……え?」


「ルディだって男の子です!! 据え膳どころか、口元に箸を持って行って『あーん』までしたのに、食べられなかったんですよ!? そら、悔し泣きの一つもするでしょう!?」


「そ、それは……」


 クリスティーナの言葉にディアはしばし考え込んだ後、疑惑の視線をルディに向けて。




「……確かに」




「確かに、じゃないから!! っていうかディア! 上半身と下半身とか言わないで!! なんか生々しいから!!」


 襲われて、誤解されて、疑いの目で見られる。流石に被害者のルディ、哀れである。




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