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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百三十二話 ホストクラブ『このえきしだん』


「アインツのその考えは、近衛の戦力を大幅に削減する、という解釈で宜しいでしょうか?」


「そうだ。まあ、直ぐにどうという話でも、直ぐに出来る話でもないが……少なくとも俺たちが大人になり、ルディかエディが王に、お前が王妃に、俺が宰相で、クラウスが第二近衛を真に率いる頃には……今の近衛騎士団とは違った組織になっているだろうな」


 淡々とそう喋るアインツに、『ふむ』と頷いてディアはにっこりと笑って。




「そうだとすれば、私は反対ですね」




 アインツの言葉に明確に『否』を突き付けるディア。そんなディアに、先程のディアと同じように『ふむ』と頷き、アインツは口を開いた。


「理由を聞いても良いか?」


 そんなアインツの言葉に、わざとらしく『はぁ』と息を吐くディア。


「逆に理由を問いたいのですが? 近衛とは、王の近くに侍る存在です。そんな存在が『弱く』て良い筈がないと思いませんか? 近衛は王家の剣にして、盾です。国王を、王族を守る存在でしょう?」


 呆れた様にそう言ってディアはもう一度、ため息を吐く。



「……謀反を疑われても可笑しくないですよ、アインツ。これは幼馴染として……そして、将来の『王妃』としての忠告です。止めておきなさい。それとも……未来の『王妃』たる私から、私自身を守る『盾』を取り上げますか、貴方は?」



 挑発的なその視線を苦笑で受け流し、アインツは口を開く。


「確かにな。お前にとっては、近衛とは自らを守る盾となるものだからな。その盾を弱体化させるなんてのは持ってのほかだろう。その思想自体は間違っていない」


「でしょう? 何処の世界に、自身の守りを薄くする人間がいますか。貴方だって嫌でしょう? 自分の周りがいつでもピンチ沢山の地雷原なんて」


 そんなディアの言葉に、アインツは苦笑で頷く。


「クラウス辺りは『なに? 常在戦場! 望むところだ!!』と言いそうだが。普通はいないな。誰だって自分が可愛いし……なるだけ命を守りたいさ」


「でしょう? なら――」


「だが、それはそもそも発想が逆だ」


「――……逆?」


 ディアの言葉に首肯で応え、アインツは言葉を続ける。


「近衛は王に近侍する存在だ。そんな近衛が尤も活躍する時はどんな時か分かるか? 国王陛下の側に侍ると言うことは王都に常駐するって事だぞ? なら、近衛が活躍する時は」




 敵国に王都深く攻め込まれて、『城下の盟』をさせられそうな時。




「周辺の諸軍が散々に打ち破られて、ラージナル王国がボロボロになった時に初めて近衛軍は初戦を迎えるんだ。分かるか? そんな状態で幾ら近衛が強かろうが、戦況を引っ繰り返せる訳が無いだろう?」


「それは……まあ、そうですね。ですが、それでも逃げる時間くらいは作れるのでは? 弱い軍隊では、あっという間ですが……」


「逃げた先でどうする? 国家も国土も国民もいない『国王陛下』など、とんだお笑い種だ。そこまで言ったらクラウディア、先程の貴族の常道だ。『命より名を惜しめ』、潔く自害した方がましだ」


「……捕虜は賛成なのでは?」


「賛成だ。だが、俺だってラージナル貴族だ。臥薪嘗胆の機会もない、国が散々に敗れた以上は、潔く散った方がマシだ。さっきも言っただろう? 生き汚く行きたくはない、と」


 文化系よりだが、アインツだって貴族令息だ。『もしも』の時の覚悟なんぞ、とうに決まっているのだ。


「……」


「クラウディアの不安も良く分かるがな。金も無限にある訳ではないし……要は選択と集中だ。クラウスが任せられる第二近衛には『実』を、貴族令息で結成された近衛騎士団には『花』を持たせるだけだ」


「『実』と『花』ですか」


「実際、近衛騎士団の所作は洗練されているしな。後は見目も麗しい人間を入れて一種の『サロン』的な雰囲気にしておけばよいだろう。幸い、この国の貴族階級は大体見目麗しい」


 ラージナル王国の貴族は皆、眉目秀麗である。まあ、一応この『わく王』の世界は乙女ゲーの世界であり、見た目は普通以上が当たり前――という理由ではなく。


「……まあ、そうでしょうね」


 権力を持つ貴族が、若くて美しい娘と結婚をする。そうなると、生まれてくる子供が母親に似れば美男美女の子供が生まれる。その美男美女の子供が他所の貴族の娘を見初め、或いは見初められ、更に子供を産む。その子供も眉目秀麗で……という、この『血のループ』が続いた結果、ラージナル王国は異常に貴族階級の美男美女の多い国になってしまったのである。これもまた、周辺諸国より中央集権化が遅れた事により、貴族制度やなんやらの諸整備が遅れた事により、王国建国の最初の頃は『どこそこのお家柄の娘さん』よりも『若くて綺麗なべっぴんなお嫁さん』の方が好まれた事もある。これもある意味では、立派なラージナル文化だったりするのだ。真に、遺伝というのは凄い。



「……国家行事や外交で活躍してくれるのではないか? うん? そうだな。他国に比べれば顔立ちが整った人間も多いし……上手くすれば、ハニートラップ――この場合はダーリントラップか? そういう利用価値もあるんじゃないか? うん? もしかしてこれ、中々いいアイデアかも知れんな!! 感謝する、クラウディア! 君と話したお陰でいい案が思いついた!! 令嬢やマダムに、酒と笑顔と素敵な会話を提供し……お代は情報、と……うむ、素晴らしい!!」



「……ええ~……」



『ホストクラブ・このえきしだん』の爆誕だ




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