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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百九十六話 だから、もうお腹いっぱいだって!



 完全にやさぐれモードのエカテリーナは、不満を湛えた瞳のままでアインツに向かって口を開く。


「……いえね? 私だって学園に通う年頃の女の子です。クララ様のルディ様への想いも、それが叶えば良いな~という気持ちも勿論あるんです」


「……そうか」


「でも!! 流石に婚約者が居て別の人に想いを寄せていました、むしろ婚約破棄ラッキーです! なんてどうなんですか!! 流石にそれ、倫理的にちょっとじゃないですか!? しかも好きな人が婚約者のお兄様なんて……きょうび、三流ゴシップ記事でももうちょっと設定練った嘘書きますよ!?」


「うん、それはそう。それはそうなんだが……」


 少しばかり困った様な表情を浮かべるアインツ。


「エミリア嬢には少しピンと来ないかも知れないが……俺たちが幼い頃のルディは本当に優秀でな? 無論、今でも優秀は優秀なんだが……」


 目だけで『知っているか』と促すアインツに、エカテリーナは少しだけ曖昧に首を縦に振って見せて、言い難そうに口を開く。


「……不敬ですかね?」


「平凡王子か?」


「ええっと……まあ、はい」


「まあ、不敬は不敬だろうが、別段騒ぎ立てるつもりはない。ルディ自身も納得している節があるしな。個人的には能ある鷹は爪を隠すにしても、隠しすぎだろうとは思うが……まあ、それは今は関係ない」


 能ある鷹ではないのだが、それは今のところはこちらも置いておく。


「……幼い頃、クラウディアの婚約者はエディじゃなかったんだ」


「……へ? そ、それじゃルドルフ殿下だったんですか!? な、なんですか、そのマジで演劇みたいな展開!? え、ええ!? そ、そんな悲恋が隠されていたんですか!? そうして、今ようやく二人は結ばれるって……え、な、なにそれ、素敵じゃないですか!!」


 エカテリーナもまた、ラージナル文化の正当なる後継者であるのだ。そう言う話、大好きだったりする。頬を真っ赤に染めてそう言い募るエカテリーナに、若干引いた様子でアインツは口を開く。


「あー、いや、そういう訳でもなく……なんと言うか、ルディかエディか、どちらかの婚約者だったんだ。まだ五歳の頃はどちらの婚約者になるか確定していなくて、長じて優れた方――つまり、王になる方に嫁ぐと、そう決められていたんだ」


 アインツの言葉に先程まで興奮した様子から一転、きょとんとした顔を見せた後、エカテリーナの顔がイヤそうに歪む。そんなエカテリーナの表情に苦笑を浮かべて、アインツは口を開いた。


「言いたいことがあれば聞くが? 無論、黙っておく」


「なんですか、その蟲毒みたいな方法。競い合わせて優秀な人間を王位に就けて……商品はクララ様と王位?」


 ふんっと鼻で笑って。




「控えめに言って、最低ですね?」




「まあな」


 エカテリーナの言葉に、アインツも苦笑の色を強くして頷いて見せる。


「クララ様も可哀想ですが……それ以上にエドワード殿下とルドルフ殿下が可哀想過ぎますよ。いえ、勿論、貴族、しかも王族である以上優秀な人が、国家の頂きに立つべきだという考えは分からないでは無いですが……」


 釈然としない表情のエカテリーナに、アインツも曖昧な顔を浮かべて見せる。


「まあ、お互いに切磋琢磨をして来た結果、今の二人の実力と立場があるから、一概に教育方針が完全に間違っていたとは言わないさ。私も、あまり良い方法では無いとは思うが……これだって、ルディとエディの幼馴染だから、という点も大きいと思っているしな」


「仲良しだから、ですか?」


「そうだ。加えてクラウディアとも幼馴染で……まあ、クラウディアだって大事な幼馴染だ。そんな幼馴染、全員が不幸になる様な話はしたくないだろう?」


「そう、ですね」


 アインツの言葉に、エカテリーナもしんみりした様に下を向く。そんなエカテリーナに、アインツは声を励まして。



「――だが、それも今までは、の話だ。これからする話は皆がハッピーになる話だ。どうだ、エカテリーナ嬢? 聞いてみないか?」


 そう言ってアインツは言葉を切って、視線をエカテリーナに向ける。その視線を受けて、エカテリーナの頬が『ひくっ』と引くついた。


「……あの、アインツ様? なんか私、昔から勘が良いというか……危機回避? ともかく、『なんか危なそう』っていう事が分かるんですよ。そして今、その私の『危険感知器』がビービーと音を立てて鳴っているんですが? その、あんまり私にとって聞きたくない話をしようとしていません?」


「そんな事は無いさ。ただ、君に二つだけお願いがあるだけだ」


 そう言ってアインツはにっこり笑って。




「エディの代わりにルディを王位に就けようと思うんだが、協力してくれないか?」




「え? もしかしてクーデターの話をされてる!? これ以上の国家機密はお腹いっぱいなんですけど!?」



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