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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百八十七話 主人公より主人公


「こ、この裏切者! は? お、幼馴染だと? 何を言っているんだ、お前は! なんで、なんでお前に幼馴染が居るんだ!! え? 俺、聞いていないんだが!?」


 口の端から泡を飛ばさんばかりの勢いでそう捲し立てるアインツに『うるせーな』と一言、クラウスは面倒くさそうに顔を顰めて見せる。


「なんで一々アインツに報告しなくちゃいけねーんだよ。俺にだって俺の交友関係くらい、あるに決まってんだろうが。んなもん一々言うか?」


「そ、それはそうだが! でも、俺ら、幼馴染だろうが!! 普通はもうちょっとこう、報告とかあってもいいんじないか!? そんなステディな関係の幼馴染が居るのならば!!」


「……なんだよ、ステディな関係って」


 心底呆れた様にため息を吐いて見せるクラウス。そんなクラウスを親の仇を見る様な目で見た後、アインツは『はっ!』と何かに気付いた様な表情を見せる。


「これは、アレか! 実は本当に『タダの幼馴染』というパターンか! 小さい時からの知り合いではあるが、そこまで仲良くないとかの、そんなパターンか!? そう思わないか、ルディ!?」


 アインツに希望の光が差す。別にクラウスに不幸になれ! とかはアインツも思ってはいない。いないけど、流石にこれは酷くない!? というやつだ。いや、本当にクラウスは全く悪くは無いのだが。


「……あー……それはどうだろう?」


 そう言って視線を向けた先、ディアとクリスティーナの二人と談笑するエカテリーナの姿があった。


「――お久しぶりです、クラウディア様。クリスティーナ殿下は初めまして、ですね。私、エカテリーナ・ロブロスと申します。ラージナル王家より伯爵位を賜っております、ロブロス家の長女になります。以後、お見知りおきを」


 丁寧にカテーシーをして見せるエカテリーナに、ディアとクリスティーナも同様にカテーシーをして見せた後、表情をにこやかなそれに変える。


「こちらこそ、お久しぶりです、エカテリーナ様」


「丁寧なご挨拶、痛み入ります。私はスモロア王家第一王女、クリスティーナ・スモロアと申します。以後、お見知りおきだけでは無い関係が築ければと思っておりますわ」


「勿体ないお言葉です、殿下」


「折角ですので、クリスティーナと」


「では、クリスティーナ様。私の方こそ、今後ともよろしくお願いします」


 そう言って笑顔を浮かべるエカテリーナにクリスティーナも笑顔を浮かべ――そして、その笑顔をニヤリとしたものに変える。


「……そうですね。これからは『仲良く』やっていく必要がありそうですね、クララ?」


 そのクリスティーナの言葉に、ディアもにやーっと笑って見せる。


「そうですね、クリス。なんと言ってもエカテリーナ様は私たちの『大事な幼馴染』であるクラウスの『良い人』なのですから。これはもう、本当に本当に仲良くする必要がありますね~」


 洋の古今も、東西も問わずに女子はコイバナ大好きである。それは異世界でも変化なく、クリスティーナとディアに囲まれたエカテリーナは目を白黒とさせる。


「い、良い人なんて……私とクラウスはべ、別に……た、ただの幼馴染っていうか、領地が隣同士なだけで……そ、それこそ兄妹の様に育ったっていうか……」


 頬を赤く染め、チラリチラリとクラウスを見ながらそんな事を言うエカテリーナ。そんな姿をみながら、ルディは視線をアインツに向けて。


「……そんな血涙流すみたいな顔しなくても良くない、アインツ?」


「……るでぃ……だって、アレ! アレ!!」


「あー……まあ、言わんとすることは分かるよ。そうだよね……確実にアレ、向いちゃってるよね?」


 恋の矢印である。


「演劇とかで良く見る設定みたいじゃないか、こんなの!! なんだ、これは!! 私は夢でも見ているのか!! 兄妹同然に育った幼馴染? はーん!? 何を言っている!! そんなもの、ある訳無いじゃないか!!」


「……一概にそうとは言えないけど……」


 まあ、そういうパターンの幼馴染もあるにはあるのだろう。あるにはあるのだろうが、ルディの見る限り、あそこにいるクラウスの幼馴染は確実に『兄』に向ける以上の視線をクラウスに向けているのは間違いない。初対面――では無いも、エカテリーナとは本当に面識がある程度のお付き合い、そんなルディから見てもバレバレのその態度に。


「……あんな、アインツ? あんまりうがった見方すんなよ? 俺とエカテリーナは領地も隣同士だし、同じ伯爵だしで小さい時から交流があったってだけだよ。そんな目で見たら、エカテリーナに失礼だろうが。俺らはホント、兄妹同然……っていうか、殆ど兄妹なの。あいつの弟とも仲良しだしな、俺」


「……コイツ……演劇の主人公でももうちょっと鋭いぞ!! なんだ!? ヒロインの好意に気付かないなんて、鈍感系主人公か!!」


 ガラパゴス化したラージナル文化に染まり切ったアインツからしても、まるで演劇の舞台上の設定みたいなクラウスとエカテリーナの関係性。そんな、アインツからして見たら『リア充、爆発しろ!!』状態のクラウスは、きょとんとした顔を見せて。



「ヒロインからの好意って……エカテリーナが俺に? ははは! 面白い事言うな、アインツ。そんなもんはねーよ。あはは!」



「「――うわぁ、殴りたい、その笑顔」」



 ルディとアインツの感想がハモった。主人公より主人公しているのだ、クラウスは。



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