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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百四十七話 別に、面白くないとは言ってないですけど!


「……」


「……」


「……」


「……その……クリス? ちょっとは機嫌を……そ、その……」


「……ええ、ええ。別に良いんですよ。私は今回、おまけみたいなものですし? 別に良いんですけど」


 そう言ってチラリと視線を――劇場から引き摺った興奮のまま、エドガーにイイ顔で『面白かったです!! 凄く面白かったです!!』と語りかけるクレアと、そんなクレアに『うんうん。面白かったね』と頷きながら、愛おしそうにクレアを見つめるエドガーに向ける。


「……クレアちゃんは想定内ですが……まさかお兄様も面白かったなんて……お兄様、ああいう演劇は好みじゃない筈なのに……小さいころから小難しいお芝居とか見てたはずなんですが……」


 理解の及ばないモノを見る目でエドガーを見やるクリスティーナ。元々、エドガーもルディ・チルドレンの一人であり、その影響、具体的には『大人びた』ルディに一番憧れていた彼は、早々にこの『ラージナル文化』から卒業した一人である。


「あー……そりゃ、そうでしょ?」


「ルディ?」


「だってクレア、プリティ・リズのシリーズ好きなんだよ?」


「ええ。それは分かります」


「エドガーはクレアのことが好きなんでしょ? じゃあエドガーの性格上、一緒に楽しもうと思って真剣に見るんじゃないかな?」


 相手の趣味に合わせる、というのは男女交際の基本っちゃ基本である。なんでもかんでも合わせれば良いとは当然言わないが、それでも相手の好きなものを『俺、それあんまり好きじゃねーし』なんて言ってる人間が良好な人間関係を築ける道理は無いのである。そういう意味ではルディの言っている言葉はド正論なのであるが。


「……なに、その目は?」


「いえ…………なんというか……ルディからそんな感想が出てくるとは、と思いまして」


「……なんだと思ってるの、僕の事?」


 呆れた様な視線を向けてくるルディに、クリスティーナは心の中で叫ぶ。『そら、朴念仁に決まってるでしょうに!!』と。


「コホン。それはまあ、良いです」


「いや、僕はあんまりよくない――」


「良いです! ともかく……まあ、正直面白かったですよ? 脚本も良かったですし、『薄い、平たい、エリカ様!』こと王姉エリカの登場シーンの音楽も良かったです。俳優の演技もレベルが高かったですし……非常に面白い作品だったと言えるでしょう」


「演劇評論家かなんかなの、クリス?」


「そういう訳ではありませんが……ああ、あの下っ端ノエルの女優が居たでしょ?」


「下っ端ノエルって……ああ、語尾が『ゲス』の? なんかすごく残念な感じの……絶妙に小物臭のするあのキャラ?」


「はい。ノエル役の女優さん、新人さんらしいですね? 今度、スモロアの方でも演じて貰いましょうか。ウチならもうちょっと……いい配役を上げられると思いますし」


「……なんだかんだで楽しんでない、クリス?」


「まあ、良いものは良いですからね。鑑賞に耐える、素晴らしい劇だったと賞賛も惜しまないつもりではありますよ?」


 散々ぶーたれていたクリスティーナであるが、決して『ラージナル文化』の演劇作品が嫌いな訳ではない。ルディ・ファンクラブの創作活動で作られた作品群に感銘を受け、自身でスモロア支部まで立ち上げる猛者なのである。ラージナル文化への親和性は高い方でもあるし、劇場に身に来ようとは思わなかったとしても、本屋で小説版があれば手に取ってみる程度には興味もあるのである。幼いころは好きだったし。


「……そりゃよかった。よかったけど……んじゃ、なんでそんなに不満そうなの?」


「劇自体には不満はありませんよ。そりゃ、『メテオ・インパクト』という攻撃魔法が、持っていた丸太を思いっきり振り回して相手の頭にクリティカルヒットを与える、なんて物理攻撃なのはどうかと思ったり、最後のセリフが『そうね……サイズじゃなく、形、なのね……』って王姉エリカが胸を抑えて言うのはどうなんだろうとか、思う所は色々ありますが」


「……魔法少女感は無かったよね、プリティ・リズ」


「むしろこのシリーズ、当初から物理攻撃満載のバトルコメディでしょう? 魔法少女に無理がありません?」


「……まあ」


「ともかく! そんな事はどーでも良いんです! 劇自体は面白かったです。それは認めます! でも、男女のデートで見る演劇としてはどうなんですかね!」


「……それも、まあ」


「百歩譲って! 百歩譲ってですよ!! お兄様とクレアちゃんの例もありますし、物凄い科学変化が起こればこれはこれでアリだというのも分かります。分かりますが!!」


 そう言ってギロリと視線をディアに向けて。




「――なんで貴方はあの演劇でそんなに号泣出来るですか、クララ!! あの作品、泣くところありましたか!?」




 先ほどとは違う意味でふぐふぐと鳴き声を上げるディアに、クリスティーナがキレた。見ろよ、ルディの顔。『え……あの演劇でなんで大号泣?』って完全に理解が出来ない顔になっているじゃないか。デートだぞ、これ。





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