表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/294

第百三十一話 クラウスの思い


「…………は?」


 クラウスの言葉に本日二度目の鳩鉄砲顔を浮かべるエルマー。が、それも一瞬、捲し立てる様に口角に泡を飛ばす。


「な、何を言っている!! クラウス、お前は近衛騎士になるために努力をしていたのではないのか!? あの、クレイジーとしか言えない鍛錬は、その為にしていたのではないのか!? なんだ!? お前、もしかして被虐趣味でもあるのか!?」


「あー……まあ、近衛騎士……というより、軍人やアスリートみたいな『体がなんぼ』の職業なんて、ある程度ドMじゃねーと出来ねー職業ではあるかもしんねーけど……そういう意味じゃなくて」


 苦笑を浮かべながら、クラウスは少しだけ照れくさそうに頬を掻く。



「その……なんだ? 俺、この国が結構好きなんだよな」



「……それは俺もだ」


「なにがあったからってワケじゃねーよ? ワケじゃねーけど……ルディが居て、エディが居て、アインツが居て……クラウディアもそうだし、お前もだ。家族もそうだしな。そういう……何て言うのかな? そいつら、守ってやりてーなって」


「……」


「まあ、これは俺の家が軍人の家系だからってのもあるんだろうけどよ? 国防意識っつうか……そういうのが人一倍強いのかもしれねーけどよ?」


「……なるほど、そういう事か」


 クラウスの言葉に、エルマーは納得した様に頷く。そんなエルマーに、クラウスが笑いかけた。


「分かるか?」


「要は、お前が『近衛騎士』になるためにしてきた努力というのは目的ではなく、手段だという話だろう?」


「ああ、そんな感じ。国を守りたいから近衛騎士になりたかっただけで、別に国を守れるんなら近衛騎士である必要はない、って感じかな?」


 そう言って笑みを強くして。


「近衛騎士って言うのは国王陛下や王族に侍る存在だろ? だからなんつうか……守れる『量』って言ったらいいのか? 守れる量は少ないだろう?」


「その通りだな」


 近くで衛るから『近衛』なのだ。王のそばにいない近衛など、もはや近衛でもなんでもない。


「名前こそ第二近衛みたいになっているけど、別にルディかエディの側に居る必要も無さそうだろう? 新兵器の開発をして、運用するなんて」


「そうだな。確かにお前の言う通り、ルディやエディの側に居る必要はない」


「それに……やっぱりあるんだよな。近衛騎士は騎士っつうくらいだからやっぱ、剣を持って戦う事になるだろう? でもな~。やっぱ剣一本じゃ守れる量にも限界があるし。その点、お前の作った……」


「蒸気機関か? 俺が単独で作ったわけじゃないが」


「その辺はどっちでも良いよ。お前にとっては重要かもしれねーけど、俺にはあんまり関係ないからな。ともかく、その蒸気機関ってのを……そうだな、馬車かなんかにくっつけて走れば、とんでもなく速いスピードで、とんでもなく沢山の人間を乗せて、とんでもなく遠くまで行ける様になるんだろう?」


「理論上はそうだな」


「それ、ものすげーぞ? 戦場の常識が一発でひっくり返るぞ?」


「……そんなものなのか?」


 いまいちピンと来ていないエルマーに、クラウスは大真面目で頷いて見せる。


「ああ。数は力だからな。幾ら個人の武勇が凄かったとしても……一人の英雄よりも、一万人の凡夫の方が強いのが戦場ってもんだ。幾ら強い人間でも、運が悪けりゃ簡単に死んじまうしな。分かるか? 駿馬は一人の英雄を戦場に送るだろうが、蒸気機関は万の凡夫を戦場に送ることが出来るんだ」


 クラウスの言葉に、エルマーが少しだけイヤそうな顔を浮かべる。


「……万もいる凡夫なら、一人や二人減っても問題ない、か?」


「そうは言ってねーけど……」


 エルマーの言葉に苦笑を浮かべ、その後真面目な表情を浮かべて見せた。


「……ただまあ、お前に嫌われる事も承知で言うけどよ? 軍人の、それも上の方となるとある程度『数字』で見る必要もある。戦死の数が、相手より少なければ勝ちな所もあるしな、戦争って」


 まあ、戦闘目標にもよるけどよ、と補足を入れて。


「……だからこそ、お前の考えた『飛行機』は凄い。そんなの、軍事の常識がひっくり返るどころの話じゃねーよ。それはもう」


 ――『革命』だ、と。


「……革命、ね」


「んだよ? 不満か?」


「貴族など体制側の人間だろう? そんな貴族令息である俺が革命家とは皮肉な話だな、とな」


「なに言ってんだよ。これは『イイ』革命だ。なんせ、空だぞ、空? どんな武器だって、空飛んでるもんに攻撃なんて出来ねーんだぞ? 偵察だって攻撃だってやりたい放題だ。それはつまり、仲間の、ラージナルの民を守る事が出来るって事だぞ?」


「……そういう考え方もあるか」


「そう! だからな、エルマー?」



 お前は、イイ革命家で、最高の発明家だな! と無邪気に笑うクラフトの言葉にエルマーも笑顔を返して。




 ――彼らはまだ知らないのだ。この『飛行機』という『兵器』が、果たして戦場にどの様な革命を齎し、そしてその結果がどういう事になるのかを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ