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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百二十九話 まあ、そういう事もあるってもんよ


 エルマーの『お前、俺の相方だから!』発言にきょとんとするクラウス。そんなクラウスに、慌てた様子を見せたのはエルマーだった。


「な、なに!? まさかお前、まだ聞いてないのか!?」


「聞いてないって……なにを?」


 きょとん顔のまま、首を捻るクラウス。そんなクラウスの行動に、エルマーは顔を青褪めさせる。ヤバい、しくじったか、と。


「……な、なんでもない」


「なんでもねーわきゃねーだろうがよ。なんだ? 内緒話か?」


 内緒話、という訳ではない。実際、エルマーは聞いているんだし、これが秘密のオハナシという訳では無いのだろう。無いのだろうが。


「……俺の口から言って良いのかどうか、わからない。近衛騎士団の方の職制の話かもしれんし……」


 エルマーの言葉にクラウスは『ああ』と一つ頷いて見せる。


「第二近衛騎士団……って言って良いのか? アレの話か?」


「……知っているじゃないか。そうだ」


「ああ、ああ、そっか! その話は聞いているぜ! なんだエルマー、『技術院から優秀の技術者も派遣される』って聞いてたけど……それがお前なのか!! それは知らなかったな!! ったく、父上も……なんで大事な事伝え忘れるかな~」


 きょとん顔を一転、破顔大笑するクラウスにほっと息を吐くエルマー。


「……そうだ。良かったよ、お前が異動に関して聞いていないのかと思った」


「良かった? なにが?」


「『お前、異動らしいぞ?』というのを直属の上司よりも先に言うのは、なんだか気が引けるからな。お前だって嫌だろう? 俺の口から自身の所属について聞くのは」


「……」


「……なんだ?」


 エルマーの言葉に、ぽかんとした表情を浮かべるクラウス。そんなクラウスにいぶかし気な表情を浮かべていると、クラウスの口からポツリと。




「……そんな気遣いが出来るのに、なんでボッチなんだろうな、お前」




「ぶっ飛ばすぞ、クソクラウス」


 無論、近衛騎士団で鍛錬を積んだクラウスと、もやしボーイのエルマーでは勝負にならない。だが、男には負けると分かっていても戦わないといけない時があるのだ。まあ、絶対に此処では無いが。


「うお! わ、悪いエルマー! お、怒るなよ! 冗談だ! 冗談だって!!」


 流石に自分でも失礼と思ったのか、クラウスが平謝りに謝る。そんなクラウスの姿に、エルマーは少しだけ溜飲を下げる。良かった。主に、エルマーの平和のために。


「……まあいい。それより、なんだ? お前は俺が技術院からの出向と聞いてなかったのか? ああ、いや。お前、団長になるんだよな? ないのか? 人事権などは」


 訝し気なエルマーの視線に、クラウスは苦笑を浮かべてひらひらと手を振って見せる。


「ある訳ねーだろ、んなもん。俺、まだ学生の身分だぜ? 第二とか言っているが、近衛騎士団から別に独立した組織になるわけじゃねーんだろうしな」


「……まあ、そうだろうな」


「父上が近衛騎士団を率いるんだし、俺なんか精々……そうだな、分隊長って所だろう。それでもまあ、破格の出世だろうけど……」


 そう言ってはぁ、とため息を吐く。そんなクラウスの姿に、少しだけの同情を込めてエルマーは眉根を寄せる。


「……左遷、みたいなものだものな」


「左遷、は言い過ぎだろう? だが……まあ、俺だって一応貴族の息子だからな。家のお家騒動に、近衛や国家を巻き添えにしちゃいけねーとは思っているよ」


「……そうか」


「まあ、ルディとエディの幼馴染であり、近衛騎士団長の息子である俺を……そうだな。辺境軍辺りに出す訳にも行かねーってのは……まあ、分かるけどよ?」


 現状、クラウスを近衛騎士団に置いておくと、未来のお家騒動に、ひいては近衛を二分する可能性が……まあ、零ではないが、ある。そんな状態のクラウスを近衛に置いておくのは、得策ではないが、かといってあまり近衛――というより王都から離してしまうのも問題ではある。何のための御学友か、というのもあるし。


「帝国とはいまんとこ平和だけど、いつ戦端が開かれるかわかんねーもんな。さっさと俺が戦死すれば問題ねーけど、捕虜とかなったら最悪だろ? どんな材料に使われるか分かったもんじゃねーし」


 御学友という立場も、近衛騎士団長の息子という立場も、然程重いものではない。重いものではないがしかし、全く『利用価値』が無いかと言えばそうでもないのだ。中華思想では無いが、王権とは『徳』で成り立つものであり、『得』だけで成り立つものでは無いからだ。『国王陛下が、国家の不利益を被ってでも親友を助けた』というお涙頂戴の物語の方が、『国の利益の為に親友を見殺しにした』よりも余程民衆の支持を得るものである。


「……その……なんだ。クラウス、お前の境遇に……同情する」


 なんと言えば良いか言葉に詰まり、それでもなんとかそれだけを口にする。そんなエルマーに、さして気にして無さそうにクラウスは大口を開けて笑った。


「んな気にすんな。俺だって兄上の方が優秀だと思うし、これが一番いい方法だろうしな? それに……聞いたぞ、エルマー。お前、空を飛べる『兵器』を作ったらしいじゃねーか!」


 瞳をキラキラと輝かして。




「――俺、一片くらいは鳥みたいに空を飛んでみたいと思ってたからな!! いいじゃねーか、『飛行機』!! 頑張って開発しようぜ、エルマー!! 実験台には俺がなってやるから!!」





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