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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百二十八話 あれ? 話、通ってない?


 何時でもセット、と思われがちだが実際問題はそうではない。まあ確かに幼馴染で年も一緒、学園のクラスまで一緒の近衛騎士団長の息子と宰相の息子という、この国の両輪の子弟である以上、ある程度以上の仲の良さではあるが……まあ、お互い独立した一個の人間なのだ。当然、いつも一緒の訳はない。


「――お疲れ様っしたー!」


 近衛騎士団修練場。基本的には近衛騎士しか入れないこの場所において、クラウス・ルートビッヒの存在は一種異質に映るかも知れないが、実態はさに非ず。五歳の頃から父親について修練場に出入りしていたクラウスは、新人の騎士よりもこの場に馴染んでおり、また本人の資質からもそれを認められる立派な『人材』なのだ。


「お疲れ様、クラウス。今日もいい太刀筋だったな」


「あーざっす! 先輩、明日も稽古、よろしくお願いします!!」


 先輩騎士の言葉ににっこりと笑顔を返し、クラウスは修練場を後にする。前述の通り、五歳の頃から通った近衛修練場だ。我が庭、は言い過ぎにしても祖父母の家程度の馴染みはあるのである。タオルで汗を拭きながら、修練場から学園の寮までの道を歩いていると、見慣れる程は見ていないも、それでも見知った背中が見えた事に気付いて、クラウスは声を上げた。


「おーい! エルマー!!」


 出て来た方向からして、技術院の方角か。そう当たりを付けながら、クラウスはエルマーの元に小走りに駆け寄る。声と、足音にエルマーが振り返った事に気付き、クラウスは笑顔を浮かべて。


「エルマー! 久しぶりだな!! 元気に――お前、なんか嫌そうな顔してね?」


 浮かべた笑顔を怪訝なモノに変える。クラウスの言葉通り、エルマーの顔に浮かんでいたのは『うへぇ』という顔だったからだ。


「……んだよ? お前、俺と会うのそんなに嫌なのかよ?」


 クラウスのその言葉にエルマーはため息一つ。



「イヤに決まってるだろう」



「だろう? それじゃ、そんな顔――へ? い、イヤ? いや、お前さ? 普通はマジで嫌でも『イヤ』とか言わねーだろうが!!」


『そんな事はない』という言葉が返ってくると思っていたクラウスは、エルマーのその言葉に思わず声を荒げる。そんなクラウスの姿に、再びイヤそうな顔を浮かべてエルマーはため息を吐く。


「俺を普通の尺度で測るな。そもそも……お前こそ、俺に好かれていると思っているのか?」


「……まあ、そんなに性格は合うとは思ってねーけどよ? それでも俺ら、幼馴染だろう? なんだ? お前、そんなに俺の事が嫌いかよ?」


「ただ幼くして馴染んだだけで性格が合うとは限らんだろう。それに、別に嫌いとは言ってないだろう。好いてはいないし、気が合う訳でもない。会うのはイヤだし、出来れば顔も合わせたくないだけだ」


「……それを端的に『嫌い』っていうんじゃねーの?」


 その通りである。そんなクラウスの言葉に、『心外だ』と言わんばかりの顔でエルマーは首を左右に振って見せる。


「そんな事はない。大丈夫だ、台所に出る黒い虫よりは……まあ、マシだと思う。少なくとも、生理的に無理ではないからな」


「……そのレベルなのか、俺」


「ちなみに出会うとなると、お前の方が厄介だがな。『あれ』は生理的に不愉快だが、お前は実害が出る。忘れんぞ? お前に王城三十周させられた事は」


「少しはフォローしろよ!!」


 クラウスの絶叫に、エルマーは肩を竦めて見せる。その姿をみて肩を落とすクラウスに、エルマーは口を開いた。


「……まあ、そうも言ってられないがな」


「へ?」


 エルマーの急な方針転換に、クラウスがきょとんとした顔を浮かべる。そんなクラウスに、エルマーは小さくため息を一つ。


「……間抜けな顔をするな、クラウス。これからは俺とお前、コンビを組んで行かないといけないだろう? 別に、円滑な人間関係が全てとは言わん。言わんが……技術院とは違うからな。ある程度、円滑な人間関係を築く必要はあるだろう。俺もなるだけ努力をするが……お前も少しは努力をしろ。少なくとも、俺に外周やら鍛錬やらの任務を課すのは絶対に止めろ。いいか? これは振りじゃないぞ? そんな事をしたらお前、俺は二度と王城に出仕しないからな? 登城拒否を決め込んで、一生ニートとして生きる。ああ、働けずに生きていけると思っているのか? ふふん! 俺には技術院に納めた技術のアイデア料がある。しかも永続的に、ちゃりんちゃりんと入ってくる権利だ。所謂不労所得というやつだな。だから、俺はこれから一生働かなくても食っていけるんだ。そもそも、一応、俺は貴族の長男だからな? 父上から爵位を継げば、領地経営だけで生きていける……うん? その方が俺は幸せになれるんじゃないか? 別に発明とか開発は領地でも出来るし……そう考えると技術院に出仕する必要性も皆無だし、そうなれば第二――」


「ストップ、エルマー」


 オタク特有、自分の得意分野――というより、今回は喋りたいことを一息で喋り続けていたエルマーの言葉をカットするクラウス。そんな行動に別段気にした風もなく、『どうした?』と言わんばかりに言葉を促すエルマーに、クラウスは少しだけ困った顔を浮かべて。




「――……ええっと……俺とお前がコンビって……なんの話?」





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