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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第百十九話 ルートビッヒ家の家督相続


「……政治?」


 フィリップの言葉に、エルマーは首を捻って見せる。いみじくも先程、『我が家は技術肌だから! 政治とか無理だから!!』と言ったのはフィリップその人である。そんなエルマーの仕草にふんっと鼻を鳴らして、フィリップは言葉を継いだ。


「クラウスの立場が少しだけ、微妙だ。お前だってわかるだろう?」


 フィリップの言葉に、エルマーは首を振って見せる。



「……え? クラウスの立場、微妙なんですか? やっぱり脳筋過ぎてですか?」



 左右に。そんなエルマーに、フィリップは小さく息を吐く。


「馬鹿者。そんな訳があるか。近衛に――まあ、ある程度の教養は必要だが、少なくともクラウスはその程度の教養なら十分にある」


 むしろ……教養云々はともかく、貴族としての『素養』に関してはエルマーの方が圧倒的に劣る。技術院総裁の嫡男で、自身も一角の技術者であるからエルマーは許されて――まあ、黙認されているだけで、常識的に考えて社交界にも参加しないコミュ障のエルマーは貴族としては落第点だ。


「はぁ……では、なぜ? クラウスに教養があるのであれば、別に問題は無いのではないですか? 剣の腕もダニエル殿に迫るほどの腕前ですし、何にも問題は――」



「次男だからな、クラウスは」



「……あ」


「クラウスの上に居るだろう? お前の二つ上だったか? アドルフが」


 フィリップの言葉にエルマーは首肯で応える。確かに、いるのだ。クラウスの三つ上、既に学園を卒業し、近衛騎士団に見習い騎士として入団したクラウスの兄、アドルフが。


「……それが問題、と?」


「ラージナル王国の家督は長子相続が基本だ。婿入りであるとか、明らかに下の弟が優秀だというならば別だが……アドルフとて、無能な訳ではない」


 もう一度、首肯で応えるエルマー。正直、クラウス以上にアドルフの事は良く知らないし、そもそも貴族界隈の行事には徹底的に不参加を貫き通しているエルマーだ。貴族界隈の噂には無頓着であるが、だからこそ。


「……まあ、私の耳に入ってくるほどの悪評はない、という事でしょうか?」


 そんなエルマーの耳に入るほどの『ヤバい』奴ではないという事であり、逆に言えば、そこまで大きな『バッテン』が無い以上、アドルフの家督相続は既定路線であるのだ。


「そうだ。というより、クラウスが優秀なだけでアドルフだって負けてはいない。ダニエルから五本に一本は取れるし、クラウスよりも物腰も柔らかだ。加えて、頭も良い。学園の成績は常に上位五位以内だったらしいしな、アドルフ」


「……逆にクラウスの勝てる所、なくないですか? それなら順当にアドルフ……殿が家督を継いで終了では?」


 エルマーの言葉に、小さくため息を吐くフィリップ。


「次期国王陛下はエドワード殿下か、ルドルフ殿下のどちらかだ。長子相続ならばルドルフ殿下だが……お前も知っている通り、エドワード殿下は……」


「まあ、完全にエディの方が評価が上でしょうね」


「と、言いたい所だがな。知っているか? 入学式で……」


「……ああ」


 長子相続が基本のラージナル王国で、次子たるエディが王位継承第一候補になっていたのは偏にエディがルディよりも優れていたことと……まあ、『双子』であり、長幼の別が比較的薄い事で許された殆ど例外事例なのだ。にも関わらず、『入学式の公衆の面前で婚約破棄』という『大きなバッテン』だ。エディの王位継承は黄色信号が灯っている。


「まあ、エドワード殿下でもルドルフ殿下でもどちらでも構わん。構わんが……近衛は陛下の剣にして盾、だ。ダニエルと陛下も幼馴染であるし……まあ、その為の『御学友』でもあるしな」


 フィリップの言葉に首肯をして見せるエルマー。


「分かります。つまり、アドルフ殿がルートビッヒ家の家督を継ぎ、近衛騎士団長になるのは既定路線。だけど、アドルフ殿とエディ、ルディの仲はそこまで良好――というと語弊がありますが、少なくともクラウス程は仲良くはない。それでは少しばかり問題がある、という事ですね?」


 エルマーの言葉に、フィリップは首肯して見せる。


「『近衛騎士団』は少しばかり特殊な組織だからな。これが宰相ならば、仲の良さなど気にせず能力だけで選べば良いが……近衛は陛下の寝所も警護するからな。絶対に裏切らないという保証が無ければ務まるものではない。無論、幼馴染だからというだけで全てを信頼する訳ではないが……」


「それでも、何処の馬の骨とも分からん人間よりは良い、と」


「仮にもルートビッヒ家の嫡男だ。身元はしっかりしているが……それでも、人間同士で合う、合わないはどうしてもあるからな」


 エディとディアの様に、とはフィリップも直截的には言わないが、心の中でそう呟くフィリップ。そんなフィリップに、エルマーは小さく頷いて――そして、首を捻る。


「ルートビッヒ家のお家の事情は理解しました。それで? なぜそれがこの『近衛の別働部隊』という話になり、私の研究に繋がるのでしょうか?」


 エルマーのその疑問に、フィリップはため息交じりに口を開いて。



「此処まで喋れば大体分かるだろう? その近衛の別働部隊――まあ、第二近衛騎士団とでも言おうか? その第二の騎士団長にはクラウス・ルートビッヒが就任することが内定しているからだ」




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