秋の雑木林を家族みんなで歩こう
さて、秋も深まってきた。
川には鮭や鱒が遡上し始め、銛は茶色く色づいて、風も段々と冷たくなってくる。
俺は家族と一緒に、秋の雑木林に入り、双子の娘と手を繋いで歩いていた。
みんな服も麻のものからから鞣した革の服に着替えている。
俺は一緒に歩いている双子に聞いた。
「お前たち寒くないかー」
左右で手を繋いだ方から両方声が元気に帰ってきた。
「だいじょー」
「だいじょー」
うん、あいかわらず元気で何よりだ。
「そいつは良かった。
お母さんやお姉ちゃんにありがとうって言ったか?」
双子は首を傾げた。
どうやら言ってないようだな。
「言ってないなら今言ってあげるんだな」
双子はコクリと頷いて、後ろを歩いているイアンパヌや上の姉に頭を下げて言った。
「かーしゃ、ねーしゃ、あいがとー」
「かーしゃ、ねーしゃ、あいがとー」
イアンパヌがニコニコしながら言った。
「うん、よく出来ました」
上の娘もニコニコしてる。
「へへ、私も頑張って縫ったからね」
なんだかんだで子供は成長が早い、一年経ったら去年作った服は小さくなって着ることができなくなったりする。
なので、この時代は衣服は全て手作りだから母親は大変だったりするんだな。
今年は上の娘も服の縫い方を本格的に習ったので、だいぶ楽になったとは思うけど。
勿論家族で森に来たのは遊びに来たわけではない。
俺や息子は柴を載せる背負子を背負ってるし、イアンパヌや上の娘は木の実やきのこを入れられる籠を手にしている。
「ほれ、お前たち、これと同じもんを拾ってくれ」
俺は双子にどんぐりを見せていった。
「ひろうー」
「ひろうー」
双子はしゃがんでどんぐりを探し始めた。
「あたー」
「あたー」
ほぼ同時にどんぐりを見つけてそれをかざしてみせた。
「おお、見つけたか、偉いぞ」
「えらいー?」
「えらいー?」
双子は目をキラキラさせて俺を見上げている。
「おう偉いぞよくやった」
俺は双子の頭をワシワシとなでてやった。
「やたー」
「やたー」
バンザイして喜んでる双子。
去年はまだ小さくて家にこもりきりだったからな。
今年はいろいろなものが見れて本当に楽しそうだ。
俺は双子の小さなカゴを渡した。
「拾ったらこれに入れておいてくれな」
双子は俺の手を離してそれぞれカゴを受け取って、一生懸命どんぐりを拾い始めた。
どんぐり拾いは勿論秋に行う大切な仕事なのだが、双子たちはキョロキョロとあちこちをどんぐりを夢中になって探しては
「あたー」
と見つけたどんぐりにとたとた駆け寄って嬉しそうに拾っている。
「お前ら転ばないように気をつけろよ」
と俺が言っても聞こえてるかどうか怪しい。
そんなことを考えていたら木の根っこに脚をひっかけて片方がすっ転んだ。
「あうっ」
カゴも手から落ちてせっかく拾ったどんぐりがこぼれてしまった。
「うううう、あーん、あーん、あーん」
俺は駆け寄って抱き起こした。
「大丈夫か?血とか出てないか?」
幸い怪我はないようだ。
しかし、拾ったどんぐりを落としてちこぼしたのがよほど悲しいらしい
「あーんあーん、あーん」
駄目だな、泣き止んでくれない。
「だいじょー」
双子のもう一人が落ちたカゴを置き直して、そこにどんぐりを拾って入れていく。
「うぐう……だいじょ……」
泣いていた方もエグエグ言いながら、一緒に散らばったどんぐりを拾っていた。
「だいじょー」
「うん、だいじょ」
二人で拾い集め直すと小さなカゴいっぱいにどんぐりが集まった。
「助かったぜ、よくやったなお前ら」
「よくやったー」
「よくやったー」
泣いた子供がもう笑った、二人してぴょんぴょん飛び跳ねている。
やがて俺と息子の柴刈も済、イアンパヌや上の娘はキノコや栗なども拾って十分な量を集めていた。
双子はイアンパヌにカゴを差し出した
「かーしゃ、ごぐりー、はい」
「かーしゃ、ごぐりー、はい」
イアンパヌはカゴを受け取って自分のかごに入れた後に俺に言う。
「じゃあ、そろそろ帰りましょう」
俺は頷く。
「そうだな、帰るとするか」
帰りは双子が手を繋いで、その横に上の娘とイアンパヌがそれぞて双子の空いている方の手を繋いで帰っていく。
「ずーっとまっすぐ」
「ずーっとまっすぐ」
双子がそう言いながらてこてこ歩いている。
どんぐりのアク抜き何かの仕方は上の娘が教えてくれるだろうか。
こうやって家族みんなで一緒に暮らせる、一緒に行動できるのは良いことだな。




