縄文時代は歯が生え変わったら、子供の仲間入りだ
さて、上の娘や息子の歯が乳歯から永久歯に生え変わると、彼らは村の周りの人間からも幼児ではなく子供へと認識が変わる。
幼児はあくまでも養われ保護される対象だが、子供になれば大人への準備期間になり、大人に混じって衣食住の確保の手伝いを本格的に行うようになる。
とは言えこれ20世紀くらいまでは、日本では普通のことだったんだがな。
まあ、子供になったと言っても、家族ではやることは今までと対して変わらないが、みんなで集まって色々教わるようになるのが違うところだ。
上の娘はウパシチリの所でほかの子どもたちと一緒に、ウパシチリからいろいろなことを習っている。
床に置かれたいろいろな木の実をウパシチリは指し示していった。
「では食べられる木の実はどれですか?」
女の子が木の実をつまみ上げる。
「はい、これです」
ウパシチリは笑顔で頷く。
「はい正解です」
次はいくつかの野草と毒草を指し示して言う。
「では毒のある草はどれですか?」
女の子が草を手に取っていった。
「はいこれです」
ウパシチリは笑顔で頷く。
「はい正解です」
次はきのこを並べて言う。
「では食べられるきのこはどれですか」
女の子は自信なさげに一つのきのこをつまみ上げた
「うーん、これかな?」
ウパシチリは真剣な顔で言った。
「違います、これは毒キノコですので間違えないでください」
女の子達は頷いた。
「はーい、気をつけます」
今では男は狩猟、女は採取と言うのはガチガチに別れてやっている訳ではないが、やはり基本的にはそういう方向で分けられている。
なので女は植物や貝などの、採取食料に対しての正確な知識をみんなで学ぶんだ。
毒のあるものを食べ物として食ってしまうと致命的だからな。
また、そのままでは食べられないものをどうすれば食べられるようになるのか、どうすれば長く保存できるのかなども学ぶ。
無論、家によってはこれより小さいときに母親から習ったことも多いだろうけど、みんなの知識がおなじになるようにちゃんと教えるのも長老の勤めだ。
その他にも麻糸の作り方、縄の結い方、布の編み方、毛皮の鞣し方、裁縫の仕方なども教わる、縄や衣服をつくるのは主に女の役目だ。
一方息子は弓矢の訓練を本格的に始めた。
「よし射ってみろ」
何人かの男の子たちが並んで弓を手にしている。
「はい」
息子は同じような年の男の子たちと一緒に、離れた場所の丸めた草の的に弓矢を向けて弓を引き絞る。
「えい!」
みんなと一緒に正式に弓を習い始めてまだそんなに日は経っていないが、息子には小弓を与えて遊ばせていたおかげでなかなかの腕だ。
「うむ、なかなか筋が良いな」
息子は礼儀正しく頭を下げた。
「ありがとうございます」
釣りや漁、狩猟に使う道具の作り方、焼き畑の焼き方なども改めて男子がまとまって習う。
縄文時代は基本的には狩猟採集に焼き畑をくわえた社会だ。
勿論シャオとシャンのように一年を通じて漁をメインにしてる物も居ないわけではないがな
一方乳児も歯が生えてくれば段々と乳離の準備を始めることになる。
今でいう離乳食のようなものを作り始めるわけだな。
まあ21世紀現代では離乳食は生後半年位から始まるが、2歳から3歳ぐらいまでは免疫獲得のためにも本当は母乳のほうがいいらしいけどな。
俺はクリやドングリ、ヤマイモなどをすりつぶし、よく煮て重湯のようなものをつくっていた。
そしてよく吹き冷ましてから双子に食わせようとしている。
「ほれ、お前さん達、これを飲んでくれ」
石匙をくわえた娘は微妙な表情だ。
「んー、変な味ー」
もう一人にも石匙をくわえさせる。
「変な味ー」
俺は苦笑して二人に聞く。
「変かー」
双子は揃って頷いた。
「変ー」
「変ー」
俺は双子の頭をなでつつ言う。
「んーわかった、でもそのうちこういうのが、お前さんたちが食べるものになるんだぞ」
双子は首を傾げた。
「食べるー?」
「食べるー?」
「食べるの意味がわからんか。
まあそのうち分かるようになるさ」
双子は嬉しそうに笑いながらいった。
「わかるー」
「わかるー」
まあ、現代の離乳食ほど味は良くないだろうし母乳に比べて甘くもないだろうから変には思うかもな。
もう少し大きくなったら肉を親が口で噛んで、やわらかくした肉とかも食うことになるだろうな。
そうやって皆少しずつ大きくなっていくのさ。




