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鮭は日本人が大好きな魚、塩漬けで長く保存できるようにしようか

 この時代の秋口の多摩川には、産卵のためにたくさんの鮭が遡上してくる。


 現代では関東地方では見られない鮭の遡上だが、そうなってしまったのは乱獲などによるものだ


 戦国時代では東海地方でも鮭は取れていたらしいし、縄文時代の今なら和歌山くらいまでは遡上するらしい。


 瀬戸内海には流石にいないようだが。


 この時代で鮭を取るために使うのは<えり>と呼ばれる、川に杭を打つことで、魚を誘導する仕掛けなどが主だがその他の方法もある。


 その一つがやなと呼ばれるもので、松杭を川瀬に打ち込むことで足場を組み、木や竹ですのこ状の台を作った梁を設置し、本来は上流から泳いできた魚がかかるのを待つ漁法でアイヌ語ではウライと呼ばれるものだ。


 通常はすのこは上流側が下に傾いて設置され、上流側では水中にあり、川下側では水上にある。


 川の水はすのこを通って流れるが、上流から泳いできた魚はすのこの上に打ち上げられるわけさ。


 そういうわけで梁は鮎などを捕まえるのにむいているし、観光のものを知ってる人もいるかもしれないが、鮭の場合は下流から上ってくるので、すのこは下流側を水につけ、上流側を水上に出す。


 どっちにしても魚が、すのこの上に揚がってきたところを捕まえるわけだ。


 この際すのこの間の幅を大きめに取ることで、他の小さな魚などはそのまま素通りできるようにしておく。


 縄文人は小さな稚魚なども根こそぎ取らないように、釣り針はでかく、網の目もでかくすることで、小魚を取ってしまわないようにしている。


 実際にはこの時代には、この方法はまだ知られていないのだが、えりよりも、梁のほうが鮭を捕まえるのは楽だからな。


 産卵期の鮭は警官心が強いのでヤスや銛で突いたり、タモですくったりするのも大変だからそうするわけだ。


「よーし大漁大漁」


 川を埋め尽くすような勢いで海から上がってくる鮭が、次々に梁の上に乗っかってくるから、其れを手袋をした手で直接つかむ。


「おっとっとっ、あばれるなよ」


 ちなみに鮭の刺身は美味しいが、鮭にはサナダムシや、アニサキスが寄生していることが多いので、この時代では生食は非常に危なく、生で食べるようなことはしない。


 まあこれは海の魚や烏賊などの海産物全体に言えることだがな。


 現代の鮭は冷凍処理を行うことで死滅するので、刺し身でも食べられるんだが。


 捕まえた鮭を俺は川岸に投げる、其れをイアンパヌや上の子供達で〆て、エラや内蔵を取り除き、体表や体内を川の水で洗う。


 それから精製した塩を尾から頭に向かってすり込み、うろこの間や体内・眼の凹みにも厳重に塩を詰め、えら穴から口に紐を通し、吊して乾燥させる。


 まあ新巻鮭と同じだ。


 こうして冬の間の保存食として塩漬けの鮭も加われば、一層無事に春を迎えられる可能性も高まるわけだな。


 もちろん、新鮮な鮭を焼いて塩で味付けすればものすごく美味い。


「やっぱ秋の味覚は鮭だよな。

 木の実や芋、穀物なんかも、もちろんありがたいんだが」


「そうね、本当癖もないし美味しいわよね」


「そうですね、私も大好きです」


「おいしー」


「いつもすみませんね。

 ありがたくおすそ分けいただきますね」


 俺たち家族と下の子供達の面倒を見てくれてる女性みんなで焼いた鮭を食べているが、この時代は川も海もきれいだしやっぱ美味いぜ。


 鮭は煮ても美味いし焼いても美味い、カリカリに焼き上げた鮭の皮なんてマジでうまくて涙が出る。


 鮭がカムイからの贈り物だと言われても信じるよな。

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