この時代弓は大事な狩猟道具
夏には魚や貝などが多く取れるので、あまり狩猟は必要ではないが、冬に備えて弓を作っておいたりするのは重要だ。
そして、子供にも徐々に弓に関しての使い方や、作り方を教えるのが男親の役目だ
釣り竿もちゃんとしたやつは竹を乾燥させて作るが、弓も木や竹をちゃんと乾燥させないといけない。
このころの弓は長いあいだの経験から、弓にするに向いた木の種類は決まっており、ケヤキやヤマグワ、ミズメなどを主に使っている。
このあたりは靭性にすぐれているので、弦を引っ張っても簡単に折れないわけだ。
既にこの縄文時代には漆を塗って複数の素材を貼り合わせた複合弓も有ったが、丸木弓と併用され、鏃には主に黒曜石を使っている。
複合弓の竹と木を接着するには膠を用いた。
丸木弓でも、破損を防ぐ為にトウやシラカバの皮を巻いたが、複合弓は丸木弓よりも裂けやすく、湿度や温度の影響を受けやすいので、必ずしも優れてるとは限らないんだ。
「よし、今日は弓を作るための木を切りに行くぞ」
「あい、とーしゃん」
うちの息子には、まだ弓は早いかもしれないけどな。
まずは小さな弓を作って慣らしていくのだ。
弓の元になったのがスタッフスリングなのか、釣り竿なのかは分からないが、木や竹の棒の先に投石布をつけたものか、釣り糸をつけた竹がしなることをみた人間が、其れを応用して弓を作り出したんじゃないのかな?。
人類の道具の歴史として、石器そのものは約250万年前ぐらい前から、石斧として使われていたが、これは主に骨を叩き割って脳や骨髄などを食べるために使われたようだ。
人間が狩猟を行うために槍を発明したのが約40万年前。
では弓矢はいつごろ発明されたかというと、最も古い可能性としては7万年ほど前のアフリカで作られた可能性が高いらしい。
トバカタストロフの後の最終氷期開始後だな、草原で大きな動物を狩るのではなく、森林での狩猟をアフリカではトバカタストロフの後の寒冷期から行わなくてはいけない環境にあったようだ。
そして、いわゆる後期旧石器時代と言うのは、一般には3万年ほど前からで、アフリカの弓の技術を持った人間がアフリカを出て弓矢が広がったのはこの頃かららしい。
そして、このあたりから人間は動きの遅い大型哺乳類だけでなく、魚や甲殻類、亀のような爬虫類、鳥類やその卵も食べるようになったらしい。
おそらくマンモスのような大型哺乳類がだいぶ減ってしまい、それだけでは食っていけなくなったのだろう。
3万年前というのは、最後に人類がアフリカから出て世界に拡散していった時代で、石器や弓の技術は其れにより世界に拡散したらしいが、草原に住む大型の哺乳類を狩って生活していたネアンデルタール人や、クロマニヨン人などの先にアフリカを出た物は、まだ石の投げ槍とやり投げ器を使っていた。
彼等は肉体的には優れていたが、大型哺乳類を狩るという生活から、小型の獲物に変えることができずに滅んでしまったらしい。
オセアニアやオーストラリアには、動きが遅くて体の大きなウォンバットなどが居たせいもあって弓は使われず、中央アメリカでも弓の代わりに投げやりが長い間使われていた。
石槍のほうが作ったりするのは楽なので、必要がなければ発展しないのが技術というものらしい。
ユーラシアなどで弓が狩猟用具として、メインで使われるのは世界が暖かくなり、マンモスなどが絶滅した1万7千年ほど前からといわれている。
弓は道具としては優れているが、石器の鏃や弓そのものをを加工したりするのは大変だからな。
「よし、この木でいいかな」
俺はケヤキの木の前で木を眺める。
「これでしか?」
俺は息子に頷く。
「硬すぎず柔らかずぎない木っていうのは案外少いからな。
ちゃんと覚えるんだぞ」
「あい、とーしゃん」
俺は木の枝を石斧で切り落として持ち帰る。
「ま、しばらくはこれをちゃんと芯まで乾かさないといけない
家の中でしばらく乾かすぞ」
「あい、とーしゃん」
一月ほど陰干しして枝のしなり具合を確認する。
「うん、いい感じだ」
「僕も触りたいでし」
「おういいぞ」
俺は息子にケヤキの枝を手渡す。
「曲げても折れないでし、すごいでし」
「ああ、後は弓矢の弦となる糸を張る穴を開けてやれば完成だ」
俺は木に穴を開けた後、麻糸をぐぐっと引っ張って弓に弦を張る。
「指を切らないように気をつけろよ」
「あいでし、とーしゃん」
息子は小さい手で小さな弓を受け取った。
子供の練習用の小さな弓だが嬉しそうだな。
弦を指で弾くと音がするのも面白いらしい。
「頑張って弓の腕を磨いてくれよな」
そういう俺は実は弓はあんまり得意じゃなかったりする。
現代じゃ弓なんか引いたこともなかったからな。
「ありがとでし、ぼくがんばるよ」
俺は喜んでる息子の頭をぐしぐしとなでた。
実際に、狩りに出るようになるのはまだまだ先だと思うが、やる気があるのはいいことだ。




