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そろそろ釣り道具の作り方を教えようか

 息子もそれなりに大きくなってきたし、夏は釣りの季節だ。


 そろそろ、自分たちで釣りを出来る、釣りざおや釣り針などの作り方を、教えようか。


「よし、お前たち今までは、俺なんかが釣り竿や釣り針を作ってたが、そろそろ自分で作りたいだろう?」


 娘はウンウンと頷いた


「うん、お父さん、私も自分で作ってみたいよ」


 息子は不安げな表情だ。


「自分でつくりでしゅか?」


 俺は不安そうな息子の頭をなでてやる。


「ああ、まだお前は小さいからうまくできないかもしれないけど、遊びだと思って気楽にやればいいぞ」


 そう言えば息子も笑顔になった。


「あいでし」


 今日はイアンパヌは、下の双子の面倒を見るために居残りだ。


 俺達は竹を切り倒すための石斧をもっていく。


「じゃあ、まずは釣り竿になる竹や糸を取りに行こう。

 いってくるな」


「いってきまーす」


「いってきあーす」


 イアンパヌと、この前に下の娘の面倒を見てくれた村の女性は一緒に仲良く双子をあやしている。


 小さな子供を一緒に面倒を見てくれる存在が居るのはありがたい。


「はい、いってらっしゃい、あなた達。

 怪我をしないように、気をつけて」


「いってらっしゃい」


 俺達はまず林に入って、篠竹を探す。


「太いやつじゃなくて、細くてそんな長くない竹をまずさがすんだぞ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 竹はイネ科の植物で芋や麻、穀物などとともにスンダランドに住んでいた人が持ってきたものだ。


 そして、真竹は太いが、篠竹は細く、釣り竿や竹笛などに使うには、篠竹を使ったほうが都合がいい。


 太い真竹は水筒や弁当箱、柄杓などに使う、どちらも成長は早く繁殖力も強いのでので木よりも保全を考えなくてもよく伐採しやすい。


 篠竹は、森の中で真直ぐに伸びた2~4メートルほどの細い竹で、根元の部分から石斧を使って伐りとって、枝や葉っぱをむしり取り、竹の細い先端に糸を付ければ、即席の釣竿となる。


 しばらく林の中を探し回ると見つかった。


「よしあったな」


「ありましたね」


「あったでし」


「好きなのを選んで持ってくぞ」


「わかりました」


「あいでし」


 ちゃんと長く使う竿を作る場合は竹は生えてから2年~3年のものが良く、生えてから 1年未満の竹は成長しきっていないので、乾燥させた後にクセが出やすいので使わない。


 また、本当を言えば竹を刈り取る時期は、晩秋から寒の内の寒い時期が良く、この時期は竹の成分の内タンパク質が少くて虫が付きにくい


 刈り取った竹は屋外で天日干しし、最低1年乾燥させればよい竿になる。


 ある程度太陽光線に当てて晒す目的もあるので、多少なら雨に当たっても大丈夫だが、暖かくなるとカビが生えやすいので、そういうときは屋内にしまう。


 まあ、其れについては今回は教えなくてもいいだろう。


 すぐ釣りができるようにしたいしな。


「じゃあ次は糸だな」


「はい」


「あい」


「糸については麻糸を使うんだが、これは家にあるな」


「はい、いつも編んでますからね」


「あいでし」


「じゃあ、次は針だ、一度家に戻るぞ」


「はい」


「あい」


 俺達は、それぞれが釣り竿に使う竹を持ち帰りながら家に戻った。


「ただいま戻ったぞ」


「ただいまもどりました」


「もどったー」


「はい、おかえりなさい」


「おかえりなさい」


 俺達は一度竹をおいて、家の中に在る冬に狩った鹿の角を探して持ってきた。


「針は鹿の角を削って作るんだ」


 縄文時代は、鹿の角を削って作った現在の釣り針とほとんど同じ形状の釣り針がすでに有った。


 魚を釣るという行為は、竿がグラスファイバーやカーボンロッドになり、糸がナイロンに、ウキがプラスチックに、重りが鉛に、針が金属になったものの、その道具の役割や形は、縄文時代からほとんど変化していなかったりする。


「まずは角を切っていたにするぞ」


 俺は石斧で鹿の角を縦に切る。


「こんな感じだ、お前たちもやってみてくれ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 子どもたちが俺の真似をして鹿の角を切っていく。


 そこに消し炭で、自分が思う釣り針の形をまずなぞっていく。


 かえしは内側にあるタイプの普通の釣り針だ。


 この時代の針にはすでに返しがあり、かかった魚が逃げにくいような工夫がされている。


「で、こんな感じで、針の形を書くんだ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 子どもたちが小さな手で、一生懸命釣り針の形を書いていく。


「よし、そうしたらまずはナイフとのみで大まかに削るぞ」


 そう言いながら俺は鹿の角を黒曜石ナイフとのみで大まかに削っていく。


 まずは切りたい線に沿って石器のナイフで溝を掘り、そこに石のみをあてて割ってカットしていく。


 縁日のあれみたいな感じだな。


 大雑把な釣り針の形に削れた所で子供たちに見せる。


「こんな感じだ、じゃあやってみてくれ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 子どもたちも見よう見まねで骨を削り、のみを当てて割っていく。


「よし最後は削るぞ」


 鹿の角は爪と同じコラーゲンなので、水につけることで柔らかくなり、加工しやすくなる。


 なので水につけた後、砥石に角を当てて擦れば削れていく。


「こんな感じだ」


「すごーい」


「すごいでしー」


「よしお前たちもやってみてくれ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 子どもたちも角を水につけて柔らかくしてから砥石で角を削っていく。


「できたー」


「できあー」


「うん、ちゃんと出来てるな」


 まあ流石に息子の作ったものは、ちょっと不格好だけど。


「後は漆で糸と竿や針を結んでくっつければ完成だ」


 俺がまず自分でやってみせる」


「こんな感じな、よしお前たちもやってみてくれ」


「はい、お父さん」


「あいでし」


 子どもたちも真似して結んだ後くっつけて完成した。


 針もでかいし糸は太いが、そもそもそんな小さな魚を釣るつもりはないからいいんだ。


 鯉にしてもスズキにしてもこの時代1メートル位あるようなやつはうようよいるからな。


 流石にそこまで大きいと、子どもたちは引きずり込まれそうだから、40センチ位の魚が釣れればいいなという大きさだけどな。


 後は萱のウキと土器の破片を使って重りをつければ完成だ。


「できたー」


「できたー」


「おう、できたな、じゃあ明日にでも釣りに行こうか」


「うん、いくいくー」


「いくでしー」


 明日は家族で川釣りだな。

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