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石器づくりはこの時代では重要だ

  あれからさらに3年の歳月が過ぎた。


 イアンパヌは一度の流産を挟んで、この春に双子の女の子を産んでいる。


 双子だったから今回の出産は特に大変だった。


 母娘共に大過なく住んだのは本当に良かったぜ。


 この時代はおおよそ2年間隔で女性は子供を生むのが普通だった。


 俺たちの場合、最初ちょっと間隔が空いたりしてるのは現代人である俺の精子が薄いからかもしれないな。


 初産の女性が1割ほど出産で死ぬこの時代だが、女性は子供を生むことができる、20年のほど間はずっと生み続けるのが普通だ、授乳期間は生理が来ないので縄文時代における女性はあまり生理の痛みに苦しむことはなかった。


 もちろん出産はもっと大変な部分はあるんだがな。


 実はこれは戦前ぐらいまでは、ずっとこんな感じで生み続けることができた女性は8人位子供を生むのは普通だった。


 ただし生まれてきても成人に成れるのは其の半分ぐらいだし、子供の頃の高熱などによる不妊もあって男女全員が必ず子供を産めたわけでもない。


 だから、子沢山でも人口が急増することはなかったんだ。


 上の娘は数え7歳、息子は5歳、下の双子の娘は数えで1歳だな。


 上の二人は両方共大きな病気や怪我はなくすくすく育ってる。


 そしてこの時代の7歳は現代なら6歳で小学校に入るくらいぐらいになってくると、本格的に親の仕事の手伝いを始めるのが普通で、子供に乳をやっているイアンパヌが見ている前で、一生懸命麻を編んでいる。


「んと、ここがここで……」


「そうそう、きれいに編めるようになってきたわね」


「えへへ、其れはもちろん母さんに習ってずっと作ってきたからね」


 4歳の子には俺が石器の作り方を今教えていて、一生懸命に石器のナイフを作ってるな。


 土器を作るよりも石器を作るほうが大変だが、石器はこの時代重要なものだ。


「とーしゃん、できまいた」


「おお、できたか」


 はっきり言えばまだまだ下手で、ちゃんと使えるか怪しいが、息子が一人で作ったというのが嬉しい。


「おお、うまくできてるぞ」


 俺は息子の頭をえらいえらいとなでた」


「あい、あいがとでし」


 小さい頃はおとなしすぎて大丈夫かと思っていたが、最近はみんなといっしょに走り回ったりしていて随分とわんぱくになった。


 ボールが顔にあたってぴーぴー泣いて戻ってきた頃が懐かしいな。


 そう言えば石器と言えば、石に石をぶつけて作る物だと思ってる人が多いかもしれないが、そんなに単純でもない。


 打製石器の製作技術としては黒曜石なような割れやすいガラス状の石に固い石を直接打ちつけて割りとる物は直接打法と呼ばれ、大きな原石から、おおまかに使いやすい大きさに石を剥ぎ取る時に使う。


 それに対して間接打法は直接打ちつけるのではなく、石材の一端にシカのつのや骨で作ったタガネを当て、それに石を打ち付けて石片をはぎ取り、石刃をつくる方法。


 さらに押圧剥離は石材の縁に尖ったシカの角や骨、木などの柔らかい打撃具を当て、力を加えて微細な石片を剥離する方法で、石槍の尖頭器やナイフなどの細石刃などを作る時に使う。


 最初は石を砕いただけの礫器から、薄い剥片を用いた剥片石器・石の中央部を利用した石核石器へ移行し、最終的には細石器が用いられるようになったらしい。


 石器というと石斧や石槍ぐらいしか思い浮かばない人間も多いかもしれないがその他にもナイフ、毛皮の毛を剃るための掻器スクレイパー、毛皮に穴をあけるための石錐、食事に使う石匙、穴を掘るための石鍬、狩りに使うための鏃、木などに穴や溝を掘る石のみなど用途に応じた多様な打製石器があり、さらに研ぎ石で石を削って造リ出せる磨製石器が作られるようになると木工技術も進んだ。


 其れとは別に石皿や磨石を作ることによって、堅果の殻を割りすりつぶして粉末状にすることもできるようになった。


 磨製石斧の刃先の形は、鋭いだけではなく、切断しようとする木などに斧が食い込んで離れなくならないよう、断面が膨らんだ形につくり出されている、石器の石斧による作業効率は鉄の斧の四分の一くらいで、たしかに作業は大変だが、金属器にそこまで劣るものでもないぞ。


 木を切り出して加工する際にはまず木の柄に磨製石器を横にはめ込んだ石斧で木を切り倒し、Yの字の枝の先に葉を埋め込んだ手斧で表面を削り、細かい加工は木の棒の崎に刃を埋め込んだ石ノミが使われた。


 丸木舟を削ったり、家の柱の穴を削ったりするのはこれ等の道具を使ったわけだ。


 石の斧とノミがあれば案外なんとかなるもんだぜ。


 そして石器の作り方を教えるのは男親の息子への大事な仕事ってわけだ。

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