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縄文時代は意外とヘアスタイルが豊富だったしファッションもおしゃれだったんだぜ

 さて今日はアパートの三面鏡のある部屋を、俺たちの家族が使える日だ。


 アパートは祭殿扱いだが、祭や出産の時以外全く使えない訳でもない。


 もともとは俺が住んでいた部屋があるとは言え一階は大家さんの部屋だし、俺の部屋以外は倉庫だったり事務所だったりするんで、厳密に言えば不法侵入なんだが、大家さんも縄文時代に来てると言うわけではないのだからこれくらいは許してもらおう。


 もちろんこの時代に大きな三面鏡なんてものはないから、明らかにオーバーテクノロジーなんだがまあ気にしちゃいけない。


 鏡があれば髪型なども整えやすいし、一種の美容室だな。


 月に何度か一家で使ってもいい日を決めてみんなで共同で使ってるわけだ。


 ところで縄文時代の髪型というと、何もしないでおろした髪のままと思われるかもしれないがそんなことはない、女性に髪型がなくなっておろしたストレートだけになったのは古墳時代以降で、縄文時代は意外といろんなヘアスタイルが有った。


 たいていの人は、過去にさかのぼるほど人類の生活は厳しく単純になっていくと考えるが実はそうではない。


 だいたい古代ローマと其れ以降を考えてもわかりそうなものだと思うがね。


 まずはイアンパヌや娘たちが洗面台で軽く頭や髪の毛を洗う。


 シャンプー代わりは鯨油と木の灰を混ぜて作った液体石鹸だ。


 洗い終わったらタオルで水気を取って、乾いたら、櫛ですいて、髪型をどうするか話し合う。


「さて、今日はどうしようか?」


「そうね、今日は頭の上で丸めてみましょうか」


「了解」


 シニヨンってやつだな。


 髪の毛を丸めてまとめれば其れだけじゃまにならないで動きやすくなる。


 なら切ればいいじゃないかって?


 いやいや、髪は女の命ってね。


 長い髪の毛でも動きやすくしたり、おしゃれをしたいのはいつの時代でも変わらないってことさ。


 土偶を見れば一時期はやったキャバ嬢のもりもりのヘアスタイル、もしくはサザエさんのヘアスタイルみたいだろ?


 この時代にはヘアゴムはないから糸を使って髪をまとめた結髪になるがな。


 女性が再び髪を結い上げるようになったのは、江戸時代以降らしいが、其れだけ縄文時代は女性にも余裕があったということさ。


 俺はイアンパヌの髪の毛を結い上げて丸めていく。


「こんな感じでどうかな?」


 鏡に写った姿を見てニッコリと彼女は笑った。


 こういった鏡がないときは水に写った姿で判断していたらしい。


「うん、いい感じね、これなら動きやすいし」


 頭の上で髪を丸くまとめたシニヨンに、先の尖った1本の細い棒を刺して髪挿かみざしにする。


 髪刺しには魔を払う呪力が宿ると、この時代では信じられているんだ。


 これがのちのかんざしだな。


「とーしゃあちしもー」


 娘もイアンパヌと同じ髪型がいいみたいだ。


「おう、お前さんも同じがいいか?」


「うん、かーしゃとおなじがいー」


「了解、じゃあいまやるからな」


「あいでし」


 娘も同じ髪型がいいらしいので、同じように頭の上で丸めてやる。


 そして同じように簪を刺してやれば完成だ。


「どうだ?」


 娘は鏡を見てニコニコしてるな。


「あいがとー」


 こういったシニヨンのお団子ヘア以外にも、ポニーテール、ツインテールなど、さまざまなヘアスタイルがこの時代には有ったんだぜ。


 ちなみに男は髷みたいに丸めるか、後ろでバッサリ切っちまうかだな。


 ファッションと言えば服の方だがこの時代は割と余裕があったので、天然の色土や草木の花、うるしなどを使って糸を染めていた。


 漆には、赤い漆と、黒い漆があるが、これをつかえばまずは赤い糸と黒い糸ができる。


 酸化鉄である弁柄べんがらなども使われている。


 麻は普通にしてれば白っぽい色で、樹皮の煮汁は茶色だな。


 そういったものを使って色を編み込んだり、針で縫い込んで刺繍をしていたりしたわけだ。


「ここをこうしてね、こうすれば」


「すごいでしー」


「いいえ、頑張ればあなたにもできるようになるわよ」


「がんばるでし」


 イアンパヌと娘が編み物をしているな。


 いまはまだ保温性に高い毛皮で、どうしても地味になりがちだが、夏になれば染めた麻の糸をつかって、綺麗に編んだ服を着ることができるようになるわけだ。


「んしょ、こうでしか?」


「そうそう、で、ここをこうしてね」


「わかったでし」


 この時代衣服を作るのは手間がかかるから、みんな大事に着ている。


 だからこそ、刺繍などにも熱が入るってわけさ。


 んで、が何をやってるかというと、骨を削って釣り針を作ってるところだ。


 夏は魚釣りが増えるからな。


 息子は泥をこねてミニチュア土器を作ってるな。


 ちっちゃな壺とかお椀とかだ。


 娘と一緒になっておままごとみたいなことをしてる時があるが、もうちょっと男らしく育ってほしい気もするなぁ。


 ちなみにこういったおしゃれは村の女全員が平等にやってることだ。


 一部の貴族だけが装飾を身に着けたり、高価な衣服を身にまとっているわけじゃない。


 差別も身分もなくのんびりした時代と言うのはいいものだと思うぜ。

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