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ボールは友達怖くない

 さて、俺達が作った蒸気風呂はなかなか村のみんなにも好評だ。


 冬の寒いときでも、汗をかけるほど、体があたたまるのはやっぱりいいよな。


 家の炉でイノシシ肉を燻しながらそんなことを考える。


 そうしたら息子が泣いて家に戻ってきた。


「うわーん、とーたー」


「お、おう、どうしたどうした?」


「こあいのー」


「おう、何が怖いんだ?」


「まるー」


「丸が怖いのか?」


「あーん」


「もう大丈夫だぞ、怖くない怖くない」


 丸が怖いってなんだろうな、とりあえず息子が泣き止むまで、抱きながら頭をなでてやった。


 しばらくぐずってた息子だが、やがて泣き疲れて眠ってしまった。


 よく見ると目のところがちょっと赤く腫れてるな


 殴られたわけではないだろうが、何かにぶつかったのか?


 となるとあれか。


 芋を作るようになってからそれなりに保存が効く芋のお陰で割りと冬の間の食糧難も解消されてきたが、この時代冬の間は採取できる食べ物が少ないので動物の狩猟が重要なんだ。


 そして狩猟のためには弓の腕を磨くのが重要だ。


 そのために止まった的は木を輪切りにした丸い的でいいんだが、動いている動物を矢でいる訓練のために使うのは草の葉を丸めて作ったボール状の的で、其れを転がして其れに矢を射ることで練習していた。


 でまあ、その的としてのボールは、投げ合ったり蹴り合ったりすることにも使われてる。


 玉遊びっていうのはかけっこと同じくらい歴史の古い遊びなわけだ。


 うちの息子はまだ小さいから混ざっていたわけじゃないんだろうが、ていたらボールが飛んできて運悪く顔に当たったんだろうな。


 草を丸めたものだからそんな痛いわけじゃないはずだが。


「まあ、小さい子供には怖いかもしれないけどな……」


 しかし、其れがトラウマとかになっても困るな。


 ボール遊びは楽しいものだと、思ってもらわんとな。


 俺はしばらく考えてある程度の太さが在る木の枝を同じくらいの長さに10本切りそろえ、少し重くなるように石に草の葉を丸めて手頃な大きさになるようにまりを二個作った。


 そんなことをしていたらイアンパヌと娘が帰ってきた。


「ただいま、あら其れは?」


「ああ、息子の遊び道具にと思ってな」


「遊び道具?」


「どうぐー?」


「ああ、そうだ、明日みんなで遊ぼうぜ」


「ええ、そうしましょう」


「あそぶのー」


 とりあえず今夜は軽く飯を食ったらみんなで寝た。


 さて、翌日だ、みんなで起きたら水で顔を洗って遊ぶことにする。


「んじゃ、始めるか」


 俺は木の枝を手前側が頂点になるように5本ずつ三角に並べる。


「じゃあお前ら、あれにまりを転がして、当ててみてくれ」


 俺は娘と息子にまりを渡して言う。


「あいでし」


「あいー」


 少し離れたところから木の枝に向けてまりを転がして見せる二人。


 ”パッコーン”


 まりが木の枝にあたって倒れた。


 娘は3本、息子は1本だ。


「3と1っと」


 俺は正の字数えで木の枝を使って倒れた本数を記録する。


 ボウリングなら2回投げて数えるが面倒だから一回投げて倒れた本数でいいだろ。


 それから倒れた枝を立て直して転がっていったまりを拾い上げて一個をイアンパヌに渡す。


 今度は俺とイアンパヌだな。


「よし、じゃやるか」


「ええ、負けませんよ」


 やっぱり適当に離れた場所からまりを転がして見せる。


「しまった」


 俺が転がした玉はあさっての方へ転がっていってしまった。


「よーし」


 一方イアンパヌは5本全部倒していた。


「やれやれ、失敗しちまったぜ」


 イアンパヌの倒した本数を正の字数えで5本として俺の所は倒れてないから何も書かない。


 そんな感じで子供と親のコンビで交互にまりを転がしていった。


 最初木の枝を並べ直すのは俺がやっていたが、そのうちに子どもたちも自分で並び直し始めたりして、全員が10かい転がし終わった所で結果発表。


「一番いっぱい倒したのはお母さん、2番がおねえちゃん、3番がお前さんだ」


 俺はそう言って息子の頭をなでてやった、ホントは息子のために始めたのに、下から2番はちょっと可愛そうかと思ったが、本人は楽しそうだし嬉しそうだ。


 ちなみにビリは俺だぜ、とほほ。


「とーしゃ、また最初からやるでし」


「やるー」


「お、おう、じゃあもう一回な」


 そのもう一回が子どもたちが飽きるまで続いたのは言うまでもない。


 そして息子に俺は聞いた。


「丸、まだ怖いか?」


「こあくないー」


「そうか、それはよかったな」


「あいでし」


 うん、息子が楽しそうで何よりだ。


 イアンパヌや娘も十分楽しんでいたみたいだしな。


 そう言えばこれからは芋とかがどのくらい残ってるかかいて記録しておいたほうがいいのかもな


 今までは適当に底を抜いた土器の中に樹の実や芋を入れておいてなくなったら、狩りに出かけると言うやり方だったけど、記録しておけばいつなくなるか予想もできるようになるしな。


 この時代には文字はないから、とりあえず中に何が入ってるかは絵で示しておけばいいか


 数字も最初は正の字で数えておけばいいかね。

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