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冬の病気予防のためにも蒸し風呂を作ろうか

 さて、冬は空気が乾燥するのでホコリ等に紛れて細菌やウイルスなども、空気中を漂いやすい。


 そうするとそれを吸い込むので、風邪などを引きやすくなるわけだ。


 ウパシチリの語り聞かせでも出ていたが、風邪やそれによって起こる気管支炎や肺炎はこの時代では結構致命的な病気だったりする。


 それに夏は水浴びもできるが冬になるとそうも行かない。


 そうなると皮膚病などにもかかりやすくなるんだよな。


「うーん、やっぱ風呂はほしいんだけどな……」


 しかし、風呂は水をこまめに入れ替えないようではむしろ衛生的には逆効果だったりする。


 そのためにアパートの風呂を使うことはできなくないのだが、水を運ぶのはとても大変なのだ。


 なんせ水は重いからな、ただでさえちょっと小高いところにアパートも集落も在るんだし。


 もちろんこの時代ポンプなんて言うものはないし、上水道もない、ポンプを作るにも木工工具などが発達しないとちょっと難しい。


 となればできるのは蒸し風呂のたぐいだな。


 水を使った沐浴の次に蒸し風呂は歴史が古い。


 岩風呂や釜風呂のたぐいなら奈良時代からあったはずだ。


 早速ウパシチリと相談してみよう。


「ウパシチリ、子供たちの病気を防ぐためにも蒸気を浴びられる、蒸し風呂を作りたいんだが許可をもらえるか?」


「蒸し風呂……ですか?」


 ウパシチリは首を傾げた。


 まあ風呂と言っても通じないよな。


「ああ、要は新しく家を立てて、屋根の換気口を塞いで、その中で熱した石に水をかけて蒸気を満たして、 それで体を温めると言ったもんなんだが、どうだろう?」


「そうすれば、子供たちの病気が減るのですか?」


「ああ、体もあたたまるし、喉も蒸気で潤うしな」


「分かりました、ではお願いします」


「了解、ありがとうな」


「いえいえ」


 こうしてウパシチリに許可を取った俺は、蒸し風呂を作り始めた


 もちろん、俺一人で家を建てられるわけじゃないので、村の男などにも協力してもらう。


「おお、子供が死ににくくなるって言うなら無論協力するぞ」


「ああ、助かるぜ。よろしくな」


 銅を刃先にはめ込んだ木の鍬を使って大きな穴を掘っていき、柱を立てるための穴も掘る。


 そこに柱を立て、その頂部を梁でつないで、放射状に垂木を架け、屋根の野地板としてまず燻した樹皮で被い、その上に乾燥させたススキの茎である茅をのせる。


 通情であれば屋根の通気口は開きっぱなしなので在るが、それでは蒸し風呂にできないので、通風口には木の板をおいて取り外しができるようにしておく。


 入り口にも戸板を置こう。


 屋根に土を被せ完成だな、湿気が多い分耐用年数は短くなりそうだがまあそれは仕方ないだろう。


「じゃ、ためしてみるか」


 まずは屋根の通風口を塞いだ状態で、中央にある炉でガンガン火を焚いて建物の中を熱し、空気を温めて、炉のそばに置いた熱した石に水をかけると建物全体に蒸気が広がる。


「うん、いい感じじゃないか?」


 一応、脱衣所のようなスペースがほしいから、入口側に板を立ててある程度蒸気をさえぎられるようにしておこうか。


 竹籠をおいておけば衣服も汚れないだろう。


 まずは試しにうちの家族にも入ってもらうとしようか。


「というわけでみんなんで蒸し風呂に入るぞ」


「蒸し風呂?」


 イアンパヌが不思議そうにしてる、まあそりゃそうか。


「とりあえず温かい蒸気を浴びに行こう」


「よくわからないけど、いきましょうか」


「いくでし」


「いくー」


 俺達は家族で風呂に入りに行った。


 持ち物は麻の布だけだ。


「まずはここで、服は脱いでくれ、脱いだ服はかごに入れるように」


「あら、ここで脱ぐの?」


「ぬぐでし」


「ぬぐー」


「ああ、汗をかくから風呂には裸で入るんだよ」


 まあ、場所によっては水着で入ったり湯帷子で入ったりする場合もあるようだけどな。


 全員が服を脱いで全裸になったら、蒸気室に入る。


 炉で焚いている火と石のおかげで十分湯気は満たされてる。


 石の上によもぎをおけばよもぎ蒸しぶろだ。


 よもぎにはいろいろな健康効果が在るが蒸し風呂に入れても効果はあるんだよな。


「あら、温かいしいいわね」


「あったかいー」


「かいでしー」


 尻が汚れないように床にも木の板をすのこ状にしいてあるので、みんな床に座ったり寝たりしてのんびり過ごす。


 蒸し風呂と言ってもそんなに温度が高いわけではないので、子供もやけどしたりする心配はない。


 やがてみんながたっぷり汗をかいたら、まずはそれぞれ自分の体を水で濡らして絞った麻布で拭いていく。


 結構垢が溜まってたのは驚きだが、あんまり落としすぎるのも良くないらしい。


 体の皮膚についている常在菌の餌にもなるからな。


「じゃ、イアンパヌ、背中をふくからちょっと座ってくれ」


「背中ね、ハイお願いするわ」


 俺に背を向けて座っているイアンパヌの背中を麻布で垢を落としていく。


「とーしゃ、つぎあちしー」


「つぎー」


「おう、ちょっと待っててくれ。

 お母さんが終わってからな」


「あい、まつでし」


「まつー」


 イアンパヌの背中の垢を落とした後、娘の背中もおなじようにやってやる。


 息子はイアンパヌが背中を洗ってるな。


 まあ、自分であらえないこともないが、こういったスキンシップもたまにはいいってことさね。


「じゃあ、最後はあなたの背中を私が流すわね」


「おお、頼む」


 イアンパヌの手で背中を流してもらうとやっぱり気持ちがいいな。


 みんな十分汗を書いて垢を落としたら、風呂から出る。


 浴槽がないのは残念だが……まあそのうち考えるとしようか。


「いい、湯気だったな」


「ええ、体も温まったしいいわね」


「いいでしー」


「いいー」


 とりあえずこれで血行促進や皮膚についてるシラミやノミなども落とせるだろう。


 これで、子供が死ににくくなるといいな。

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