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番外編:信仰を失った神は消える・だから信仰を失わないですんだ神は感謝する

 さて。

久方ぶりに俺はこの時代に転移したときに一緒に来てしまったアパートに来ていた。


「なんかもうここに来るのも久しぶりだな」


 この建物は俺が21世紀に住んでいた時も元々築50年ほど経っていた。

古い建物だがいろいろあって俺はその雰囲気がすきだった。

ここからはいろいろな物や野菜などを持ち出したり、産屋として使ったり、祭殿にしたりしていたが、この時代に来て更に10年ほど経ったので流石にそろそろがたが来てしまい、新たに立て直すことにしたのだ。


「流石にそろそろ厳しいよな。

 ん、そう言えばこんなところに祠があったっけ」


 元々21世紀のときにもこのアパートの角にあった小さな祠はあまり手入れされていないようであったので、俺はたまに掃除をしたリ、お供えをしたりもしていた。


「神様だって忘れ去られるのは寂しいもんな」


『そうですね』


 んあ、なんかちっこいのが祠からでてきたぞ?

姿は人間みたいだが服装はアイヌっぽい?


『あなたのお陰で私は消えずに済んだのです』


 ちなみに声というより直接的に脳に話しかけられてるような感じだな。


「ん、どういうことだ?」


 そのちびっこは笑っていったんだ。


『私たちはあなた方に忘れ去られると

 その存在が消えてしまうのです。

 あなたは消えかけていた私に

 供え物をしてくれた。

 それにより私はかろうじて消えずに

 すんだのです』 


「ああ、なるほど。

 観察者が消えると

 その世界は消えるってやつか」


『はい、そのような感じなのですよ

 なので私は消えずにすんだお礼として

 あなたの願いを叶えたのです』


「なるほどなぁ。

 この時代は不便ちゃあ不便だけど

 いい時代だよな」


『はい、私もみなさんが大好きですよ』


 そんなところへ双子がひょこっと顔を出す。


「おとうさん、どうしたの?」

「おとうさん、どうしたの?」


 俺は双子に説明する。


「俺をここに連れてきてくれた神様がな

 ひょっこり現れたんだよ」


 そして双子はちっこい神様に目を丸くする。


「トィチセウンクル」

「トィチセウンクル」


 キャッキャと喜んでる双子にチミっちゃい神様の相手を任せて、俺はウパシチリやウカエチウに祠の存在を報告し、祠も新しく作り変えることにした。


「まさかそんな理由があったとは」


「思いもしませんでしたね」


 二人はそう言いながらトィチセウンクル、まあいわゆるコロポックルを改めて祀るために祠を綺麗に作り上げた。


「流石だなぁ」


 俺の言葉に二人は謙遜して言う。


「それほどでも」


「無いですよ」


 そしてアパートは取り壊され俺がここに来た痕跡の一つは消えてしまった。

とは言えこの時代の日本にあるはずもないものはいくつか残ってるし、俺自身も消えたわけではない。


「まあ、この時代に俺を連れてきてくれた神様には感謝だな」


 この時代はやっぱいい時代だと思うぜ。

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