死神の試練と普通(笑)のプレイヤー達
レベル一のままが、厳しくなってきた……
運営には頑張ってもらおう。
桜が本家死神と出会って三日。
ゲームにログインしては、死神からの試練を達成し続けていた。
現在のクエスト進行状況は以下の通り。
◇◇◇
シークレットクエスト【神へと至る者】5/12
死神の影を倒したアナタは資格を手にした。
その資格が一体なんなのか知る為、アナタは真なる死神を探し始める。
進む先に何が待ち構えているのか、それは誰にもわからない。
1.死神の影を倒す【クリア】
2.クエストアイテム【資格の証】の入手【クリア】
3.真なる死神と出会う【クリア】
4.死神装備を装備し、真なる死神と会話する【クリア】
5.真なる死神に実力を認めさせる【クリア】
6.真なる死神の呪いを解く【未達成】
7.???【未達成】
8.???【未達成】
9.???【未達成】
10.???【未達成】
11.???【未達成】
12.???【未達成】
◇◇◇
桜は5までは一日で終わらせたのだが、6が全くクリアできずに三日も経ってしまっている。
まともなヒントが無いのに、出来るほうがおかしいのだ。
桜は気付いてないが、死神のいる場所がヒントだったりする。
もっとも、桜は勘に従い光神教会を探索していたりするのだが。
「……やっぱり、お手伝いしましょう?」
「いや、自分でなんとかする」
女性神官は心配そうに桜を見つめる。
今桜がしているのは、光神教会にある図書室の本の確認である。
三日間で大体七割を確認したが、今の所情報無しである。
適当に置いてあった本が、本棚に収納されていっているだけである。
二時間後、本棚が全て埋まった。
「……ない」
結局本には死神関係のことは無かったが、光魔法やら一部の最終職業のクラスアップ条件などは見つかった。
桜には魔法以外特に必要なかったが。
休憩も兼ねて桜はステータスを確認する。
◇◇◇
ステータス【桜】
職業・初期職【旅人】
レベル・1
アタック・24
ガード・6
マジック・27
レジスト・3
スピード・49
ラック・12
☆装備☆
一覧表示【95】
☆称号☆
【死神に刻みし者】
【死神を追う者】
【死神に挑む者】
☆使用アビリティー☆
【空歩・Ⅳ】78/100
【ミラージュステップ・Ⅴ】95/100
【見切り】MASTER
【武器適性・B】51/100
【不壊の極意】MASTER
【アビリティーが未設定です】
☆控えアビリティー☆
【眼力】97/100
【速度上昇・LV7】3/100
【強奪】1/100
【気迫】0/100
【気配察知】8/100
【気配遮断】14/100
【管理】0/100
【発見】0/100
【救助】0/100
【捕獲】0/100
【武帝】0/100
☆紋章☆
頭部【武器制限解除】
右手【ステップ準備短縮】
左手【熟練度上昇・小】
◇◇◇
死神に勝った後確認していなかったが、それなりに変わっていることに頷く桜。
称号を少し確認してみたら、新しいのが増えていた。
【死神を狩る者】死神に勝った者。
対死神時即死無効、死神装備を装備時、装備性能を倍にする。
【死神狂い】死神に適正レベル以下で勝利した者。
使用アビリティー枠+1、アビリティー熟練度上昇率極大アップ、ステータス上昇率極大アップ。
この2つである。
2つ目の方は、運営の一人がコッソリ追加したという事実はない。
桜は【死神に憶えられた者】【死神を狩る者】【死神狂い】を付ける。
付けた理由は、強そうだから。
新しく手に入れた2つは、死神に勝った記念として装備するだけである。
桜は称号の説明をほとんど見ていないので、何がどんな効果なのか把握していなかったりする。
ステータスを閉じようとしてアビリティー枠が一つ空いてるのを見て、なんでだろう?と思う桜だが、気にせずもうすぐ100になる【眼力】を付ける桜だった。
息抜きも終わって、また探索である。
なんとなしに、今まで気にしていなかった教会の石像を眺める。
両手を合わせて微笑みながら祈りを捧げている翼を生やした灰色の女神像。
「……灰色?」
よくよく見てみると、石材というより灰色の何かで作られているのがわかる。
桜がジッと石像を見ていると、女性神官が近寄ってくる。
「その石像は命を司る女神を模しているんです」
「命?光神じゃないの?」
「光神と呼ばれてもいるんです」
「だとすれば、闇神とも呼ばれてるとか?」
「それはお答えできません……でも、この世界に闇神を祀る教会は存在しないんです。私に言えるのは、それだけです」
「そっか」
二人並んで女神像を無言で眺める
ステンドグラスを通したキラキラとした光が二人を照らす。
桜は女神像を見て何かを考える。
女性神官は女神像を悲しそうに見つめる。
しばらくして、桜は一歩前に出て女性神官に顔だけ振り向く。
「汚れてるみたいだし、綺麗にしてもいいかな?」
「え?……それは、何故?」
「別に理由はないけど……強いて言うなら、綺麗だから、もっと綺麗にしてみたくなった、とか?」
答えに困ったように笑う桜を女性神官は見つめ、ふんわりと笑って頷く。
桜の隣に並ぶように一歩前へ。
「フフ、貴方は変ですね」
「そうかな……普通だと思うけど?」
「変ですよ……でも、嫌いじゃないですね」
「……やっぱり、俺には大人の女性の考えてることはわからないな」
「でしょうね♪」
二人は掃除道具を持って、女神像の掃除を始めるのだった。
「そこら辺は俺がやるよ」
「じゃあ私はこっちを」
ここで問題が発生した。
「ん?磨き残しがあるよ?」
「あら?全然拭けてませんよ?」
この二人、地味に負けず嫌いなのである。
「……結構大雑把だね?」
「……細かいところに集中しすぎでは?」
「じゃあ、どっちが綺麗に磨けてるか比べてみる?」
「いいですね、絶対負けてないと思いますけど?」
掃除が始まる前のいい雰囲気なんて、影も形もなかった。
二人の間に火花が散っている。
女神像の微笑みが、苦笑いに見える状況だった。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
視点・フレン
「久しぶりの俺のターン!!」
「フレン……頭、大丈夫?」
「こいつはもうダメだ!置いていこう!その方が報酬美味しいです」
「壊れたテレビは、殴れば直るんだよ♪」
「何故私はここにいるのニャ……」
「良いから早く行こうよ~」
「今ボス戦中だから!?なんで全員休もうとしてんの!?戦闘中!?戦闘中だからね!?」
「えっと……手伝わなくていいんですかね?」
上からフレン、アリス、覇者、勇者、タマさん、スカイ、アッシュ、レミエール・S・K・ルシフェルである。
以前にあったイベントで知り合い、スレで話したこともあってか今回の様に集まってボス戦をすることがある。
スカイは偶然会って一緒に行動しているだけだが、タマさんは完全に拉致された。
今いる場所が鉱山なので、ぶっちゃけ道案内である。
「あぁ!?死ぬ!?死ぬ!?」
「あ~勇者はホ○ミを唱えた」
「はい回復したよ~頑張れ~」
「鬼かよ!?戦ってくれない!?」
ボス戦に来るまでは皆で戦っていたのだが、アッシュの何気ない一言で今の状況になったのである。
何を言ったかというと……『そう言えばもうすぐバレンタインだな!でもまあ、ここにいる全員渡す相手もくれる奴もいないか!』である。
アリス以外全員が、腐ったゴミを見るような目でアッシュを見たのは、実に印象的だった。
アッシュ的には、バレンタインもイベントがあるだろうからみんなゲームしてるだろ?という意図で言ったが……人間、ちゃんと言わないと伝わらないモノである。
ちなみに、今アッシュが戦っているのはアイアンメッシュゴーレムというボスモンスターである。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!」
なんだかんだでボスを一人で倒したアッシュ。
適正レベルが低いとはいえ、あのイベント以降しっかりと技術を磨いていることが窺える。
「よっしゃ、進むか!たしか、この奥にイベント用のNPCがいるんだよな?」
「そうニャ!ここには何度も来てるから間違いないニャ!」
「……労いの言葉は?」
「おつかれ」
「乙」
「おつです」
「ご苦労様~」
「フッ汝に感謝の言葉を贈ろう」
「軽い!ボスに一人で挑ませといて、軽い!!」
笑いながら先へと進む一行。
その迷いの無さ、まさにベテランのゲーマー達である。
「フレン、桜は元気?」
「あ、私も気になる!最近見かけないんだけど?」
アリスとスカイがフレンにそう言う。
他のメンバーもこの話題は気になるのか、耳を傾けている。
「あ~まあ、元気だな。そろそろ運営の方が何かするかもしれないぐらいには、な」
『?』
桜が死神を倒した。
言うだけなら簡単だが言った後が大変そうなので、フレンは黙っていることにしている。
フレンは薄々運営が桜に注目しているのを察しているので、公式で何かしらの発表があると踏んでいる。
「桜のことは、基本ノータッチなんで質問は受け付けん!」
「えぇ~桜君とパーティー組みたかったなぁ~」
「私も」
「その時は是非僕も誘って欲しいな」
「俺は、遠慮したいな……死神と戦いたくねぇ」
「俺は会いたくない」
「我は彼の者との共闘を望むぞ!」
「桜、人気者ニャ」
ちなみに、僕と言ってる勇者は女の子で、覇者は男である。
リアルでは兄妹の二人だったりする。
それはさておき、クエストNPCを見つけた一行は、さっそくクエストを開始する。
このクエストはアップデート後に追加されたもので、クリアした者はまだいない。
クエスト内容は、【闇神の真実】であった。
今日のGM
「絶好調であるぅ!!」
「おい、あのバカが遂に壊れたぞ」
「いつも通りにしか見えん」
「俺は今猛烈に熱血してるぅぅぅぅぅ!!!」
「……確かに」
「とりあえずうるさいからぶん殴って来るわ」
「ひでぶ!?いきなりぶつなんて、親父にもぶたれたことないのに!」
「なんだお前?今日はネタでしか会話しないつもりか?」
「オフコース!」
「コイツ首にしようぜ」
「仕事はできるから、無理じゃね?」
「そう言えばこんなの貰ったっすよ……ツケの領収書だ、とっときな」
「ヤッベ忘れてた」
「あ~ゲームの管理AIってどんな感じだっけ?確かプログラム任されてたよな?」
「あ、それならもう仕上がってるっすよ。完璧っす。そう、パーフェクト!」
「今日一日そのテンションで行く気か?」
「それが俺のディスティニー!!」
「……とりあえず、もう一回殴っとくか」
「あ、俺も殴るわ」
「暴力反対!パゥッ!?メメタァ!?」
「「成敗」」
「遊んでんじゃねぇよ三バカ」
「「「サーセン」」」




