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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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087.村を監視するもの達1

「あ、もう1つ新しい報告がありました」


 そう言ってクローディアは先に渡した書類とは別の報告書をジルに渡す。


 ジルはそれをめくり、内容を読んでいくと段々と表情が険しくなっていく。


 と言うか、おいおい、マジかこれ。


「……これマジなのー?」


「マジです。前に世界情勢の報告を為された時にお話ししましたように、今魔王軍の勢力が増して連合軍が押されている状況です。よって、アルベルトさんの準成の儀に勇者を公表する予定でしたが、予定を繰り上げ1か月後に公表するそうです」


 なるほど、な。このまま勇者を温存したまま負けたんじゃ意味がないから時期を早めてアルベルトの存在を公表し、士気を高めると言う訳か。


「遂に勇者の存在を公表する訳ねー。でー、これなわけねー。ついでに悲劇の勇者の同情票でも集めるつもりかなー?」


「ありえますね。悲劇の勇者としてより注目が集まるでしょう。そしてそれがアルベルトさんを縛る鎖にもなる訳ですね」


 アルベルトの怒りがあのクソババァに向くが、勇者としての責任がアルベルトを勝手な行動をさせずに、悲劇の勇者としての注目が万が一クソババァに剣を向けた時にご乱心したと言う保険になり、アルベルトの行動を封じる訳だ。


「それで、これは私が対処していいのー?」


「はい。当初は王太子様が対処なさろうとしましたが、ジルベールさんが戻ったと報告を受けてジルベールさんに一任するとの事です」


「了解ー。こんなことさせるもんですかー」


『だな。絶対封じるぞ。その為にも、監視者に会いに行くか』


「クローディアは隠れて付いて来てねー。私が引き付けておくからー」


「分かりました」


 ジルはクローディアを引きつれて村の反対側に隠れている勇人部隊の監視者に会いに行く。


 途中で、ジルに掛けていた【ハイド】と【ジャミング】を解除し、向こうにジルの存在を顕わにする。


 ジルの存在を顕わにすることで注目させ、【隠密】で隠れているクローディアをより察知されにくくするためだ。


 どうやら向こうもジルの存在に気が付いたらしく、近づいてくるジルに戸惑っているようだ。


 まぁ、向こうは完璧に隠れて監視しているつもりだからな。


「こんにちはー。こんなところで何をしてるのー?」


 監視者の前に辿り着いたジルは、如何にも今見つけたかのように振る舞い向こうの反応を見る。


 監視者は20代前半の男で、ドラゴンレザーの装備に身を包んだ槍使いだった。


 んー? 監視者向きの職業じゃないな。




 名前:ハイドラ・プレーニン

 種族:ヒューマン

 状態:冷静

 二つ名:紅鱗の竜騎士

 スキル:竜騎士Lv74

 備考:Alice神教教会勇人部隊第4班第4席




 スキルは【竜騎士】。


 普通、こういった監視には【盗賊】や【忍者】もしくは【野伏】など隠れるのに適した職業がやるもんだが。


「あー……君は今日村に来た冒険者だね。僕は怪しいように見えるが、勇人部隊の人間だよ。実はこの村は勇者の出身の村でね。僕は勇者の村がモンスターに襲われない様に見張りをしているんだよ」


 表向きは勇者の村を守っているって事にするのか。


 勇人部隊の名前を出せば信じてくれると思っているだろうが、甘いな。


 確かに勇人部隊は世間一般では世界を守るために活躍している組織だが、こっちは裏の事情まで知ってるんだよ。


「へー、こんなところで隠れてー?」


「勇者の存在はまだ公表されてないだろ? だから表立って警備する事が出来ないんだよ。だらか僕がこうやって影から……」


『だからって隠れてするようなもんじゃないよねぇ~』


『客観的に見れば、少なくとも村長に事情を報告し、内部からの警備に当たるべきですね』


『村に何も言わないで隠れて警備している時点で怪しすぎ~。もっとマシな言い訳をしなさいよ、ウケる』


 お気に入り女性陣にフルボッコだな、ハイドラ君。


『と言うか、既に勇者が見つかっているって言っているのに、ジルが驚いていない事に気付けや』


『けっこぅ、抜けてる、ね……この人……』


『間に合わせ……いや、この後の件に関する為の人選、何だろう。おそらくは』


『Understanding! それでJobがDragonKnightなんだNa!』


『やってしまうか? ここで? この男を』


『いや、ここでこの男を始末しても、別の監視者や実行者が来るだけだ。今は泳がしておいて、後で片付けよう。それに、この男にはクソババァのメッセンジャーをやってもらわないとな』


 と言う訳で、ジルさんお願いします。


「うんうんー、影から隠れてお仕事なんて立派だねー」


 未だいい訳がましい事をべらべらしゃべっているハイドラを遮り、ジルは最初は持ち上げる。


「でもねー、もうそんなことしなくてもいいよー。だって私がファルト村に戻って来たんだからー」


「え? あんたはただの冒険者だろ? 俺達勇人部隊の方が……」


「そのただの冒険者に隠れているのを見つけれたのは誰かなー?」


「なっ!?」


「私の方が村を護れるから、勇人さんはお帰り下さいー」


「お前……!」


 煽るジルに顔を真っ赤にさせるハイドラ。


 うーん、煽り耐性が低いなぁ。これで本当に勇人部隊の一員か?


「あ、そうそうー、王都に帰るんだったら枢機卿のおばーちゃんによろしく言っておいてねー。勇者の姉のジルベールがファルト村に戻って来たよってー」


「……は? 勇者の姉って、確かまだ10歳になったばかりじゃ……それにマリアベル様が排除したと」


「それともー、S級冒険者の『幻』のジルベールが居るから大丈夫って言った方がいいのかなー?」


「なぁっ!? S級冒険者……!? 『幻』のって……行方不明になっている、あの……? いや待て、ジルベールって……ええっ!?」


「それじゃあ伝言よろしくねー」


 そう言ってジルは驚き動揺しているハイドラを放置して村へと戻っていく。


 あれだけ慌てふためいていれば、密かにクローディアが監視してることに気が付かないだろう。


 後は、ハイドラが上手くクソババァに報告してどう反応するかだな。


 まぁ、おそらく最新の報告にあったあれを即実行するだろう。


 期日を早めるのか、それとも戦力を増強してくるのかは分からないが、概要は変わらないだろう。


 竜によるファルト村の殲滅計画の。












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