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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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085.くノ一

「村長ー」


 一通りファルト村を見回った後に、村長の家に行く。


 村長宅には予定通り親父さんも来ており、既に事情を伝えていたようで、村長はジルを見ると歓喜の表情で迎え入れてくれた。


「ジルや、よく無事でおった。それにしても……話には聞いておったが、随分と育ったのぅ……」


「えへへー」


 ……ジルの無事を喜んではいるんだろうが、そう言いながら村長はジルのたわわに実った胸を凝視する。


 何処を見てるんだよ、エロ村長! ジルも胸を張るんじゃない!


 まぁ、気持ちは分からないじゃないが、いい年した老人がエロジジイに変貌すると碌なことないぞ。


「うぉっほん! それで、アルに関する事だが……まさか教会が私利私欲に塗れているとはのぅ」


 ある人の情報によれば教会の一部 、“勇”の枢機卿――つまりあのクソババァの事だが――の専属組織の勇人部隊は表沙汰にはなってないが、裏ではかなりあくどい事をやっているらしい。


 教会の寄付金の流用は当たり前で、資金の私的使用、寄付金名目の強制徴収などの金銭に掛かる悪事。


 教会と勇人部隊による権力による横暴、暴行、酷いのになると殺人行為。


 最悪なのが、この前のシークス村のように、己の欲望や加虐衝動を満足させるためだけに1つの村を全滅させることなどざらだと言う。


「うんー。アル君を助けるのは勿論だけど、それは私に任せて欲しいのー。下手に村の皆が教会の事情を知って村全体で教会に逆らうようなことになるのは避けたいからー」


「村全体が教会に逆らうようなことになり、粛清の対象になるのを避ける為じゃな」


 それもあるが、ジルにとってはアルベルトにも害が及ぶのを避けるためでもある。


 一応とは言え、勇者であるアルベルトも“勇”の枢機卿の配下だからな。


 アルベルトも悪事に加担していたと疑われる可能性もあるから、事は穏便に済ます必要がある。


 もしくは、アルベルトが全く無関係だと証明するか、だな。


「分かった。村の皆にはジルが帰ってきた事だけを伝えておこう。教会に関してはジルに一任しよう。じゃが、無茶はするなよ。何か困ったことがあれば儂等に頼るのじゃ。いざとなったら教会を敵に回すのも吝かではない」


「村長ー、ありがとうー」


「いいのか? 村長」


 親父さんが少し驚いた表情をしていた。


 確か、教会の民衆に与えている影響力は大きかったはず。


 ほぼ無条件に教会を信じる程、民衆たちは教会に依存していると言ってもいい。


 それを教会に逆らってまでとは、村長も思い切ったことを言うな。


 まぁ、それだけあのクソババァのやっていることに憤りを感じているんだろう。


「構わんよ。儂が大事にしたいのは村人たちじゃ。アルもれっきとしたファルト村の一員じゃ。何処に居ろうともな」


 因みに、今はファルト村ではアルベルトが勇者であることは箝口令が敷かれているらしい。


 アルベルトは優秀なスキルが授けられた為、王都へ留学している事になっていると言う。


 まぁ、まるっきりの嘘じゃない。


 王都教会が、アルベルトが10歳の時の準成の儀の時に世界に向けて勇者を大々的に発表する為に、今は勇者の存在を秘匿しているのだと言う。


 決して村長がアルベルトがファルト村の一員と強調して、勇者誕生の地をアピールする為じゃないと思いたい。


 村長の家を後にした親父さんは、意気揚々と村の外へ狩りへと出かけた。


 余程、膝が治ったのが嬉しかったんだろう。


 ジルも用事を済ます為、村の外へ出ようと門へと向かう。


「お、おい、ジル! 何処へ行くんだ!?」


 また居なくなるのを心配したのか、門番をしていたブランが慌ててジルを引き留めようとする。


「ちょっと村の外にねー。周辺のモンスターとかの様子を見てくるねー」


「いや、ここら辺にはモンスターなんていないぞ?」


 まぁ、村近辺にそうそう危険なモンスターは居ないからな。見回りすると言うのはちょっと苦しい言い訳だ。


「油断大敵ー。そんな気の緩みだと村に危機が訪れても見落とすよー」


「そ、そうか。そうだな。……って、何もジルが行かなくてもいいじゃないか!」


「むぅー、S級冒険者である私を侮る気ー?」


「…………は? S級? って、あ! あの『幻』のジルベールってマジだったのか……!!」


 おー、ファルト村にもジルがS級だと言う噂が届いていたかー


「あー……うん、S級なら心配いらないか。本当に見回りなんだよな? 勝手に居なくならないよな?」


「あははー、大丈夫だよー。流石に帰って来たばかりで居なくならないよー」


 心配するブランを余所に、ジルは軽い足取りで村の外へと出る。


 行き先は、【気配探知】と【索敵】で村の外に反応があった村の門の近くの北東に1人。南に1人。


 ジルが向かうのは南の1人の方だ。


 村を出てから直ぐに北東の1人に見つからないようにする為、【ハイド】と【ジャミング】のスキルをジルに掛ける。


 【ハイド】は隠密効果があり、認識を阻害するスキルで、【ジャミング】は俺がよく使う【気配探知】や【索敵】に引っかかりにくくするスキルだ。


 勿論、互いのスキルLvにより見つけやすかったり見つかり難かったりするが、俺には【森羅万象】がある為、ほぼ限界までスキル効果(Lv上限)を発揮するので見つかる心配はない。


 暫く歩いて目的の人物を発見する。


 向こうも【隠密】で隠れているが、ジルに対してスキルを一部解除しているので彼女の姿がはっきりと見て取れた。


「ごめんー、待たせちゃったねー」


「いえ、向こう(・・・)の様子も見ていましたので、問題はありませんよ。それに、ジルベールさんを捜していた3年間に比べれば短いですから」


 そう、ジルと待ち合わせしていたのは、迷宮大森林の時にお世話になったクローディアだった。










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