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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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080.古の流派

「ママの敵……コロス!」


 おおー、流石人に育てられたゴブリンだ。人語を理解し、話している。


 コーリンのファミリアであるゴブリンキング――ゴーリキが手にした剣を構え、ジルに向かってくる。


『おい、ぼー。オレ様に代われ。相手が剣を使うならオレ様の出番だろ』


『そうですね。ここはお任せします』


 ジルはぼーちゃんを石空間に仕舞い、代わりにはーちゃんを取り出す。


 7歳だったころのはーちゃんは、ジルに丁度いいサイズの剣だったが、27歳の体となったジルにはショートソードサイズの小振りの剣となっていた。


「はーちゃんー、気刃(オーラブレード)ー」


 但し、はーちゃんの2つ目の能力の気を纏わせ刃とすることにより、ロングソード並みの剣となる。


「ヤ゛アァァッ!!」


 ゴーリキが両手で剣を構え上段切りを繰り出す。


 ジルはそれをサイドステップで避け、脇をすり抜け様にはーちゃんを振るうが、なんとゴーリキは振り下ろした剣をそのまま横薙ぎにし、はーちゃんの気刃に合わせ捌いて躱した。


『なっ!?』


 まさか凌がれるとは思わなかった俺は思わず声を上げる。


 だが、当のジルとはーちゃんは冷静だった。


『慌てんなよ。この程度のことはゴブリンキングの構えを見て分かっていたよ』


「そうねー。見たところ鋼斬剛剣流ってとこかしらー?」


 ジルの呟きに、今度はコーリンの方が驚いていた。


「へぇ……、良く知っているわね。そうよ、ゴーリキが使うのは古の流派、鋼斬剛剣流よ。力で全ての物を斬り裂くと言われているわ。さぁて、貴女にゴーリキの剣を防ぎきれるかしら?」


 おおぅ、まさかゴブリンが剣術を使うとは。


 つーか、どうやってゴブリンに剣術を習わせたんだ?


「確かに力じゃ敵わないねー。そこに剣術が加われば鬼に金棒ー?」


「今ならまだゴーリキの子を産むだけで済ませるわよ? それともこのまま抵抗して四肢を捥いで達磨にしてあげた方がいいかしら?」


「どっちもお断りー」


「あらら、我儘ね。我儘な貴女には快楽薬のおまけも付けてあげるわ」


 とんでもねー事を言ってくるな、この女。


 その間にもゴーリキは3mの巨体にも拘らず流麗な体捌きと剣捌きで、ジルを追い詰めているように見える。


「ぐが……、逃げるな」


「むむ、結構粘るわね。ゴーリキ、とっておきを見せてやりなさい!」


「分かった……ママ。重星剛剣斬……!」


 ゴーリキは剣を菱形に四辺を切る斬撃を連続で放つ。


 キキキキキキキキキキキキキキキキキキキンッ


 だが、ジルはその全てをはーちゃんで捌き切る。


「ぐが……!?」


「え……?」


 その様子にゴーリキとコーリンは信じられない物を見る目で驚いていた。


 1人と1匹は驚いていたが、実は何も驚くようなことは無い。


 ゴーリキが剣術を使うなら、よく見ればジルも剣術を使っているのが分かっていただろう。


「いえ、でも古の流派なのよ。それをゴーリキが使うからこそ、そこら辺の剣術じゃ歯が立たない筈……!」


「そこら辺の剣術じゃ無かったらー?」


「……っ! まさか」


「私の使うのは剣姫一刀流ー。鋼斬剛剣流と同じく古の流派よー」


 そう、ジルの使う剣術も実は古に最強を言われていた剣姫が使っていた流派・剣姫一刀流だったりするのだ。


 伊達に迷宮大森林で20年も過ごしていた訳じゃない。


「鋼剣剛斬流の技を見せてくれたお礼に、剣姫一刀流の技を見せてあげるねー」


 そう言いながらジルははーちゃんを正眼の構えのように、やや前傾姿勢で構える。


「剣姫一刀流・瞬刃ー!」


 一瞬にしてゴーリキの背後に回ったジル。


 気が付けばゴーリキの右腕が剣を持ったまま落ちていた。


「……え?」


「が……? がああああああああああああああっ!??」


 何が起きたかは答えは簡単だ。


 ジルは剣を構えたまま、瞬動で剣ごと体当たりをしただけ。


 尤も瞬動による移動なので素人のコーリンには何が起きたのか分からないだろうし、力を主とした鋼斬剛剣流のゴーリキにも見切れなかっただろう。


『よっしゃっ! 綺麗に決まったな! 流石オレ様!』


「(1回決まっただけで喜んでないで、追撃行くよー)」


『おう! ザクザク行くぜ!』


「剣姫一刀流・瞬刃乱舞ー!」


 今度は瞬刃による連続攻撃だ。


 前後左右からによる瞬刃による乱れ切り。


 これによりあっという間にゴーリキは血塗れになり手足は切り刻まれ地に伏せる。


 まだ辛うじて息があるのはゴブリンキングの生命力故だろう。


 尤も、ジルの方もノーダメージと言う訳でもない。


 【瞬動】スキルは存在するが、ジルはそれをスキル無しで再現している。


 当然、体には無理が掛かる。


 瞬刃乱舞は瞬動を連続で放つ技なため、ジルの体には相当な負担が掛かっているのだ。


「ぐぅぅー」


『【ハイヒール】! ジル、大丈夫か?』


「(きゅーちゃんー、ありがとー)」


『お嬢、止めだ。用心の為こっから斬撃を飛ばすぜ!』


「(うんー)」


 ジルは上段の構えからはーちゃんを振り下ろす。


 すると気刃による斬撃が飛びゴーリキの首を跳ね飛ばした。


 はーちゃんの3つ目の能力・飛斬だ。


 気刃によって作られた刃を飛ばすことが出来る能力により、はーちゃんでも遠距離攻撃が可能となった。


「そんな……あたしのゴーリキが……」


「さてー、大人しくお縄に付くー?」


 そんなタマじゃないだろうけど、一応勧告をしておく。


「ふざけないで……! 人の息子を殺しておきながらよくものうのうと……!」


「息子も何もモンスターでしょー。しかも人を襲っているー。子供の責任は親が取らないとねー」


「うるさいうるさいうるさいうるさい! 何であたしばっかり! もういいわ! こんな遊び場もういらない! ジェイコブ! ゴルネル! ジェネリン! 来なさい!」


 お? まだゴブリンが潜んでいたのか?


 【気配探知】と【索敵】の範囲を広げてみれば、確かにこちらに向かって来ているモンスター3匹が居た。











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