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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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078.小鬼姫

 マードックが自ら毒を飲み、狂犬状態に持って行きジルに襲い掛かろうとする。


 狂犬状態――強化と狂化による極限までの能力上昇は目を見張るが、この程度はジルの相手にすらなりゃしない。


 この手のモンスターが迷宮大森林の最奥に居なかったとでも?


『ジル、これ以上相手する事も無いだろう。ゴブリン退治もあるしさっさと片付けてしまおう』


「(でもこの人はゴブリンに関して何かあるんじゃなかったっけー?)」


『おっと、そう言えばそうだった。半殺しで止めを刺そう』


「(あははー。半殺しで止めって矛盾してるよー)」


 ジルは襲い来るマードックの斬撃を、ぼーちゃんで捌いていく。


「うんー、この程度の狂化だったら問題ないねー」


「がぁぁあぁぁっ!!」


 攻撃が当たらない事に苛立ちを覚えたマードックが左右の機動だけでなく、上下の機動でジルを翻弄しようとする。


「ぼーちゃんー」


『任せてください』


 ビリヤードのキューを構えるようにぼーちゃんをマードックへ向け、要所要所で伸縮突きを放ちマードックの機動を封じていく。


 勿論、伸縮突きは手加減している。でなければマードックの体を簡単に貫いてしまうからな。


「がぅぁっ! がぐぁっ!」


 腕や脚を何度も突かれ、最後には動かなくなり棒立ち状態でジルを睨んでいた。


『ジル、いたぶるなんてお前らしくないな』


 今のジルの実力だとマードックはほぼ瞬殺なんだが、ジルは簡単に決着が着かない様に遊んでいた。


「(だってー、女の敵だよー?)」


 まぁ、見てきた訳じゃないが、こいつのやってきたことを考えればこれくらいでもぬるいくらいか。


『心をへし折るって意味じゃありか。狂化まで使ってここまでコテンパンにされちゃあ狂犬の二つ名は形無しだしな』


「(うんー、もう気が済んだからお仕舞にするねー)」


 ジルはぼーちゃんをマードックに突き立て、新たに授かった3つ目の能力を発動する。


「ぼーちゃんー、衝撃ー」


 次の瞬間、ぼーちゃんの突き付けた先から衝撃波が放たれマードックは10m以上吹き飛ばされた。


「(死んでないよねー?)」


『辛うじて生きているな。流石ぼーちゃん、絶妙な力加減だ』


『お褒めに預かり光栄です』


 どうやら狂化状態が解けたらしく、焦点の定まらなかった視点に光が宿り、ジルへの憎しみの視線が向いていた。


「ぐぁ……負けた、のか。この俺様が……」


「そうねー。所詮は負け犬の強さだったって事だねー」


「俺は、負け犬じゃ、ねぇ……!」


「いま現に負けたじゃないー。それじゃあ、知ってることを教えてもらうよー。敗者は勝者に従うんだっけー?」


「……何のことだ? 俺は何も知らねぇ……」


 この様子じゃ何も知らなそうだな。


 負けて意地になってる感じでもなさそうだし。


 一応、【森羅万象】の【センスライ】で嘘を確認したが、嘘はついてなさそうだ。


「この近くのシークス村を襲っているゴブリンの事よー。何かしてるんでしょー?」


「……さっきも言ってた事か。何でゴブリンが俺と関係が……ゴブリン? そういや最近ここら辺を遊びの場にするって言ってたな、あいつ」


 お? マードックは関係ないが、マードックの知り合いが関係しているのか。


 マードックの関係者と言うと、勇人部隊関係か……?


「あいつはあいつだよ。丁度お前の後ろにいる奴だよ」


 思わず後ろを振り返るジルだが、当然そこには誰も居ない。


 ジルが後ろを向いた隙に、マードックは両手がボロボロで剣を持てなかった代わりに、口で剣を咥えそのまま背後からジルを攻撃する。


『残念。ジルを騙せても俺は騙せないぜ。【ストーンキャノン】』


 襲い掛かるマードックの真下から、上に向かって放つ。


「げぼぉっ!?」


 まともに食らったマードックは体を貫かれ、のた打ち回る。


『ジル、単純な手に引っかかるなよ』


「(ごめーんー)」


 まぁ、こればかりは仕方がない。


 この森林大迷宮の最奥に閉じ込められた20年、対人戦の駆け引きは十分に積んだとは言えないからな。


 マードックはこれで終わりだろう。


 だが、嘘から出た真か、マードックの背後から2つの気配が近づいていた。


「あれー? マードック? こんなところでボロボロになって何やってるの?」


 現れたのは大柄なゴブリンに担がれた少女だった。


「がはっ……! 丁度いいところに来た。コーリン、俺を助けろ……!」


「えー、やだよ。近くで騒がしくして、また冒険者が来たのかと思って偵察に来たんだけど、面白いものが見れたね。まさかマードックが這いつくばっている姿が拝めるなんて」


「コーリン、てめぇ……!」


 なるほど。こいつがマードックの言っていたあいつか。


 マードックと同じ勇人部隊所属で、シークス村のゴブリン騒動の黒幕ってところか。




 名前:コーリン

 種族:ヒューマン

 状態:狂喜

 二つ名:小鬼姫

 スキル:ゴブリンファミリア(女性限定)Lv71

 備考:Alice神教教会勇人部隊第5班4席




 【鑑定】をするとそこには見慣れぬスキル名があった。


 ゴブリンファミリア? ゴブリンを使い魔にするスキルか……?


「ねぇー、貴女がシークス村のゴブリン騒動の黒幕ー?」


「あらあら、負け犬マードックの所為でばれてしまったわね。そうよ、あたしがシークス村を騒がせているゴブリンの黒幕よ。

 Alice神教教会、勇人部隊第5班4席のコーリンよ。二つ名は小鬼姫。以後お見知りおきを。貴女はいい苗床になりそうね」












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