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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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069.時空波紋4

「へぇ、面白いスキルだな、それ。他のメンバーもそれなりにやるみたいだ。こりゃあ全員相手にするとちょっと面倒だな。

 そうだ! あんたらは見逃すからその男を差し出してくれないか?」


 無駄口を叩かないと思われていた“月夜(かぐや)”だったが、意外にも見た目通りのチャラ男から声が掛かった。


「随分と無駄口ねー」


「そうか? 話は相手の情報を引き出す手段でもあるんだぜ。で、俺の返事は?」


「お断りー」


 マックスが折角助けたシルバー王子を引き渡す訳がない。


「そうか、残念だ。こんなところでS級冒険者を屠ることになるなんてな」


 こいつ、ジルの事を知ってやがる。


 チャラ男の合図と共に冒険者の格好をした奴らが再び襲い掛かってくる。


 と見せかけ、姿を消していた暗殺者(アサシン)の2人が背後からシルバー王子とマゼンダを狙う。


 ジルとシロップ、クローディアは前面に集中していたので背後に控えていた2人には後ろをつかれた奇襲となる。


 だが残念だったな。それは俺には見えているんだよ。


「マックスー! めーちゃんー!」


 そしてそれは俺がこっそりとジルに教えている。


 子犬姿の子フェンリル――マックスは障害にならないと判断していたのか、子犬とは思え速度で暗殺者(アサシン)の腕に噛み付く。


「キャンキャン!」


 マックスに噛み付かれたことにより奇襲が失敗した暗殺者(アサシン)は直ぐに引いて【隠密】で姿を隠そうとしたが、そのままマックスに追撃され上手く動けないでいた。


 暗殺者(アサシン)はこのままマックスに任せよう。


 もう1人の暗殺者(アサシン)も、いつの間にか放っていためーちゃんに首を刈り取られた。


『あたいらを出し抜こうなんざ100年早いんだよ!』


 めーちゃんはやーちゃんとは違い、曲線を描く時間差攻撃の為、こういう時は便利だ。


「ちっ、所詮は暗殺者(アサシン)か。役に立たねぇな。まぁいい、全滅させてしまえば同じことだ」


 普通は暗殺者(アサシン)の方が脅威なんだよなぁ。


 こいつらの場合は見た目が暗殺者(アサシン)と言うだけで使い勝手が悪いのだろう。


 確かに、冒険者風、町民風の奴らの方が見た目に引きずられ、暗器やら意表を突いた攻撃やらでやりにくい。


 剣士が夥しい数の【ファイヤーアロー】が放たれる。


 剣士は魔法系のスキルは持っていなし、普通の【ファイヤーアロー】の量じゃないからマジックアイテムか?


 降り注ぐ炎の矢は量が多すぎて防ぐことは難しい。


 おそらくその隙を狙うつもりだろうな。


 だが甘い。


 お前ら少女とは言え仮にもS級を冠した冒険者を甘く見過ぎだ。


「かめちゃんー!」


『任せてください。客観的に見てもこれくらい何ともありません』


 シルバー王子の前にかめちゃんを出現させ、新能力の空間凍結を発動させる。


 大量に降り注ごうとしていた炎の矢は空間に固定されたかのように動きを止めた。


 まぁ、空間凍結の範囲に居るシロップ達やシルバー王子達も動きを止めてしまうが。


 ジルがぼーちゃんとめーちゃんを使い、炎の矢は全て叩き落とされた。


 その間にも遠距離から攻撃していたが、かめちゃんの空間凍結の前に防がれている。


「何なんだよ、あれ!?」


 流石にこういった現象には予想外だったのか、魔法使いの口から思わず驚愕の声が出ていた。


 戸惑っているシルバー王子には悪いが、こっちは地竜戦でシロップとクローディアはかめちゃんの能力には慣れている。


 空間凍結が解除されると直ぐに迎撃に移る。


 ……うん、問題は無いな。


 国の暗部だから少し警戒していたが、能力的にはこちらの方が上だ。


 ジルの【ストーンコレクター】に翻弄され、“月夜(カグヤ)”は思った通りの実力を出せていない。


 へきちゃんやかめちゃんで攻撃を防ぎつつ、ぼーちゃんに接続したはーちゃんとやーちゃんで1人ずつ確実に倒していく。


 シロップとクローディアも連携を取り、シルバー王子の【ファンタスティックアーティスト】の援護で戦況はこちらに傾きつつあった。


 10分もしないうちに“月夜(カグヤ)”はチャラ男と【魔剣士】の町民、魔法使いの3人だけとなっていた。


「まさかこれ程とは……! S級になってまだ1ヶ月も経ってないと聞いているぞ」


 ギリッと歯ぎしりが聞こえるくらいの憎しみが籠った目線がジルに突き刺さる。


「あはは、あんた達何か勘違いしているね。S級になったから強くなったんじゃなく、強いからS級になったんだよ」


 シロップの言う通り、それはお前らの認識の甘さだよ。


 おそらくジルが子供なのと、S級になって間もない事で、S級になったのが何かの間違いだと判断されたのかもしれないな。


「それでどうするつもりですか? わたくし達としてはこのまま全滅させてしまっても問題は無いのですが……」


 そう言いながらクローディアはちらりと背後のシルバー王子を見る。


 この騒動の原因となったのはシルバー王子だからな。


 その判断をシルバー王子に委ねるのは間違いではない。


 ……間違いではないのだが、この時シルバー王子の判断を仰がず、このまま全滅させてしまった方が良かったのかもしれない。


「引け。このまま引くのなら見逃してやろう。そして2人の兄上に伝えろ。余は王位継承を放棄すると。まぁ、これは前から言っていたから知っているだろう。いつも聞き入れてもらえなかったが」


 これには“月夜(カグヤ)”ではなくシロップとクローディアがギョッとしていた。


 まさかいつの間にか太陽王国の王位継承問題に首を突っ込んでいたんだからな。


 ジルは……分かっているのか分かっていないのか、いつも通りだ。


 ……本当に大物だな。












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