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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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Side-4 クローディア1

 わたくしの名はクローディア。


 盗賊ギルドの影――通称・影ギルドに所属しているくノ一です。


 普段は拠点都市フィフスのスラム街の奥、廃棄場で『森の灰汁』と言う店を営んでいます。


 まぁ、店と言うのは建前で、実際は迷宮大森林を通り抜ける為の案内所と言ったところでしょうか。


 迷宮大森林を抜ける者は多くないとは言え、案内人はそれなりに危険を伴う仕事でもあります。


 わたくしは幼い頃からシロップさんと共に迷宮大森林を調査し、比較的安全に内外最短時間で通り抜けるルートを開拓しました。


 それを手土産に、影ギルドに売り込み自分たちの立場を確保しましたです。


 そうして何年か案内人の仕事をこなしていました。


 そんなある日、影ギルドの拠点の1つ、清浄店のアオハルさんの紹介状を持った2人組が、迷宮大森林の案内を頼みに来たのです。


 1人は一見優男に見えますが、纏っている雰囲気が只者ではない事を示しています。


 韋駄天のマックス。


 【韋駄天】と言う特殊(エクストラ)系のスキルを持つ、最速のソロ冒険者。


 彼が拠点としているのは東大陸――ブロークンハート大陸にあるサーズの町だったはず。


 それが何故西大陸に居るのでしょうか。


 そしてもう1人の人物はもっと意外な人でした。


 明らかに子供と分かるくすんだ金髪の少女でした。


 彼女の名はジルベールさん。


 迷宮大森林を抜けて聖王国セントルイズへ行きたいと言っているのは彼女で、マックスさんはそのお手伝いだとか。


 シロップさんは満面の笑顔で彼らを迎え入れましたが、内心訝しげにしながらも目踏みをしていたのでしょう。


 案内に値するか者かどうかを。


 わたくしはアオハルさんからの紹介状を読み、ジルベールさんが只者ではない事を知りました。


 紹介状には迷宮大森林の案内人を受けるようにと有りましたが、その最大の理由はジルベールさんがS級冒険者だと言う事です。


 正確には、S級冒険者の依頼だから受けると言うのではなく、最近S級冒険者となったジルベールさんを密かに調べ上げる為に、案内人の依頼を受けろと言う事でした。


 そう、最近脅威度Sのリヴァイアサンを倒した事により、S級冒険者になった最年少の少女が居ると言う情報は得ていましたが、まさか向こうから現れるとは。


 そして本当に何処にでもいる様な少女だとは。


 情報はお金になります。


 しかもそれがS級冒険者に成りたての年端もいかない少女ともなれば、かなりの額となるでしょう。


 わたくし達はジルベールさんの依頼を受けることにしました。


 そうして久々の迷宮大森林の案内をしたわけですが、そこでは驚愕の連続でした。


 ジルベールさんのスキルは特殊(エクストラ)系の中で称号(タイトル)系と呼ばれる、実質なんの能力も無い名前だけのスキルだと言うのです。


 スキルの名は【ストーンコレクター】。


 石を集めることが出来るスキルです。


 これを聞いた時、わたくしはリヴァイアサンを倒したのはブラフで本当はマックスさんが倒したのではないかと疑いました。


 目立つのを避け、ジルベールさんにその矛先を向けて陰で何かを企んでいるのではないかと。


 まぁ、良く考えればジルベールさんがリヴァイアサンを倒したと言われれば真っ先にそっちの方が疑われるので、わたくしの疑いは全く意味の無いものでしたが。


 称号(タイトル)系の中でコレクター系と呼ばれるスキルは全く意味のなさないスキル、と言うのが世の常識でしたが、これからはそれを改めなければいけません。


 迷宮大森林に入り、襲い掛かるモンスターを撃退しました。


 ジルベールさんも自分のスキル【ストーンコレクター】を使い、スライサーベアやゴングベアをことも無く倒していきました。


 先の戦闘を見るに、コレクター系のスキルと言うのは集めたコレクションに何らかしらの付加能力を与えるスキルなのでしょう。


 ぼーちゃんと呼ばれた棒状の石は伸縮能力を、はーちゃんと呼ばれた剣状の石は切断能力などが与えられていました。


 なるほど。確かにコレクションに与えられる付加能力次第では脅威度Sのモンスターを相手にすることも出来るでしょう。


 この情報だけでも案内人をする価値がありました。


 だけど、本当に価値のある情報はジルベールさんその者と言えましょう。


 何度か迷宮大森林内で戦闘を行ううちに分かってきた事が有ります。


 幾らスキルが凄くても、本当の戦闘と言うのは命懸けです。


 それなのに、ジルベールさんは事も無くそれらを平然とこなしていくのです。


 大人顔負けの戦闘を。


 あり得ません。彼女はまだ7歳の少女です。


 わたくしはここに至ってS級冒険者と言うのは化け物(規格外)だと言う事に気がつきました。


 そして彼女の持つ【ストーンコレクター】の本当の恐ろしさも。


 迷宮大森林の最初の難所と言われる地竜の巣(グラドラ・グランデ)ではトラブルに見舞われました。


 特殊個体と化した金色の地竜が暴れまわっていたのです。


 金色の地竜に巻き込まれ、わたくし達は地竜の巣(グラドラ・グランデ)に住まう全地竜と戦う事になったのです。


 そこでジルベールさんは【ストーンコレクター】を惜しみなく使い、わたくし達を助けながら地竜の群れ全てを撃退したのです。


 何なんですか、あのかめちゃんと言うアイテムボックスの機能を持った石甕は。


 300匹以上もの地竜を全てあの石甕に収納してしまったのです。


 あり得ません。あれほどの収納量は伝説級(レジェンダリィ)と言っても差し支えありません。


 そして最も恐ろしいのはきゅーちゃんと言う球状の石です。


 ジルベールさんの胸にペンダントとして収まっていますが、あれは何なんですか。


 きゅーちゃんさんは【ストーンコレクター】に能力を与えられたのではなく、スキルを与えられたのだと言います。


 そのスキルも【百花繚乱】とほぼ全てのスキルを使う事が出来るのだと。


 何なんですか、そのチートのようなスキルは!


 実際に【鑑定】スキルを使い、わたくしのスキルを見破りました。


 わたくしのスキルは【くノ一】ですが、表向きは【侍】と言う事にしております。


 【くノ一】は暗殺にも向く危険なスキルと認識されているからです。


 尤もわたくしが【侍】のスキルを持っていると言う前に、ジルベールさんが【くノ一】のスキルを言い当てたので怪しまれずにはすみましたが。


 【くノ一】の事も、マックスさんは少し反応はしましたが何も言っては来ません。ジルベールさんも差して気にしてはいないようでした。


 他にも、【魔法使い】や【魔導師】、【僧侶】と言った(ジョブ)スキルの攻撃魔法や治癒魔法を使いその凄さを見せつけられました。


 地竜戦でも、大量に用意されたポーションや魔力ポーション等は、きゅーちゃんさんが作ったと言うのです。


 おそらく【錬金術師】のスキルでしょう。


 恐ろしい事に、本当にほぼ全てのスキルが使えるようです。


 そして金色の地竜から逃れるために使った別のスキル【千載一遇】も可笑しいです。


 何ですか、スキルを消すスキルと言うのは。


 最早情報が凄すぎて理解が追いつきません。


 ジルベールさんはこれらの事がどれだけ恐ろしい事か分かっていません。


 迷宮大森林を抜ける為の仲間と言う事で、ある程度の情報を開示してくれていますが、これはそれでは収まらない程の情報です。


 おそらく、マックスさんもこれからジルベールさんへ襲い掛かるであろう危険を察知して行動を共にしているのでしょう。


 わたくしもこの情報を素直に影ギルドに報告するべきか悩むところです。


 これらの情報はあまりにも異質すぎます。


 下手をすればジルベールさんを巡って国同士の戦争にもなりかねません。


 魔王軍と争っている中で、このような恐ろしい事も起きかねないのです。


 幸い、迷宮大森林を抜けるのにまだ2か月以上もあります。


 その間にジルベールさんと【ストーンコレクター】と言うスキルを見極めなければ。












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