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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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052.地竜3

「で、どうするんだっ!?」


 マックスが地竜の攻撃を避けながら、この騒動をどう解決すべきか問うてくる。


「地竜を全て倒すのなら、あの金色の地竜を利用するといいと思います」


 なるほど。


 クローディアの出したアイデアは、そもそもの原因となった金色地竜と共闘?して群れの地竜を相手取ると。


「はい! あたしは逃げる方向に1票! 全部の地竜を倒すのなんて無理だって!」


 んー、でも結局は、どっちもスタミナが持つかって話になるんだよなぁ。


「私はクローディアの策に1票ー。あの金色地竜にも群れが向かって行っているので、私達はその近くで群れを誘導するのー」


 ジルは倒す方向でいる訳だ。


「……まぁ、実際の所、俺とジルちゃんの2人だけなら逃げ切れるんだよなぁ」


「え? あ、そうか。マックスは【韋駄天】だから逃げ切れるのね。地竜はそれ程足が速くないから……」


 まぁ、それでも人間と比べたらかなりの速度だ。


 伊達にドラゴンを名乗ってはいない。


「って、え? ちょっと待って! ジルちゃんも逃げ切れるの!? どういう事!?」


 まだシロップたちにはふーちゃんを見せてないからな。


『流石、あたし! その気になれば直ぐにでも逃げきれるわよ!』


「私は逃げないよー。逃げたら丸一日時間がロスするからー。倒す方が早いでしょー?」


 いや、その発想自体が既に可笑しいよ。


 でもまぁ、逃げるとなればシロップとクローディアの2人を見捨てる可能性も出てくる。


 迷宮大森林を抜けるのに雇った2人を見捨ててまで逃げても意味ないからな。


「どうやら選択肢が無いのはわたくし達の方でしたわね。それでは地竜を倒す方向で動きましょう」


「いやぁぁぁぁ! あたし、後衛職なんですけど! 地竜の群れのど真ん中でドンパチするの無茶苦茶なんですけど!」


 クローディアは刀を手に金色地竜の方へと駆け出す。


 苦情を吐きながらも、シロップも並走して呪文を唱える。


 確かに【魔導師】スキルのシロップに比べたら、【くノ一】スキルのクローディアは地竜の群れのど真ん中でも戦いやすいだろう。


「大丈夫だよー。いざとなったらきゅーちゃんが何とかするからー」


 え? 俺?


『そうですね。いざとなったらきゅーが頼りになりますね』


『そーそー、きゅーちゃんならこの窮地を乗り越えられる!』


『MissGillの頼れるPartner、それがKyuu!』


『客観的に見ても、自分たちと違いきゅーさんには経験値があるように見えます。この状況を打開する策を見出してくれるでしょう』


 何その信頼度!?


 俺いつの間にそんなフラグ立てたのっ!?


 尤も、言われなくてもいざとなったら何とかするけどっ!?


「よし、じゃあまずは俺が場をかき乱す。その後で金色の地竜の背を足場としよう」


 マックスはそう言って【韋駄天】で金色地竜を襲っている群れの地竜を翻弄する。


 互いの背を向け合う形で背後の死角をなくすやり方はセオリーだが……あれだけ暴れまわっている金色地竜に背中と言う方向は存在しないんだよなぁ。


 正面を向いていたと思えば噛み付きで群れの地竜をぶん回したり、尻尾の回転攻撃などで背後の死角をなくしている。


 ……いや、こちらが金色地竜の近場で戦闘を行なえば、自ずと金色地竜も群れの地竜が襲い掛かる方向が制限され互いに背を向け合う形になるだろう。


『よし、マックスの言う通り、一度金色地竜の背中を位置取ろう。あとへきちゃんにはちょっとばっかり苦労を掛けることになるがよろしく!』


『僕……? 僕で役に立てることがぁれば頑張るケド……』


「ぼーちゃんー、伸びろー!」


 ジルはぼーちゃんの伸縮突きで一気に金色地竜の背後まで道を作る。


「え、何それ、凄い」


「凄まじい突きですね。でもお蔭で通りやすくなりました。ありがとうございます」


 まぁ、ぼーちゃんの伸縮突きで進路上の地竜は纏めてぶっ飛ばされたからな。


 何せリヴァイアサンを怯ませる程の突き技だ。


 シロップたちが驚くのも無理はない。


 金色地竜の背後(仮)に位置取ると、何故か金色地竜はこちらにまで襲い掛かってきた。


 口を大きく開けてブレスの態勢を取る。


「えぇぇっ! 何でっ!?」


 シロップが驚きを顕わにするが、まぁ|金色地竜は俺達を攻撃する《そうなる》よな。


 金色地竜にしてみれば俺達が味方とも限らないし、敵味方関係なく暴れまわっているだけかもしれないのだ。


 そもそも俺達は何故金色地竜が暴れまわっているのか、その理由すら知らない。


 まぁ、知ったところでこの状況が改善されるわけじゃないのだが。


 だから俺達がするのは――――


『へきちゃん!』


「へきちゃんー、お願いー!」


『任せて……!』


 へきちゃんが、ジル達と金色地竜を分けるように間に降り立つ。


 巨大化、神鋼化して金色地竜のブレスを防ぎながら、へきちゃんはジル達と金色地竜を分断する。


 これで互いに後方を気にしないで済む。


 尤も、金色地竜はそんな事はお構いなしに、全方位に向かって攻撃している。


 へきちゃんの向こうから、ガンガンと攻撃する音が聞こえたりする。


『へきちゃん、大丈夫か?』


『ん……へぃき……僕が出来ることは、ご主人様を守る壁になる事だけだから……』


 流石、ジルを護る鉄壁。


 いや、今は神鋼壁か。


 へきちゃんの心意気に感動したお気に入り達も俄然やる気が出て来たみたいだ。


『よく言った、へき! それでこそお嬢のお気に入りだ! 後はオレ様たちに任せな!』


『そーそー、あたい達に任せな! 直ぐにへきを楽にしてあげるよ!』


『めー、その言い回しだとへきの息の根を止めると言っているようなものですよ。ですが、めーの言う通り、直ぐに戦闘を終わらせその重圧から解放して上げますよ』


「(うんー、皆いくよー!)」













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