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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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050.地竜1

 シロップによれば、迷宮大森林を抜けるには3つの難所があると言う。


「その内の1つが、地竜の群れが生息する地竜の巣(グラドラ・グランデ)

 まぁ、難所と言ってもそれ程通りにくいって訳じゃないわ。ただ……だからと言って気を抜いていい訳じゃないけど」


「地竜って確か脅威度Cのモンスターじゃなかったっけ?」


「そうよ。ドラゴンでありながら温厚な性格ゆえに、それ程脅威として見なされないモンスターよ」


「あっ、でも地竜の巣(グラドラ・グランデ)って事は……もしかして大量に居る?」


「そりゃあ、巣だからね。地竜の巣(グラドラ・グランデ)は約5kmの広範囲に及んでいるわ。そこらじゅうびっしりと地竜が群れているわよ。数にしておよそ300匹いるらしいわ」


「300……! そりゃあ、圧巻だな」


 俺はシロップとマックスのやり取りを聞いていて、地竜には何か重要な情報があったような気がした。


 地竜はさっきシロップが言ったように、温厚な性格をしていてこちらから攻撃をしかけない限り襲ってこないドラゴンだ。


 大きさは、小さいもので5m位の地竜から、大きいもので30mクラスにもなる地竜も居ると言う。


「シロップさん、地竜について肝心な事を話しておりませんわよ。今の説明では難所足りうるものになりますわ」


「今から話そうとしていたところだよー。盛り上がってきたところなのに話の腰を折られてテンションだだ下がり~。ぷんぷん! ……なんてね! 難所だから気を抜かない様に肝心な事は後からちゅー告!」


 クローディアに指摘され、シロップはワザとらしくおどけたように見せた後、ビシッとポーズを決める。


『地竜は一度でも攻撃を受ければ群れが全て凶暴化し、外敵を排除するために動くドラゴンです。客観的に見ても相手をしたくないモンスターですね』


「地竜に攻撃したら、群れで襲われるのー」


 かめちゃんの説明を受け、ジルがその事を告げると、先に言われてしまったシロップはポーズをしたまま固まってしまった。


 ああ、そうだそうだ。


 グレイウルフと同じように、地竜も群れだと脅威度が上がるモンスターだったんだよ。


 しかも、群れで1つの生き物のように纏まっており、その脅威度は単体ではCだが、群れではAまで跳ね上がる。


 まぁ、群れであっても手を出さなければ目の前を通っても攻撃されないと言う、条件付きの脅威度のドラゴンだ。


「あれ~、ジルちゃん知ってたの~? 流石はS級冒険者。

 ……コホン。まぁ、そんな訳で、迷宮大森林の最初の難所は、地竜の巣(グラドラ・グランデ)を抜ける為に、決して地竜を攻撃してはならないと言う事です!」


「普通の群れでも脅威度がAまで上がります。これが巣と言う、大規模のコミュニティーですからもしかすれば脅威度はSまで上がるかもしれません。

 シロップさんの言葉じゃないですが、決して攻撃してはいけませんよ……? 振りじゃないですからね……?」


 シロップとクローディアが忠告してくるが、それって振りと言うよりフラグじゃね……?


「うーむ、その地竜の巣(グラドラ・グランデ)を抜けるには並大抵の胆力が無ければ厳しいな。攻撃されないとは分かっていても目の前にドラゴンが居るとなれば、余程胆が据わってなければ恐怖に負けて手を出しそうだな。

 その難所は必ず通らなければならないのか? 別のルートは無いのか?」

「まぁ、別に地竜の巣(グラドラ・グランデ)を抜けなくても別ルートはあるけど、そっち通ったらかなり時間のロスになるわよ?」


「どのくらいだ?」


「えっと、迷宮大森林内部では更に1ヶ月かかるし、外では2週間くらいの時間の経過になるわね」


 おいおい、内部での1ヶ月間もかなりの遠回りだが、外での2週間は最初の3日から随分と振れ幅が大きいな!


 内部で3ヵ月が外では3日と聞いていたので、約1ヶ月で1日の時間の経過だと思っていたんだが。


 俺はジルを通してその事を聞いてみた。


 するとクローディアが少し誇らしげに答えてくれた。


「迷宮大森林の内部はあちこちで時空の歪みが生じております。当然、時間の流れも場所によって早かったり緩かったりとまちまちです。

 わたくし達が長い年月をかけ厳選したルートが、3ヵ月-3日と言う最短ルートになります。当然そのルートを外れれば、時間の経過が大きく歪み、時間的なロスに繋がります」


 なるほどなー。


 この迷宮大森林の内部は均一に時空が歪んでるんじゃなく、場所場所で常に変化しているって訳か。


 確かに【解析】や【分析】のスキルを使ってこの空間を調べようとしても答えが出てこないわけだ。


 クローディアの言う通り、3ヵ月-3日ルートは地道な作業の結果、導き出さした2人の成果でもある。


 そりゃあ、誇らしげに話すわ。


「因みに、このルートはあたし達が導き出したルートであって、裏ギルドや闇ギルドのルートとは時間経過が違うからねー。

 それでどうする? 安全なルートが良ければそっちのルートを通るけど?」


「それは困るのー! 当初の予定通りに地竜の巣(グラドラ・グランデ)を行きましょー」


 シロップの安全ルートにすぐさまジルが反対を申し出る。


 まぁ、ジルにとっては3日で済むところが2週間も経っていれば、それだけアルベルトを迎えに行く時間が長くなる訳だからな。


「マックスさんもそれでよろしいですか?」


「ああ、この場合ジルちゃんの意思が最優先だからな。それに安全なんだろ?」


「保証はいたしませんが、出来る限りの安全をお約束します」


 安全……安全ねぇ……


 クローディアはそう言うが、これまでのジルの軌跡を見れば安全で済んだためしがないような気がするんだがなぁ……


 よせばいいのに、そんな事を考えるものだから、フラグが立っちまったよ。


 一行は迷宮大森林のモンスターを蹴散らしながら、1週間後に予定通り地竜の巣(グラドラ・グランデ)へ到着した。


「……なぁ、何か雰囲気可笑しくね?」


「……そうですわね。気のせいだと宜しいのですが、地竜たちが殺気立っているような気がします」


「あはは……なんか激ヤバっぽい。こんなの初めて……」


「ねぇー、もしかして、あれが原因じゃないのー?」


 そう言ってジルが指差す方向には、確かに原因らしきものが居た。













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