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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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049.Lv2の戦闘

 スライサーベアの爪がジルに向かって振り下ろされる。


 ジルはそれをへきちゃんを使って防ぐ。


「へきちゃんー!」


 ジルの【ストーンコレクター】がLv2になり、お気に入りの面々もそれぞれ変化した。


 へきちゃんは金剛石(ダイヤモンド)に変化し、巨大化の能力に新たに加わった能力は、神鋼化。


 神鋼とは神の鋼、即ちファンタジーにありがちなオリハルコンを指す。


 つまり、神鋼化したへきちゃんはほぼすべての攻撃を防ぐことが出来るのだ。


 ……チートすぎやしませんか。【ストーンコレクター】Lv2。


 へきちゃんは金剛石(ダイヤモンド)から神鋼化し、スライサーベアの爪を防ぐ。


『ぃたくなぃ、ぃたくなぃ、だぃじょうぶ、僕はつょい……』


 うーん、性能は凄まじくなったけど、性格は小心者なんだよなぁ。


 スライサーベアは爪が30cmもある刃物と化した熊だ。


 そのスライサーベアの爪がへきちゃんに弾かれ何本か根元から折れる。


「めーちゃんー!」


『あいよ! まかしときな、姐さん!』


 へきちゃんの影からジルはめーちゃんを投げる。


 めーちゃんも材質が普通の石から瑠璃(ラピスラズリ)へと変化し、透き通った青色のブーメランと化していた。


 そして新たに加わった能力も、大概チートじみていた。


 ジルの手から放たれためーちゃんは弧を描いてスライサーベアの背後から迫る。


 野生の勘か、スライサーベアは迫ってくるめーちゃんに気づき、反対側の残った爪でめーちゃんを迎撃しようとするも、その爪は空振りに終わった。


 左から来たと思っていためーちゃんは、何故か反対側の右からスライサーベアに当たったのだ。


 これがめーちゃんが新たに得た能力、飛燕。


 所謂、燕返しだ。


 右から来たと思ったら左、左から来たと思ったら右と、幻影ではないのに左右の虚実が現れるのだ。


 これに元々も透過も加われば、めーちゃんの攻撃を防ぐことはまず不可能だろう。


 うーん、チートだね。


 そしてめーちゃんはブーメランと言う特性上、打撃武器だったのだが、瑠璃(ラピスラズリ)へと変化した際、何故か刃物としての形状も手に入れてしまったのだ。


 めーちゃんの攻撃はスライサーベアに当たり、そのまま首ちょんぱしてしまう。


「あ、ヤバい。またあれが来るぞ。ジルちゃんあっちを頼む。ここは俺達が相手しておくから」


 マックスは奥に控えているゴングベアを見て、警戒を顕わにする。


 ゴングベアは上半身がゴリラのような体躯をしており、見た目通りのパワーファイターだ。


 何よりも脅威なのがドラミングで、その打音は名前の通りゴング叩いたように鳴り響き、実際に音波衝撃波として周囲に破壊をもたらすのだ。


 おまけとして大音響を轟かせ周囲を委縮してしまう副効果もある。


 マックスはゴングベアがドラミングをしようとしていたのを見て、ジルに相手してもらう様に言ったのだ。


 何故ジルが、と思うだろう。


 実はドラミングは魔力を消費し、音波衝撃波を放つのだ。


 つまり、ゴングベアのドラミングは魔法攻撃とも言える。


 そう、魔法攻撃ならこいつが居る。


「えんちゃんー!」


『任せろ、我に、魔法攻撃なら!』


 へきちゃんを仕舞い、左腕に蛍石(フローライト)と化したえんちゃんを掲げ、ゴングベアに迫る。


「ウボッ! ウボッ! ウボッ!」


 ゴンゴンゴンゴンゴンゴオン!!


 ゴングベアの音波衝撃波が周囲を襲う。


 だがえんちゃんの反射(魔法)により、放たれた音波衝撃波は跳ね返され相殺される。


「ぼーちゃんー! はーちゃんー!」


 ドラミングがかき消された事に戸惑っているゴングベアに迫るジル。


 右手には石空間から取り出したぼーちゃんとはーちゃん。


 紅玉(ルビー)のぼーちゃんの先端には何故か黒曜石(オブシディアン)のはーちゃんが1mくらいの気刃を纏ってくっ付いていた。


 さながら薙刀のように。


 これがぼーちゃんとはーちゃんの新たに得た能力だ。


 ぼーちゃんは接続。はーちゃんは気刃。


 接続は文字通り、ぼーちゃんと他の物をくっ付ける(接続)する事。


 リヴァイアサンの時に、ぼーちゃんの先にやーちゃんがくっ付いていた事が有ったが、実はぼーちゃんの新たな能力が発現しかけていたようだ。


 それが【ストーンコレクター】がLv2になったことで目覚めたのだ。


 接続の凄いところは実は別の所にあるのだが、それは別の機会に話そう。


 はーちゃんの新たに得た能力は気刃。


 まぁ、刃物のはーちゃんらしく、良く漫画とかにある気で出来た刃物を見に纏わせることが出来る能力だ。


 これにより、更に切断能力が向上したのは言うまでも無い。


 2つの能力により薙刀と化したぼーちゃんはーちゃんを振るうジル。


 一足飛びで近づいたゴングベアを袈裟切り、伸縮突き、払い切りの3連撃であっという間に仕留める。


 残して来たスライサーベアは、公言通りマックスとシロップ、クローディアが片付けていた。


『うむむ……皆が活躍しすぎて俺の出番が無い……』


「(なにー? やきもちー?)」


『ふっ、オレ様が一番お嬢の役に立っているぜ! 今までのようにきゅーだけ活躍とはいかないぜ!』


『何を言うのですか、きゅー。貴方の有用性はありとあらゆることに対応できる万能性でしょう。私達のように一個性の特化型とは違うのですよ』


 ああ、うん。はーちゃんは確かに戦闘では一番役に立っているだろうけど、帰って使いどころが尚更難しくなっているよ。


 ぼーちゃんは、うん、慰めてくれているんだろうね。ありがとう。


 まぁ、確かに俺の最大のメリットは【百花繚乱】スキルの万能性だよね。


 別に戦闘面だけじゃなく、他の面でも役に立つって事なんだろう。


「はー、やっぱり何回見ても信じられないわー。マジで脅威度Cのモンスターを苦にも無く倒すんだもの。やっぱりS級冒険者はパないわ」


 後方から【魔導師】スキルで援護していたシロップが、ジルの戦闘を見て溜め息を漏らす。


「あら、まだジルさんがS級冒険者だと言うのを信じてらっしゃらなかったのですか?」


「だってー、こんな小さな子供だよ? 普通あり得ないって」


「外見だけに捉われていては影ギルドの一員として失格ですわよ」


「分かってるよー」


 シロップとクローディアのやり取りは迷宮大森林に入ってもう何度目だろう。


 ジル達が迷宮大森林に入って、もう既に1週間は経過していた。


 その間に、何度か戦闘があった訳だが、出てくるモンスターは脅威度C以上の難敵ばかりだった。


 尤も、ジルやマックスにとってはそれ程苦労はしてない。


 長い案内者業でこれほど楽な案内は無いとシロップは言っていたりする。


 今回出くわしたのはスライサーベア4匹とゴングベア2匹の熊熊コンビ。


 スライサーベアもゴングベアもどちらも脅威度はCだが、この2匹がペアになって現れると脅威度が一段上がり、Bとなる。


 シロップもクローディアも出来れば相手したくないモンスターだと言っていたので、それを目の前であっさりと片付けられたのだ。


 そりゃあ、驚きもするわな。


「さぁて、気を取り直して。

 予定通り、この後難所の1ヵ所目に突入するよ。十分注意をしてね!」


 ジル達は迷宮大森林の3ヵ所ある難所の内の1ヵ所目に差し掛かろうとしていた。












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