表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
50/357

046.縁

「冒険者ギルドが一番の候補だったんだがなぁ……」


「しょうがないよー。ギルドマスターが知らないんじゃ、連絡を取る事も出来ないしー」


 S級冒険者の権力を一番行使できるはずだった、冒険者ギルドの闇部門――通称・闇ギルドへの伝手が無くなり、ジルとマックスは人気もそこそこのさびれた酒場――酒の清浄と言ったふざけた名前の店――でヤケ酒を煽っていた。


 まぁ、ジルはヤケ酒ならぬヤケジュースだが。


「なぁ、本当にギルドマスターは闇ギルドを知らなかったのかな?」


「それは本当だと思うよー。きゅーちゃんが嘘感知魔法の【センスライ】を使って調べてくれたからー」


「……それって、ギルドマスターは本当に知らなかったってだけで、実際は闇ギルドは存在するかもしれないって事か?」


「その可能性はありだねー」


「うーむ……話は振出しに戻る、か……」


 結局、どの組織にもコネも無ければ伝手も無いので、ジル達は迷宮大森林を抜ける為の道案内を見つけることが出来ないでいた。


『自力で闇ギルドを見つけるか、後は……奴隷商人から裏ギルド、もしくは盗賊を捕まえて影ギルドに連絡を付ける方法、かな』


『反対! 反対! 反対ーー! 裏ギルドも影ギルドも反対!』


 まぁ、めーちゃんならそう言うよな。


 尤も、奴隷商人からは信用が得られてないから紹介してもらえるか怪しいし、盗賊を捕まえてと言うのは危険が伴うし、何より信用は無くなると見ていいだろう。


「(きゅーちゃんー、どうしよー?)」


『どうしたもんかな……』


 いっそのこと、案内なしで迷宮大森林に行ってみるか?


 俺のスキル【百花繚乱】を駆使すれば、迷宮大森林を抜ける可能性は高くならないかな?


 後はジルの規格外さで奇跡を期待するとか。


 ……7歳の子供に期待している時点で危ういな、これ。


「……組織の協力なしで迷宮大森林を抜けてみるか? ジルちゃんなら出来そうな気がする」


 あ、マックスも俺と同じ結論に至ったみたいだ。


 そうなんだよなぁ。ジルが傍にいるとついその気になってしまうんだよ。


 とは言え、本当はまだ諦めるのは早いんだがな。


 闇ギルドもだが、他の組織を捜す事すらしていないんだし。


 と、その時、ジル達に声を掛ける者が居た。


「なんだお前、迷宮大森林に行きたいのか?」


 ジルとマックスが席に着いているテーブルの前に見覚えのある男の子が居た。


「あん? 何の用だ、坊主」


 マックスは不遜な態度を取る男の子に訝しげな視線を這わせる。


「どうしたのー? こんなところでー」


「なんだ、ジルちゃんの知り合いか?」


「知り合いと言うかー、今日、お財布掏られてねー」


「掏ったけど掏ってねぇよ。あれはお前が俺達に施しをしたんだろ」


「ああ、そう言う事か」


 マックスはそのやり取りだけで大よその事を理解したみたいだ。


「それで? 坊主は何のようでジルちゃんに会いに来たんだ?」


「あんたら、迷宮大森林を抜けたいんだろ? だったら影ギルドに仲介してやってもいいぜ」


「それホントー?」


「あ? 何で坊主が、影ギルドに……って、ああ、なるほどな」


 あー、なるほど。


 マックスも気付いたみたいだが、男の子が庇護を受けているのが影ギルドって事か。


『何か怪しい……スリをするような悪ガキが何でわざわざ姐さんに仲介なんかするの?』


『はっ、そんな事も分からねぇのか? めー』


 まぁ、はーちゃんの言う通り、これは分かりやすい方だよ。


『マスターに受けた借りを返しに来た、と言う事ですよ。めー』


『借りって……ああ、あれ』


 めーちゃんの疑問に答えるかのように、マックスも同じような質問を男の子にしていた。


「何でわざわざそんな事をしてくれるんだ?」


「今日あったばかりの奴に借りっぱなしってのも癪なんだよ」


「それでわざわざ付けて機会を伺っていたって訳か」


「ばっ! ちげーよ! 何で俺がこんなちんちくりんを付け回さなきゃならねぇんだよ!」


 マックスの指摘に男の子は顔を真っ赤にして否定する。


「ねーねー、それじゃあ影ギルドに仲介をお願いできるのー?」


「あ、ああ……俺の上役で良ければ紹介してやるよ。そっから上手くいくかはお前ら次第だからな」


「うんー、それでも助かるよー。ありがとー!」


『One good turn deserves anotherってNa!』


『え? 何言ってるのか分かんないよ、やー』


『あーっと、やーちゃんは『情けは人の為にならず』って言ってるんだよ』


 俺は【翻訳】のスキルでやーちゃんがわざわざ英語で言った諺を訳してめーちゃんに伝える。


『確かに姐さんの好意がこうして返って来たのは嬉しいけど……やっぱり影ギルドに協力を仰ぐなんて納得いかないー!』


「(我慢してー、めーちゃんー。結局どこの組織もやましい事かかえているから、めーちゃんは納得してくれないと思うよー)」


 まぁ、闇ギルドも、冒険者ギルドのギルドマスターが知らないところを見ると、表に出来ないようなことをしているんだろうな。


 それってつまり、どの組織も大なり小なりの悪事をしていると言う事でもある。


 めーちゃんが納得できる組織なんて最初から無かったって事になるんだよなぁ。


「よし、坊主。早速案内してくれ」


「坊主じゃねぇ。俺の名前はコネトだ」


「うんー、コネト、よろしくねー」


 マックスの坊主呼ばわりに反発するも、ジルには恥ずかしいのか照れ隠しなのか、そっぽ向いてぶっきらぼうに「ああ」と答えるコネトだった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ