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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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044.3つのルート

 一時、トラブルはあったものの、ジルは商業ギルドや図書館、冒険者ギルドで情報を集め、軍に魔王軍との様子を聞き、夕方にマックスと合流して夕食を摂りながら互いの情報を突合せをした。


 で、導き出されたルートを選定する。


「さて、俺とジルちゃんが情報収集した結果、聖王国セントルイズへ向かうルートは3つあると言う事が分かった」


「大陸横断ルートとー、大動脈山脈越えルートとー、迷宮大森林ルートの3つだねー」


「そう、どのルートにもメリットとデメリットが存在する。さて、どのルートを使う?」


「考えるまでも無いよー。この最短距離の迷宮大森林ルートだねー」


「ああ、やっぱり。ジルちゃんならそう言うと思ったよ……」


 ジルの言葉にマックスは半ば呆れながらに苦笑いをしていた。


 まぁ、ジルが選んだ迷宮大森林ルートはメリットも大きいがデメリットも大きいのだ。


『あらら、マックスもご愁傷様。ジルちゃんと一緒に行動すると言うのはこういう事なのよ』


『いや、寧ろこれくらいでへこたれるようじゃお嬢と一緒に行動するに値しねぇよ』


『だね。姐さんと一緒に居たいならそれなりに相応しい男じゃないと!』


 どうやらジルと一緒のパーティーに相応しいかなど、ふーちゃんとはーちゃんとめーちゃんがそれぞれ意見を述べる。


 まぁ、気持ちは分からんでもないが。


『……お前ら俺らの声がマックスに聞こえないからって言いたい放題だな』


『仮にも我らがマスターの保護者なのです。それなりに誠意ある態度を見せて頂かないと。これしきの事で苦難を顕わにする者が保護者に相応しいと?』


『お前もか、ぼーちゃん。相応しいとか保護者とか云々よりも、マックスの気持ちには同情するけどな。よりにもよってジルはベリーハードなルートを選んだんだ。

 まぁ、ジルの気持ちも考えれば最善のルートでもあるんだけどな』


 ジルとマックスが情報収集で得た聖王国へ向かうルートは、先程ジルが述べたように大陸横断ルートと大動脈山脈越えルートと迷宮大森林ルートの3つだ。


 この西大陸――ハーフハート大陸には中央に北東から南西に掛けて斜めに大動脈山脈と言う大山脈が連なって西大陸を北部と南部に分けている。


 聖王国は北部、拠点都市フィフスは南部にある為、聖王国へ向かうルートは3つに限られるのだ。


 1つは大動脈山脈が切れる最西端、つまり西大陸を横断して、最西端にある北部と南部を結ぶ商業国アキンドーを渡る大陸横断ルートだ。


 これは商人などが良く使うルートであり、比較的安全が約束されたルートでもある。


 デメリットは、時間が掛かりすぎると言う事だ。


 流石に大陸を横断するルートともなれば、馬車などでもいくら急いでも3ヵ月以上も掛かる。


 ジルのふーちゃんやマックスの【韋駄天】でも1ヶ月は掛かるだろう。


 2つ目のルートはその大陸横断ルートの途中で、大動脈山脈が比較的低い位置を山越えすると言うルートだ。


 こちらのメリットは大陸横断ルートよりも時間が短縮されるが、デメリットは山越えの危険性に加え、山賊やモンスターの襲撃による危険が孕んでいる。


 ああ、山脈越えの装備やガイドを雇う等、金銭的なデメリットもあるか。


 そして最後の3つ目のルートだが、これが一番厄介だったりする。


 大陸横断ルートの説明を聞いた時、反対側の大動脈山脈が切れる最東端はどうなのかと思っただろう。


 確かに、拠点都市から真っ直ぐ北に向かえば、大陸最東端に沿って西大陸北部に向かえるだろう。


 だが、それを阻むのが迷宮大森林と言う訳だ。


 大動脈山脈の最東端を塞ぐように広がる大森林。


 小さな国ならすっぽり入るほどの広さを誇る。


 広いだけならまだ西大陸北部へ向かうルートとしては良かったのだが、それを不可能にしているのが迷宮と言う存在だ。


 大森林そのものが迷宮と化しており、ひとたび大森林に足を踏み入れれば二度と外に出る事は出来ずに大森林で彷徨い生きて出ることが無いと言われている。


 そして付いた名が、迷宮大森林と。


 だが、メリットも存在する。


 迷宮大森林の内部は時空が歪んでおり、迷宮大森林を抜けるのに中で3ヵ月も掛かるが、実際は迷宮大森林を抜けると2・3日しか経っていないと言う噂があるのだ。


 これがジルが迷宮大森林ルートを目指す理由でもある。


 ここまで迷宮大森林ルートの話を聞いて疑問に思った者も居るだろう。


 迷宮大森林に足を踏み入れて帰って来た者が居ないのに、何故迷宮の内部の時空が歪んでいるとか、迷宮大森林を抜けると3日しか掛かっていないとか分かるのか。


 おそらくだが、公にはなっていないが、この迷宮大森林を抜けるルートが存在していると俺達は睨んでいる。


 と言うか、それらの存在――各機関の存在の情報をマックスは掴んできたのだ。


 故にジルは迷宮大森林ルートを決めたんだろう。


「まぁ、ジルちゃんが決めたのなら俺はそれに従うよ。保護者代わりでもある俺が敢えて危険なルートを進めるのは憚られるがな」


 うん、最近はマックスもジルの規格外さに圧倒されジル主体の行動に出ているんだよなぁ。


 まだ出会って1ヶ月も経っていないのに……


「じゃあー、迷宮大森林を抜けるのに何処の組織のルートを使うか決めないとねー」


「何処の組織のルートも伝手を探るのに一苦労はありそうだけどな」


 迷宮大森林ルートを決めたのはいいが、その内部情報を知っている各機関を頼ることになる訳だ。


 流石にジルでも身一つで迷宮大森林を抜けるのには無理がある。……無理があるよな?


 そんな訳でどこの組織を頼るか、になる訳だが……どこも一癖も二癖もありそうなんだよなぁ……












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