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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3章 ブロークンハート大陸・海渡編
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Side-3 ゴダーダ

 俺の名前はゴダーダ。


 ブロークンハート大陸の港町フォルスを拠点に活動している冒険者だ。


 今、港町フォルスは大変な危機に晒されている。


 港町の沖合にS級モンスターであるリヴァイアサンが現れたのだ。


 今のところ襲ってくるようなことは無いが、何時その牙がこちらに向くか分からない。


 そしてただいるだけでもその影響力は計り知れない。


 当然、漁業ギルドは漁に出ることは叶わず、西大陸のハーフハート大陸との交易も断絶してしまった。


 幸いと言っていいのか、俺は陸の方を活動の場にしているので懐に直接的なダメージはない。


 だが、漁業ギルドと契約している海を活動の場にしている冒険者には大ダメージだ。


 港町フォルスを治める領主様はリヴァイアサンが現れた事に直ぐに対応した。


 冒険者ギルドへ協力を要請し、東大陸の最前線を開拓しているS級冒険者『氷帝』に討伐依頼を頼んだ。


 ただ、『氷帝』への依頼から港町に来るまで約1ヶ月かかると言う。


 その間、港町はリヴァイアサンの脅威に晒されることになる。


 領主様は冒険者ギルドや商業ギルドと協力して、近隣の町や村に支援を要請し『氷帝』が来るまで持ちこたえるようにしているが、それまで持つかどうか……


 俺も隣町から物資を運ぶ依頼を受け、港町に戻ってきて一息ついている所だ。


 リヴァイアサンが現れてからまだ一週間、港町の雰囲気は日に日に増して暗くなっていく。


 そんな時に冒険者ギルドにあの子が現れた。


 最初は『韋駄天』の二つ名を持つ男の方に目が行ったが、次に目に入ったのは小さな女の子だ。


 何とその女の子が受付にリヴァイアサンを倒すために沖に出る許可を欲しいと言ってきたのだ。


 当然の如く、ギルド内に居た冒険者は女の子を罵声を浴びせる者も居れば、嘲笑する者も居た。


 俺も「ふざけんな」と罵声を浴びせたいところだったが、俺のスキル【第六感】がそれを思い止まらせた。


 この女の子を馬鹿にしていいのか?


 もしかしたら本当に希望の星になるのでは?


 とても信じられないが【第六感】が俺にそう囁く。


 そうこうしているうちに、ギルドマスターが出てきてあれよあれよと言う間に許可が出てしまった。


 罵声を浴びせていた冒険者共はギルドマスターに詰め寄るが、「ならばお主らがリヴァイアサンを倒しに行くか?」と問いただせば誰も文句を言えなくなってしまった。


 多分、他の冒険者共はこの日の出来事を生意気な女の子が無謀な事を言ったとしか認識してなかっただろう。


 俺は次の日、物資輸送の為の依頼を受けようと冒険者ギルドへ来ていた。


 昨日の女の子が希望の星なのか分からないが、自分の出来ることをしようと依頼を受けにきたのだ。


 そして、港町フォルスに天変地異が訪れた。


 一瞬、周囲が真っ暗になったのだ。


 沖合を見ていた者からは、天から光が降り注いだなんて言葉を聞いた。


 当然、冒険者ギルドだけでなく、港町全域がパニックに包まれた。


 もしかしたらリヴァイアサンの影響ではないか、何かしたのではないか、など大騒ぎになり、領主様はその対策や対応に追われていた。


 だが、俺はこの現象を知っていた。


 これは何時か見た書物に書かれていた【光魔法】の神級魔法と言われる【ソレイユメギド】だ。


 上空周囲の太陽の光を一点に集め、灼熱と化した光の柱を地上に叩きつける使える者が居ないと言われている幻の魔法だ。


 俺はふと、昨日の女の子を思い浮かべていた。


 まさか、と思いながらも俺の【第六感】がそのまさかだと囁く。


 俺は天変地異の騒ぎもあり、依頼を受けるどころじゃなかったので冒険者ギルドに止まり成り行きを見守った。


 そして夕方、『韋駄天』と女の子が現れた。


 リヴァイアサンを討ったと。


 勿論、最初は誰も信じなかった。


 だが、ギルドマスターが現れ女の子が言っていたことが本当だと告げる。


 何でもギルドマスターは毎日沖合のリヴァイアサンの動向を監視していたのだと言う。


 そこに女の子と『韋駄天』が現れリヴァイアサンを倒したのだと。


 そして天変地異もリヴァイアサン討伐に関わる事だから最早心配はいらないと。


 例えギルドマスターの言う事でも、流石に信じられない冒険者が大勢いた。


 まぁ、気持ちは分かる。


 俺も【第六感】が無ければ同じように感じていただろう。


 だが、俺には分かる。これらの事は全て事実だと。


 その証拠を見せるとギルドマスターが言い、町の外に出て女の子はアイテムボックスからリヴァイアサンの亡骸を見せたのだ。


 これには騒いでいた冒険者共は黙り込んだ。


 そして次の瞬間、歓喜の声が響き渡った。


 なんとまぁ、現金なもんだ。


 女の子を罵っていたのに、今は手のひらを返したように褒め称えている。


 周囲はリヴァイアサンが討たれた事に喜んでいるが、俺は別の事に注視していた。


 なんだ、あのアイテムボックスは。


 あれだけ巨体のリヴァイアサンがすっぽり入るアイテムボックスは異常だ。


 そして女の子はリヴァイアサンの亡骸をほぼ全て冒険者ギルドに提供すると告げたのだ。


 S級モンスターの亡骸は高級な素材の塊だ。


 それをほぼ全て提供するだと?


 なんなんだ、この女の子は。


 あり得ないことを成したあり得ない女の子。


 港町フォルスが救われたのは事実だが、この女の子が成したリヴァイアサン討伐の影響は計り知れない。


 今後この子は各方面からも注目されることになるだろう。


 穏やかな人生を送りたければ関わるべきじゃないと、俺の【第六感】は告げる。


 だが、この時の俺は思いもしなかった。


 まさか、数年後、平凡で普通の冒険者であるこの俺が、この女の子に関わる羽目になろうとは。










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